ものづくり補助金平成24年度大分県

落差不要で水の流速のみで発電するマイクロ水力発電

株式会社興栄

この事例のポイント

  • 農業用水路の多くは落差のない平坦な水路であり、落差を利用する従来のマイクロ水力発電では発電できなかった。
  • 水の落下ではなく流速と流量で発電する独自のマイクロ水力発電装置を開発し、特許を取得した。
  • 農業用水路を利用して売電収入を得られる仕組みができ、農家の負担金を減らせる可能性が生まれた。

事業者のプロフィール

事業者名株式会社興栄
所在地大分県 大分県竹田市
業種電気工事業
技術分野金型
従業員数11人
資本金1,000万円
設立1977年

事業の背景

株式会社興栄は電気設備、情報設備、計装設備の工事と再生可能エネルギー発電設備の開発・導入を行っている。大分県内の基幹的な農業用水利施設は296施設あり、そのうち水路は217施設(延長約925.9km)である。東日本大震災以降、再生可能エネルギーへの社会的要請が高まり、同社はマイクロ水力発電の開発事業を本格化させた。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 新製品・新技術農業用水路の多くは落差のない平坦な水路であり、落差を利用する従来のマイクロ水力発電では発電できなかった。
  • その他農業用水施設の老朽化が進み、土地改良区の維持管理機能が低下しているうえ、後継者減少で農家1戸あたりの負担金が増加している。

やったこと

水の落下ではなく流速と流量で発電する独自のマイクロ水力発電装置を開発し、特許を取得した。発電に必要な流速や流量がない場合は、水路に水門を設置して水位を上げることで発電を可能にした。二重反転プロペラタービンを用いることで、1枚プロペラに比べて50%の効率アップを実現した。同じ水路で制御盤1台により最大8組までの発電装置を設置できるようにし、設置単価を下げる仕組みを整えた。

新しい製品・サービス:水の流速のみで発電するマイクロ水力発電装置(二重反転プロペラタービン方式)

事業の効果

農業用水路を利用して売電収入を得られる仕組みができ、農家の負担金を減らせる可能性が生まれた。売電しない場合も、山間部の耕作地のイノシシ避け設備などの電源として活用できる。売電で得た利益は用水路の維持費用や地域振興に充てることができる。設置実績は全国9カ所に広がり、農業水路を活用した地産地消型エネルギーとして評価されている。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで、採択された計画の標準を3として見ています。公開情報では判断できない観点は点数を出さず、平均にも入れていません

観点の平均3.2 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

この事例が強かった観点

  • 4
    これまでの取組との一貫性社長の農業再生という志や再生可能エネルギー分野への進出経緯が記載され、事業との一貫性が読み取れる。
  • 4
    強み・弱みを踏まえた優位性落差のない水路でも流速・流量で発電できる特許技術や、二重反転プロペラで50%の効率アップという強みが具体的に書かれている。
  • 4
    顧客とニーズの裏付け農業用水路の流水を利用する点、24時間発電と太陽光の8時間稼働の比較、全国9カ所の設置実績など、顧客ニーズと優位性が具体的に示されている。

伸びしろがあった観点

  • 2
    付加価値・賃上げの目標付加価値額の増加や賃上げにつながる目標値は書かれておらず、売電単価や採算の計算がうかがえる程度。
経営戦略との整合性3.7
  • これまでの取組との一貫性4

    社長の農業再生という志や再生可能エネルギー分野への進出経緯が記載され、事業との一貫性が読み取れる。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    落差のない水路でも流速・流量で発電できる特許技術や、二重反転プロペラで50%の効率アップという強みが具体的に書かれている。

  • 課題の認識と解決3

    土地改良区の負担金増加という課題と、売電で負担を減らす方策は示されるが、高付加価値化や成長の計画数値は薄い。

事業の実現可能性2.8
  • 付加価値・賃上げの目標2

    付加価値額の増加や賃上げにつながる目標値は書かれておらず、売電単価や採算の計算がうかがえる程度。

  • 事業を進める体制3

    パートナー企業との連携や関連会社との協業、社員数11人が書かれているが、補助事業の遂行体制の詳細は薄い。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    農業用水路の流水を利用する点、24時間発電と太陽光の8時間稼働の比較、全国9カ所の設置実績など、顧客ニーズと優位性が具体的に示されている。

  • 事業化までの道筋2

    県内の水路数や更新時期、東南アジアへの技術提供構想が述べられるが、スケジュールや課題解決方法は書かれていない。

  • 財務と資金の調達3

    財務の状況は公開されている事例には出ないため、中間の3としています。

新市場性・高付加価値性4.0
  • 新しさ・高付加価値4

    固定価格買取制度下で税別34円・調達期間20年と具体数値があり、農業水路の流水利用という新しい分野の高付加価値化が示されている。

公的補助の必要性3.3
  • 波及効果・雇用4

    地産地消型エネルギーや農業水路の維持管理、東南アジアへの技術提供など、地域・雇用・インフラへの波及効果が述べられている。

  • 費用対効果3

    売電で水路維持費や農家負担金を減らす効果が示されるが、補助金投入額に対する費用対効果の数値は書かれていない。

  • イノベーションへの貢献3

    農業用水路を活用した新しいビジネスモデルとして地域にイノベーションをもたらす構想が読み取れるが、デジタル技術の具体性は薄い。

政策面3.0
  • 成長分野への進出2

    再生可能エネルギー分野への進出が述べられ、構造転換にわずかにつながるとうかがえるが、経済社会の変化との関連は薄い。

  • 地域経済への波及4

    大分県の農業用水路を活かし、売電収入で地域振興や用水路維持に充てる地域牽引型の事業であることが具体的に書かれている。

今後の展望

県内の水路だけで925.9kmあるため、全国規模での市場は大きいと見込まれる。同社の取り組みには多くの問い合わせが寄せられており、インフラ整備が進んでいない東南アジアの集落への技術提供も可能になると見込まれる。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成24年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです(画像のPDFを文字起こししてから読み取りました)。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。