事業計画書の作成は、補助金申請で一番つらい工程です。
近年、その重い作業を一気に軽くする手段として注目されているのが、生成AIをはじめとする生成AIです。実際、使い方さえ間違えなければ、数時間かかっていたたたき台が数十分で形になります。ただし「AIに丸投げすれば採択される」という話ではありません。むしろ、そこを勘違いすると落ちます。
この記事では、240社の補助金申請を支援してきた立場から、生成AIで事業計画書のたたき台を作る具体的な手順と、AIに任せてはいけない一線を、はっきり線引きしてお伝えします。
本記事は「AI×事業計画書」全3部シリーズの第1部(たたき台づくり編)です。第2部では「AIが作った事業計画書が“落ちる”理由」、第3部では「AI×専門家で“通る”計画書に仕上げる方法」を解説します。
なぜ事業計画書づくりに生成AIが有効なのか
事業計画書の作成は、補助金申請の中で最も時間と労力がかかる工程です。自社の強み、市場、課題、解決策、数値計画などを論理的につないで文章にする作業は、書き慣れていない事業者にとって相当な負担になります。
生成AIは、この負担を次の3つの面から軽くしてくれます。
「白紙の重さ」から解放される
ゼロから書き起こすのではなく、AIが出した下書きを直していく作業に変わります。これだけで、最初の一歩の心理的ハードルが大きく下がります。Wordを開いたまま固まる、という状態から抜け出せます。
論理の抜けに気づける
事業計画書で問われるのは、文章の上手さではなく論理の通り方です。「課題→解決策→効果」の筋道をAIに整理させると、自分では見落としていた論理の飛躍や説明の抜けが浮かび上がってきます。
言語化を手伝ってくれる
頭の中にぼんやりとあるアイデアを、審査員に伝わる言葉へ翻訳してくれます。「言いたいことはあるのに、うまく書けない」という事業者ほど、この効果を実感できるはずです。
重要なのは、「完成品を作る道具」ではなく「たたき台を高速で作る道具」だということ。この前提を間違えなければ、強力な武器になります。
このシリーズについて(全3部)
本記事は「AI×事業計画書」全3部シリーズの第1部です。生成AIをただの時短ツールで終わらせず、補助金の採択につなげるところまでを、3段階に分けて解説します。
- 第1部(本記事)|たたき台づくり編
AIで事業計画書のたたき台を高速で作る方法 - 第2部|落ちる理由編(近日公開)
→ AIが作った事業計画書が“落ちる”理由|審査で見られる差 - 第3部|仕上げ編(近日公開)
→ AI×専門家で“通る”計画書に仕上げる方法
「AIで下書きを作る(第1部)→ なぜAIだけでは通らないかを知る(第2部)→ プロの視点で仕上げる(第3部)」という流れで読むと、AIを“採択される武器”に変えられます。まずは第1部で、AIを使ってゼロから一歩を踏み出すところから始めましょう。
補助金ごとに「審査観点」は違う
たたき台を作る前に、必ず押さえておくべき大前提があります。それは、補助金によって事業計画書で問われる内容や審査観点がまったく異なるということです。AIに丸投げすると、ここを無視した「どの補助金にも通らない汎用的な計画書」が出来上がってしまいます。
代表的な3制度の違いを整理します。
| 補助金 | 計画書の主眼 | 特に問われること |
|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓・売上拡大 | 自社の経営状況分析、販路開拓の具体策、商工会・商工会議所との連携 |
| ものづくり補助金 | 革新的な設備投資 | 技術面・事業化面・政策面の3つの審査軸、付加価値額の年率向上 |
| 新事業進出・ものづくり補助金(統合新制度) | 新分野・新市場への進出 | 既存事業からの新規性、3〜5年の中期計画、定量目標と達成手段 |
たとえばものづくり補助金の事業計画書は、技術面・事業化面・政策面といった審査項目を意識して書く必要があります。一方、持続化補助金では自社の経営分析と販路開拓の具体性が問われます。生成AIにこの「制度ごとの観点」を伝えられるかどうかが、使えるたたき台になるかの分かれ目です。
生成AIで事業計画書のたたき台を作る5ステップ
ここからが本題です。実際に使える手順を、プロンプト例とセットで紹介します。大事なのは順番です。いきなり「書いて」と頼むのではなく、AIに少しずつ前提を渡しながら育てていく——この流れを守るだけで、出てくるたたき台の質がまるで変わります。
ステップ①:AIに「役割」と「前提」を与える
最初にやってはいけないのが、「事業計画書を書いて」といきなり丸投げすることです。AIはあなたの会社も、申請する補助金のことも知りません。前提のないまま書かせれば、どこかで見たような当たり障りのない一般論が返ってくるだけです。
そこで最初に、AIに「誰として」「何を前提に」考えるのかを設定します。役割を与えると、AIはその専門家になりきって回答するようになります。
プロンプト例:
あなたは補助金申請に詳しい中小企業診断士です。私は〔業種〕を営む小規模事業者で、〔ものづくり補助金〕への申請を検討しています。この補助金の審査項目(技術面・事業化面・政策面)を踏まえた事業計画書のたたき台づくりを手伝ってください。まずは、計画書に必要な構成要素を見出しの形で提案してください。
ここで申請する補助金名と、その審査観点まで伝えるのがコツです。これだけで、制度に合った“骨組み”が手に入り、後の作業がぐっと楽になります。
ステップ②:自社情報をAIに「取材」させる
骨組みができたら、次は中身を埋めていきます。ここでありがちな失敗が、自分で全部書こうとして再び手が止まることです。
発想を逆にします。自分が書くのではなく、AIに質問させるのです。AIにインタビュアー役を任せ、その問いに答えていくだけで、頭の中が自然と整理され、計画書の素材が集まっていきます。
プロンプト例:
上の構成に沿って事業計画書を作りたいので、各項目を埋めるために必要な質問を、私に1つずつしてください。私の回答をもとに、その項目の文章を作成してください。専門用語は避け、審査員に伝わる表現でお願いします。
口頭で答える感覚で進められるので、文章を書くのが苦手な人ほど効果を実感できるはずです。話すように答えた断片を、AIが計画書の文体に整えてくれます。
ステップ③:「課題→解決策→効果」の論理を通す
素材がそろっても、それが一本の筋でつながっていなければ、審査員には響きません。補助金の事業計画書で最も重視されるのは、文章の巧拙ではなく論理の一貫性です。「自社にはこういう課題がある→だから今回これに取り組む→その結果こうなる」という流れが、最初から最後まで途切れずに通っているか。ここが採否を分けます。
この“筋の通し”は、人間がやると意外と難しい作業です。自分の事業のことになると、思い入れが先に立って論理が飛びがちだからです。AIに俯瞰させて再構成させると、その飛躍があぶり出されます。
プロンプト例:
ここまでの内容を、「①自社の現状と課題 → ②その解決策(今回の補助事業)→ ③期待される効果(数値を含む)」という流れで再構成してください。この3つの間で論理に飛躍している箇所があれば、具体的に指摘してください。
返ってきた指摘は、そのまま「審査員に突っ込まれる箇所」だと思ってください。提出前に潰しておけば、計画書の説得力が一段上がります。
ステップ④:数値目標の「たたき」を出す
ものづくり補助金や新事業進出補助金では、付加価値額や給与支給総額といった数値目標の提出が必須です。「3〜5年で付加価値額を年率何%伸ばすか」といった計画は、避けて通れません。
数字の計画づくりは多くの事業者が苦手とするところですが、ここもAIに枠組みを作らせると着手しやすくなります。
プロンプト例:
3〜5年の収益計画のたたき台を作りたいです。売上・原価・付加価値額の項目で、年率の伸びを置いた表のフォーマットと、その数字を導く際の考え方を示してください。
ただし、ここには太字で強調したい注意点があります。AIが出した数字は、絶対にそのまま使わないでください。 AIが出すのは“仮置き”の数値で、あなたの会社の実態とは何の関係もありません。事業計画書では「その数字の根拠は?」が必ず問われ、根拠のない数値は審査で最も嫌われます。AIには表の形式と考え方だけを作らせ、中身の数字は自社の実績と見込みで必ず埋め直してください(この点は後の章でも改めて触れます)。
ステップ⑤:審査員目線で“レビュー”を入れさせる
たたき台が一通り形になったら、最後に必ずやってほしいのがこの工程です。AIを「書き手」から「審査員」へと役割を切り替え、自分の計画書を厳しく採点させます。
プロンプト例:
あなたは補助金の審査員です。この事業計画書を読んで、次の観点で評価してください。①説得力が弱い点、②数値の根拠が不足している点、③どの企業にも当てはまる“汎用的”で独自性に欠ける点、④審査で突っ込まれそうな点。それぞれ具体的に指摘し、改善の方向性も示してください。
ここがAI活用の中でも特に効きます。人は自分の書いた文章の穴には気づけませんが、視点を「審査する側」に変えるだけで、弱点が一気に見えてきます。「効果が大きい」とだけ書いて根拠がない、「地域に貢献する」のような誰でも書ける一文で終わっている——こうした“落ちる計画書”の典型を、提出前に自分で発見できます。
指摘が返ってきたら、そのまま受け入れて終わりにせず、指摘された箇所を自社の実情で埋め直すところまでやってください。AIのツッコミは「どこを直すべきか」は教えてくれますが、「何を書くべきか」は、自社のことを一番知っているあなたにしか分かりません。この往復を一度くぐらせるかどうかで、たたき台は“通る計画書”に大きく近づきます。
よくある質問(FAQ)
Q. 生成AIだけで事業計画書を完成させて、補助金に申請できますか?
おすすめしません。たたき台づくりには非常に有効ですが、AIが生成した文章は数値の根拠が弱く、どの企業にも当てはまる汎用的な内容になりがちです。審査員は画一的な計画書を見抜くため、AIの出力をそのまま提出すると採択は遠のきます。たたき台として使い、自社の実体で仕上げることが前提です。
Q. 生成AIは無料版でも事業計画書づくりに使えますか?
たたき台づくりであれば無料版でも十分活用できます。ただし、長い文章の一貫性や、複雑な数値計画の整理は有料版のほうが安定します。まずは無料版で試し、本格的に使うなら有料版を検討する、という流れで問題ありません。
Q. 補助金ごとにプロンプトは変えるべきですか?
変えるべきです。持続化補助金は販路開拓、ものづくり補助金は技術面・事業化面・政策面、新事業進出補助金は新規性と中期計画、と問われる観点がまったく違います。プロンプトの冒頭で「どの補助金か」「その審査観点は何か」をAIに伝えることが、使えるたたき台になるかの分かれ目です。
Q. AIが出した数値目標は、そのまま使っても大丈夫ですか?
絶対に避けてください。AIが出す数字は“仮置き”であり、自社の実態とは無関係です。事業計画書では数値の根拠が厳しく問われるため、根拠のない数字は審査で最も嫌われます。AIには計算の枠組みやフォーマットを作らせ、中身の数字は必ず自社の実績・見込みで埋め直してください。
Q. AIを使って作ったことが審査でバレて、不利になりませんか?
AIを使うこと自体が問題になるわけではありません。問題は「AIが作ったままの、中身の薄い計画書」です。逆に言えば、たたき台にAIを使っても、自社の独自性・具体的な数値・熱量がしっかり入っていれば、それは“あなたの計画書”です。ツールの利用ではなく、中身の質が問われます。
Q. 事業計画書づくりが不安です。専門家に頼むべきタイミングは?
AIでたたき台を作ってみて「これで通るか確信が持てない」と感じたら、それが相談のタイミングです。特に、数値の根拠づけや自社の強みの言語化は、第三者の視点が入ると一気に精度が上がります。レオン・ストラテジーでは、AIで作ったたたき台のブラッシュアップから無料でご相談を承っています。
事業計画書の相談窓口
事業計画書の作成に関するご相談はこちらです。フォームを送信すると担当者が詳しい内容をご説明します。
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参考・引用資料
本記事は以下の公式資料をもとに作成しています。
免責事項・ご注意
本記事について
本記事は、中小企業庁およびものづくり補助金事務局が公表している公式資料をもとに、情報提供を目的として作成しています。特定の補助金申請の採択を保証・推奨するものではありません。
制度変更について
ものづくり補助金は、公募回ごとに補助率・補助上限額・対象要件・スケジュール等が変更される場合があります。また、2026年度以降は「新事業進出・ものづくり補助金」として制度再編が行われる可能性もあります。制度内容は予告なく変更される場合があるため、申請前に必ず最新の公募要領をご確認ください。
申請の際は必ずご確認ください
- ものづくり補助金総合サイトに掲載されている最新公募要領
- GビズIDプライムアカウントの取得状況
- 認定支援機関または中小企業診断士等の専門家への相談
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PROFILE

- 中小企業診断士 / 資金調達・補助金コンサルタント / 外資系戦略コンサルティングファーム出身。独立後、事業再構築補助金・ものづくり補助金を中心に200社超の資金調達を支援し、採択率80%以上を継続して維持しています。補助金申請において最も難しいのは「書類を書くこと」ではなく、「審査員に刺さる事業計画を設計すること」です。戦略コンサルとしての経験を活かし、単なる申請代行ではなく、事業計画の立案から採択後の実行フェーズまでを一気通貫でサポートすることを強みとしています。これまでの支援先は製造業・小売業・サービス業など幅広く、初めての補助金申請から複数回採択の実績づくりまで対応しています。また、補助金メディアの執筆者として1,000本超の記事を執筆。最新の制度情報・審査傾向を常にアップデートしながら、読者と支援先の双方に正確な情報を届けることを使命としています。

