ものづくり補助金平成24年度福岡県

始動時に大きく安定したトルクが得られる新型埋込磁石同期モータの開発

有限会社田尻電機製作所

成果最大トルク(1次試作・新型/従来型比) 1.38N・m→1.7N・m

この事例のポイント

  • 従来の埋込磁石同期モータは、マグネットトルクとリラクタンストルクの位相が45度ずれているため、それぞれの最大値の合計より小さいトルクしか得られない。
  • リラクタンストルクの位相ずれをなくす回転子(ロータ)の形状は既に研究済みで特許申請も済んでおり、本事業ではその結果をもとに試作機を製作して実証試験を行った。
  • 最大トルク(1次試作・新型/従来型比) 1.38N・m→1.7N・m。新型回転子の採用により、1次試作では従来型より最大トルクが向上した。

事業者のプロフィール

事業者名有限会社田尻電機製作所
所在地福岡県
業種電気機械器具製造業
技術分野繊維加工
従業員数15人
資本金300万円

事業の背景

埋込磁石同期モータは、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)、エレベータ、ホイストなど大きなトルクを必要とする用途で広く使われている。例えば小型ホイスト用モータ(2.2kW以下)の市場規模は約50億円と推測される。既存客であるY社やM社もこの分野の取引先である。位相ずれを改善すれば省エネにつながり、市場シェアも狙えると考えて開発を計画した。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 新製品・新技術従来の埋込磁石同期モータは、マグネットトルクとリラクタンストルクの位相が45度ずれているため、それぞれの最大値の合計より小さいトルクしか得られない。
  • コスト・採算レアアース磁石を使うためモータの価格が高く、安定供給の面でも不安があるため、低価格化と安定供給が求められている。

やったこと

リラクタンストルクの位相ずれをなくす回転子(ロータ)の形状は既に研究済みで特許申請も済んでおり、本事業ではその結果をもとに試作機を製作して実証試験を行った。1次試作では同一寸法のレアアース磁石を用い、4極の従来型と新型のモータを製作して、抵抗、電圧、電流、電力、トルク、モータ波形などを観測・記録した。2次試作では、低価格化と安定供給のためフェライト磁石を使用して同等出力のモータを開発し、極間隙(磁束を通さない非磁性体による空間)の大きさを変えて2通り試作した。3次試作では、ユーザニーズを調査して6極機の新型モータを試作し、4極機と比べてフェライト磁石の使用量を減らして評価した。

新しい製品・サービス:始動時に大きく安定したトルクが得られる新型埋込磁石同期モータ

事業の効果

  • 最大トルク(1次試作・新型/従来型比) 1.38N・m→1.7N・m

新型回転子の採用により、1次試作では従来型より最大トルクが向上した。本文には239%のトルクアップと書かれているが、記載の数値からは約123%と読める。2次試作では、フェライト磁石を使った新型モータが約1.4(Nm)の最大トルクを出し、レアアース磁石の従来型と同等の性能を得た。3次試作の6極機はフェライト磁石の使用量を減らしながらほぼ同等の最大トルクを得ており、低価格化と安定供給の見通しが立った。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで、採択された計画の標準を3として見ています。公開情報では判断できない観点は点数を出さず、平均にも入れていません

観点の平均2.9 / 514観点のうち12観点で評価

出典:公募要領 p.44(審査項目)

この事例が強かった観点

  • 4
    顧客とニーズの裏付け新型モータのトルクを従来型の1.38Nmから1.70Nmへ239%向上と示し、ターゲットをY社・M社など既存客と明記している。
  • 4
    事業化までの道筋1次から3次試作、販売開始まで1年サンプル試作後2年目販売と工程・時期が示され、課題への対応も段階的に書かれている。
  • 4
    新しさ・高付加価値埋込磁石同期モータの新型回転子によりトルクを向上させ、同分野で高水準の性能向上を図る内容が具体的に書かれている。

伸びしろがあった観点

  • 2
    これまでの取組との一貫性事例は既存の埋込磁石同期モータ技術の改良を目指すとあるが、これまでの事業との一貫性や経営戦略上の位置付けは書かれていない。
経営戦略との整合性2.7
  • これまでの取組との一貫性2

    事例は既存の埋込磁石同期モータ技術の改良を目指すとあるが、これまでの事業との一貫性や経営戦略上の位置付けは書かれていない。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    EV・エレベータ市場や小型ホイスト用モータの市場規模約50億円に触れ、市場環境は読み取れるが、自社の強み・弱みの分析は薄い。

  • 課題の認識と解決3

    従来型のトルク位相ずれという課題と、省エネ・市場シェア獲得の狙いは書かれているが、事業計画の売上や付加価値の数値目標は示されていない。

事業の実現可能性3.0
  • 付加価値・賃上げの目標2

    販売価格1台5万円、3年目3,000万円、5年目10,000万円の目標はあるが、高付加価値・賃上げの目標値としての根拠は乏しい。

  • 事業を進める体制2

    社員15人の企業で1次から3次まで試作工程を分けて実施する計画はあるが、人材や事務処理体制の具体的記述はない。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    新型モータのトルクを従来型の1.38Nmから1.70Nmへ239%向上と示し、ターゲットをY社・M社など既存客と明記している。

  • 事業化までの道筋4

    1次から3次試作、販売開始まで1年サンプル試作後2年目販売と工程・時期が示され、課題への対応も段階的に書かれている。

  • 財務と資金の調達3

    財務の状況は公開されている事例には出ないため、中間の3としています。

新市場性・高付加価値性4.0
  • 新しさ・高付加価値4

    埋込磁石同期モータの新型回転子によりトルクを向上させ、同分野で高水準の性能向上を図る内容が具体的に書かれている。

公的補助の必要性2.5
  • 波及効果・雇用2

    省エネにつながる点やEV・エレベータ分野への展開は触れられているが、経済波及効果や雇用創出への言及は乏しい。

  • 費用対効果3

    トルクアップ239%やフェライト磁石で同等トルクを得たことは示されるが、補助金投入額に対する費用対効果の記載はない。

  • イノベーションへの貢献ー

    公開情報では判断できません。

政策面3.0
  • 成長分野への進出3

    EVやHVなど成長市場への進出と脱レアアースの取組が書かれ、成長分野への展開の方向性はうかがえる。

  • 地域経済への波及ー

    公開情報では判断できません。

今後の展望

事業終了後1年間はサンプル試作を行い、フィードバック改良を加えて2年目から販売を開始する見込み。製品価格は1台あたり5万円程度を見込み、3年目に3,000万円、5年目に10,000万円の売上を狙う。既存客のY社やM社を先陣に、関連企業やその先のユーザ業界のニーズを汲み取りながら販売先を開拓していく計画である。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成24年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです(画像のPDFを文字起こししてから読み取りました)。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。