最大5億円!事業再構築補助金第10回から新設されるサプライチェーン強靭化枠について解説!(令和5年度)

事業再構築補助金

新たに設けられた事業再構築補助金のサプライチェーン強靭化枠は、補助上限5億円という過去最大の補助金を提供し、製造業の国内回帰を推進します。この枠は、中小企業にとって新しいビジネスモデルの構築と、グローバルリスクの回避に向けた大きな機会を提供し、日本のものづくりの強みをさらに推進する可能性を秘めています。

サプライチェーン強靭化枠の背景にある課題

ものづくりを強みとする我が国にとって、製品を完成させるための素材をどこから調達するのかは重要な論点です。昨今のコロナ禍では、サプライチェーンの脆弱性が広範囲の産業分野に影響を及ぼしました。世界的なカントリーリスクも高まっていて、2022年末に起きた中国のiPhone製造工場の閉鎖は記憶に新しいと思います。関連記事:https://toyokeizai.net/articles/-/632628

本枠は、中国などのカントリーリスクの高まりや歴史的な円安を受けて、国内で拠点を移すことを推進するという枠組みです。 円安等の影響により仕入が高騰する一方、輸出事業者にとっては追い風となる可能性もあります。

事業再構築補助金 サプライチェーン強靭化枠の概要

事業再構築補助金のサプライチェーン強靭化枠とは、海外に製造拠点を置く製造業が中国などのカントリーリスクの高まりや歴史的な円安を受けて、国内で拠点を移すことを推進するという枠組みです。補助上限は5億円、補助率は中小企業が1/2、中堅企業は1/3となっています。

公式発表による詳細情報は以下の通りです。(後ほど解説します)

サプライチェーン強靭化枠の要件について

まずはサプライチェーン強靭化枠に申請できる要件を確認しましょう。結論から言うと、他の申請枠に比べてもハードルは高くありません。具体的には、以下の4つの要件を満たす製造業が対象となります。

  1. 事業再構築補助金の必須要件を満たすこと
  2. 取引先から国内での増産要請があること
  3. 市場規模が拡大している業態・業種に取り組むこと
  4. 賃上げをする

それぞれ解説していきます。

①事業再構築補助金の必須要件

本枠も他の申請枠と同様、以下の事業再構築補助金の必須要件を満たす必要があります。

①事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること【事業再構築要件】
②2020 年 4 月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019 年又は 2020 年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して 10%以上減少していること等【売上高等減少要件】
③事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること。【認定支援機関要件】
④補助事業終了後 3~5 年で付加価値額の年率平均 5.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 5.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること【付加価値額要件】

②の売上高等減少要件は成長枠(旧通常枠)で撤廃されたため、必須要件から外される可能性があります。また④の付加価値要件は、サプライチェーン強靭化枠では5.0%以上となります。

②取引先から国内での増産要請があること(書類提出)

サプライチェーン強靭化では、取引先から国内での増産要請があることが要件となっています。この増産要請の証明方法はまだ明らかになってませんが、取引先からそういった類の書類を提出してもらう必要があると思います。関係の深い取引先に依頼すれば満たせるハードルです。

③市場が拡大している業種・業態に取り組むこと(事務局が指定)

市場が拡大している業種・業態(事務局が指定)に取り組む必要があります。一方、市場の拡大については、扱う統計データや分析する観点によって変わるため、指定外であっても、自社でデータを集めて、市場が拡大していることを示せれば申請対象となります。
他の申請枠でも要件となっていますが、幅広い業種・業態が認められると思います。

取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態(※)に属していること※対象は事務局で指定(公募開始時に事務局HPで公開予定)。指定された業種・業態以外であっても、応募時に要件を満たす業種・業態である旨データを提出し、認められた場合には対象となり得ます。

④賃上げをする

サプライチェーン強靭化枠では、下記の賃上げ要件①、②を満たす必要があります。ここは事業計画書でも取り組む内容として記載すべき事項です。認定支援機関と相談しながら進めましょう。

①交付決定時点で、設備投資する事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高いこと。ただし、新規立地の場合は、当該新事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高くなる雇用計画を示すこと。
②事業終了後3~5年で給与支給総額を平均2%以上増加させること。

採択難易度は高い?入念な準備が肝

サプライチェーン強靭化枠には第10回公募から申請できるため、過去の採択データはまだありません。前述の申請要件のハードルは高くないため、申請自体は難しくありませんが、採択率は他の申請枠に比べて高くなると思います。その理由は、補助額です。
補助額5億円と過去最大級のモンスター枠となっているため、事務局側も採択する企業の精査は慎重になることでしょう。そのため採択難易度は高くなると予想されます。また、補助額が大きいと補助事業の内容も厚みが増すため、なるべく早めに認定支援機関に相談するようにしましょう。

まとめ

サプライチェーン強靭化枠は、国内製造の増強とサプライチェーンのロバスト化を促進し、製造業に新たなビジネス展望を提供します。この枠により、国内外のマーケットリスクを緩和し、持続可能かつ成長指向のビジネスモデルを構築することが可能となり、日本の製造業の未来に新たな可能性をもたらすでしょう。

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PROFILE

稲野 健夫(代表取締役)
稲野 健夫(代表取締役)
兵庫県出身、関西学院大学卒。調達件数100社以上、成功確率80%超。
東証プライム上場の事業会社→コンサルファームを経て2023年起業。経営者の新たな挑戦をサポートするため、事業再構築補助金やものづくり補助金、融資等を活用した資金調達支援やインキュベーション事業、イベント事業を提供しています。

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