小規模事業者持続化補助金では、店舗の改装や内外装の工事も販路開拓の取組として採択されています。ただし条件があります。当社で集計した全業種横断の採択事例331件のうち、店舗改装・内外装を主な取組とする事例は12件。重要なのは、改装が単なる老朽化の補修ではなく、新しい客層を取るための工事であることです。
このページでは、業種をまたいで「なぜ店舗改装が採択されるのか」「どんな改装なら採択されるのか」を、実際の採択事例から読み解きます。高齢者向けのバリアフリー化から、遊休スペースのイートイン化まで、業種横断で店舗改装の勝ちパターンを整理します。あわせて、原状回復との違いという、つまずきやすい論点も整理します。
目次
小規模事業者持続化補助金とは?
持続化補助金は、ものづくり補助金・新事業進出補助金・デジタル化・AI導入補助金と並び、通年で公募が行われている補助金です。年3〜4回の公募サイクルで実施されており、申請のチャンスが複数あります。
補助上限額は最大250万円(インボイス・賃上げ等の特例要件を満たした場合)、補助率は2/3〜最大3/4。小規模事業者にとって、自己負担を抑えて新しい挑戦ができる大きなチャンスです。令和8年度の予算規模は総額3,400億円にも上り、毎年約3万件以上の応募があります。
詳しくはこちら:【2026年】小規模事業者持続化補助金の最新情報を解説!
小規模事業者持続化補助金の申請枠
「自社はどの枠が最適かわからない」という方は、無料で確認できるガイドもご用意しています。最も選択されるのは「通常枠」ですが、追加要件を満たせば「賃金引上げ枠」や「創業枠」などの特別枠にも申請できます。能登半島地震の被災事業者の方はより優遇して補助を受けられる「災害支援枠」に申請できます。
詳しくはこちら:持続化補助金の申請枠(通常枠・特別枠)を徹底比較
持続化補助金の直近採択率
正直に申し上げると、直近の持続化補助金の難易度は上がっており、採択結果は非常に厳しいものとなっております。
たとえば第16回締切分の結果は、7371件の申請のうち2741件、採択率は37.2%でした。これは前回(第15回)の採択率41.8%を下回り、過去最低となる事業者にとって非常に厳しい結果となりました。
ただし上の数字が示すとおり、公募回によって40%を切ることもあれば50%を超えることもあります。最終的に明暗を分けているのは事業計画書の完成度です。
記事:【令和8年度】補助金採択率が急減!原因と成功の秘訣を解説
持続化補助金の店舗改装・内外装とは
持続化補助金における店舗改装・内外装は、販路開拓を目的とした店舗の改装、内装・外装工事、レイアウト変更を指します。客席の改装、バリアフリー化、新しい売り場やスペースの設置、外装の刷新などが該当します。
単なる修繕・原状回復は対象にならない
店舗改装で最も誤解されやすいのが、何でも工事費が補助されるという思い込みです。
老朽化した設備の修繕、壊れた箇所の原状回復、単なる内装の入れ替えは、販路開拓とみなされず対象になりません。補助されるのは、改装によって新しい客層や需要を取りにいく工事です。
たとえば、トイレを洋式化してインバウンドや高齢者に対応する、デッドスペースを売り場に変える、工場を見学できるように改装する。こうした「改装の先に新しい客がいる」工事が採択されます。同じ工事でも、なぜその改装が販路開拓になるのかを示せるかどうかが分かれ目です。
店舗改装案件の傾向と、採択されやすい理由
店舗改装・内外装は、宿泊・飲食業を中心に採択されています。客が空間で過ごす業種ほど、内外装の質が直接、取れる客層や満足度を左右するからです。
採択されやすい理由を、当社の支援経験から3点に整理します。
改装が新しい客層への対応になること
バリアフリー化で高齢者を、洋式化でインバウンドを、というように、改装は今まで取れなかった客層への対応になります。事例の旅館が「和室の洋式化で高齢者新規客を獲得」したように、改装と新客層が直結する構図は審査で理解されやすくなります。
遊休スペースを売り場に変えられること
使っていなかった空間を、売上を生む場所に変えるのも改装の力です。事例の小売店が「デッドスペースをイートインに改装」したように、既存の資産を活かして新しい収益源を作る取組は、費用対効果の高さが評価されます。
効果が来店数・客単価で測れること
改装後の来店数、客単価、新規客数など、成果を数字で示せます。事例の味噌製造業が「販売スペース新設で店舗販売26%増」と語れたように、効果を具体的に追えるのが強みです。
業種別の分布
店舗改装・内外装12件を業種別に見ると、宿泊・飲食業が最多で、小売、製造と続きます。空間で顧客をもてなす業種ほど、改装が販路に効くことが数字に表れています。
| 業種 | 件数 |
|---|---|
| 宿泊業・飲食業 | 5 |
| 卸売業・小売業 | 3 |
| 製造業 | 3 |
| 建設業 | 1 |
注目の採択事例3選
業種も改装の狙いも異なる3件を、内容・効果・事業者の声まで全文で紹介します。新客層への対応、遊休スペースの活用、リアル接点の創出という、店舗改装の3つの典型パターンです。いずれも改装が新しい客や需要につながっている点が共通しています。
事例1:バリアフリー化で高齢者の新規客を取る(旅館/宿泊)
有限会社清野旅館「洋式化、バリアフリー化で高齢者新規客の受け入れに対応」
事業の内容
現在顧客のうち35%を占め、年々率の上昇している高齢者にターゲットを当て、既存の和室をバリアフリー対応の洋室にすることで販路開拓を図るため、平成28年9月14日から10月1日にかけ、既存の和室客室を洋式化する工事を行った。
事業の効果
洋式化によるバリアフリー化が実施できたことで、平成28年12月に新たに4グループ12人の高齢者新規顧客の受け入れを行うことができた。 これにより、前年同月対比で103,680円の売上増となった。また、高齢者リピーターの安定的な確保の足掛かりができ、販路開拓につながった。
事業者の声
当補助事業により売上の35%を占めていた高齢者にターゲットを当てた客室の洋式化が行え、年間を通してお客様の景気動向に最も左右され易い旅館業とっても、売上の季節変動を減らし、安定的な収益の増加が実現できることとなった。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
増えていく高齢客に対応するため、和室を洋室にバリアフリー化した事例です。改装を、すでに顧客の35%を占める高齢者という明確なターゲットを取りにいく手段として位置づけました。誰のための改装かがはっきりしているため、販路開拓としての筋が通っています。
事例2:遊休スペースをイートインに変えて賑わいを作る(小売)
宮崎商店「人口1500人の街にイートインスペースを設置し街の賑わいに寄与」
事業の内容
人口1500人弱の小さな町の小売店にイートインスペースを開設した。 イートインスペースはデッドスペースの有効活用として改装し、開設するとともに、弁当・惣菜など、中食の販売拡大に取り組んだ。
事業の効果
人口減少で営業環境は、厳しさを増しているが、イートインスペースができたことで、弁当に刺身やカップ麺を購入する方が増え、売上げのアップにつながっている。一日、改装前30食だったのが、40~60食(30%以上アップしている) 観光客の方が、生簀の魚をその場で食べることができるようになったことで、集客につながっている。(週末、祝日には10名以上の方が訪れ、年間に積算すると、700人以上の集客が望め、10%の売上増が期待できる。) 習い事や仲間で使いたいという声があり、利用時には、弁当や、菓子、飲み物などの販売につながっている。
事業者の声
長年、移動販売を続けてきたことが、地域の方の信頼を得ることができ、売上減少をカバーしてきたが、補助金を活用したことで新たな取り組みができ、売上アップにつながった。 交流人口を、集客することで、売上増に期待するとともに、顧客の要望にこたえられるように、日々商売と向合っていきたい。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
使っていなかったデッドスペースを、イートインに改装して新しい収益源にした事例です。改装が中食の販売拡大と観光客の集客を同時に生み、人口減少の町で売上を伸ばしました。既存の空間を活かして売り場を増やす、小さな事業者に現実的な改装の好例です。
事例3:工場を見せる場に改装してBtoBから直販を開く(味噌製造/製造)
名刀味噌本舗「工場見学を受け入れられる改装を行い、商品の魅力告知を実施」
事業の内容
補助金を活用して、商品を生産する工場の改装と販売スペースの新設を実施し、直接販売を充実させることで来店頻度と商品購入頻度の増加に伴う売上拡大を図る。 ほとんど実施していなかった工場見学を積極的に受け入れることで、昔ながらの製法にこだわった食品添加物無添加の商品をより多くの顧客へ周知することが可能になる。
事業の効果
販売スペース設置に伴う店舗改装によって、来店客の増加に繋がり、店舗販売は新規事業開始3ヶ月で26%増加している。 工場見学者は開始3か月で20名に上り、工場見学後に商品のついで買いも増加。 店舗販売の増加だけでなく、全体的な売上の押し上げにも成功し、全体売上は前年同期よりも16%増加している。
事業者の声
売れ筋商品である「あま酒」の品質向上を実施し、更なる販路拡大を目指している。 持続的に発展していくために、平成29年中の法人成りを目指している。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
製造の現場を見学できるように改装し、販売スペースも新設した事例です。工場をBtoBの生産拠点から、顧客が訪れて商品を知り、その場で買う場へと変えました。改装によってリアルな顧客接点を作り、直販という新しい販路を開いた構図です。
採択されるための申請のポイント
店舗改装案件で採択を引き寄せるための要点を、当社の支援経験から整理します。
「修繕」ではなく「販路開拓」だと示す
老朽化の補修や原状回復は対象になりません。その改装で、今まで取れなかったどんな客層や需要を取りにいくのか。改装の先にいる新しい顧客を具体的に示すことが、採択の絶対条件になります。
改装で取りにいく客層を一つに絞る
高齢者なのか、インバウンドなのか、ファミリー層なのか。改装はターゲットによって最適な形が変わります。事例の旅館がバリアフリー化で高齢者を狙ったように、誰のための改装かを一つに絞ると、計画に筋が通ります。
効果を来店数・客単価の見込みで示す
改装の効果は、来店数、客単価、新規客数、滞在時間などで測れます。事例の味噌製造業が「店舗販売26%増」と語れたように、効果を数値の見込みで示すと計画の説得力が増します。
遊休資産の活用は費用対効果で訴える
使っていない空間を売り場に変える改装は、既存資産を活かす費用対効果の高さが武器になります。デッドスペースがどんな収益を生むようになるかを示すと、投資の妥当性が伝わります。
工事の範囲と販路開拓の関係を明確にする
どこを、なぜ改装するのかと、それが販路開拓にどうつながるかを一対一で結びます。建物全体の改修ではなく、販路開拓に必要な範囲に絞ったほうが、補助金の趣旨に沿った計画になります。
店舗改装・内外装の採択事例 全一覧
店舗改装・内外装を主な取組とする採択事例を、企業ベースで一覧化しました(全12件・企業ベース11社)。
| 企業名 | 業種 | 取組概要 |
|---|---|---|
| 亀山温泉ホテル | 宿泊業・飲食業 | シアタースペース新設による顧客満足度向上と宿泊及び地元顧客の獲得 |
| 和風レストラン 静久 | 宿泊業・飲食業 | 和式トイレから洋式トイレへの改修によるインバウンド需要の取込み |
| 日光山 BackPackers Inn | 宿泊業・飲食業 | お客様の要望で夕食や朝食の提供、夜は宴会に、売上は1.32倍UP |
| 有限会社清野旅館 | 宿泊業・飲食業 | 洋式化、バリアフリー化で高齢者新規客の受け入れに対応 |
| 株式会社 下風呂観光ホテル | 宿泊業・飲食業 | シニア世代の受け入れがしやすくなるようにバリアフリー化工事を実施 |
| ケーキカフェアヴァンセ | 卸売業・小売業 | 遊休地のオープンカフェ化で地域住民の交流の場の創出と客数拡大 |
| 宮崎商店 | 卸売業・小売業 | 人口1500人の街にイートインスペースを設置し街の賑わいに寄与 |
| 石井果樹園 | 卸売業・小売業 | カフェ開設による里山の元気復活計画 |
| 名刀味噌本舗 | 製造業 | 工場見学を受け入れられる改装を行い、商品の魅力告知を実施 |
| 田代屋 | 製造業 | 店舗の国際化による外国人観光客獲得 |
| 江口板金工業株式会社 | 建設業 | 県外社寺仏閣への出張工事を展開し販路を拡大 |
個別のご相談について
このページで紹介したのは公開事例の概要です。自社の場合にどこを、どんな客層のために改装すれば販路開拓として採択されやすいかは、店舗や業種によって変わります。具体的な活用方針は面談でお話しします。
レオン・ストラテジーは中小企業診断士として、240社以上の補助金申請を支援してきました。計画書の骨格づくりから採択後の実績報告まで伴走します。
よくある質問(FAQ)
店舗の改装費は持続化補助金の対象になりますか?
販路開拓につながる改装であれば対象になり得ます。ただし老朽化の修繕や原状回復は対象外です。その改装で新しい客層や需要をどう取るかを示す必要があります。
古くなった内装の修繕は補助されますか?
単なる修繕・原状回復は対象になりません。改装によって新しい客層を取りにいく、需要を生み出すという販路開拓の文脈が必要です。同じ工事でも目的の立て方で結果が変わります。
バリアフリー化やトイレの洋式化は対象ですか?
対象になり得ます。高齢者やインバウンドという新しい客層への対応として、バリアフリー化や洋式化は採択事例があります。誰のための改装かを明確にします。
外装・看板の工事はどちらのカテゴリーですか?
外装工事は店舗改装、看板単体は看板・サインとして整理されることが多いです。両方を行う場合は、それぞれの目的を計画で明確にします。費目の切り分けに注意が必要です。
厨房や設備の入れ替えも改装に含まれますか?
設備が主目的の場合は機械・設備導入として整理されることがあります。内外装の改装が主か、設備導入が主かで位置づけが変わるため、計画で主従を明確にします。
建物全体のリフォームも対象になりますか?
販路開拓に必要な範囲が対象です。建物全体の改修より、販路開拓に直結する部分に絞った改装のほうが、補助金の趣旨に沿った計画として評価されやすくなります。
賃貸物件の改装でも申請できますか?
申請できますが、貸主の許可や原状回復義務との関係を確認しておく必要があります。改装が販路開拓に資することを示せれば、所有・賃貸を問わず対象になり得ます。
改装工事はいつから始めていいですか?
交付決定の前に発注・契約・着工した費用は補助対象外です。採択後の交付決定通知を待ってから工事に着手するのが原則で、フライングは認められません。
小規模事業者の従業員数の上限は何人ですか?
業種で異なります。製造業・建設業・運輸業・宿泊業は20名以下、商業(卸売・小売)・サービス業・飲食店は5名以下が小規模事業者の要件です。
補助金は改装完了後すぐに受け取れますか?
受け取れません。持続化補助金は**精算払い(後払い)**で、事業を完了し実績報告を提出・確認されてから入金されます。工事費はいったん自己資金で立て替える前提で資金計画を組みます。
補助金のご相談
持続化補助金は、申請のたびに公募要領が変わり、店舗改装は販路開拓との紐づけ方ひとつで採択のしやすさが変わります。自社の改装をどう計画書に落とし込めば採択されるか、まずは一度ご相談ください。
レオン・ストラテジーは中小企業診断士として、持続化補助金をはじめ各種補助金の申請を240社以上支援してきました。計画づくりから採択後の実績報告まで伴走します。お気軽にお問い合わせください。
30分無料相談(完全無料・営業なし)はこちら。「まず話だけ聞いてみたい」という補助金申請が初めての方にも、わかりやすく丁寧にご説明いたします。
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漁業の持続化補助金について、自社の水産物をどう高付加価値化して新しい販路につなげるか、どの経費区分で組むべきか迷う場合は、計画段階からの伴走支援をご利用ください。240社以上の支援実績をもとに、採択される事業計画づくりをお手伝いします。
出典・参考資料
- 小規模事業者持続化補助金<一般型>補助金事務局(商工会議所地区)
- 小規模事業者持続化補助金について(中小企業庁)
- 補助金公募情報一覧(中小企業庁)
※本記事は上記公式資料をもとに作成しています。制度内容は変更される場合があります。申請の際は必ず最新の公募要領をご確認ください。
免責事項・ご注意
- 本記事について
本記事は、中小企業庁・補助金事務局が公表している公式資料をもとに、情報提供を目的として作成しています。特定の補助金申請の採択を保証・推奨するものではありません。 - 制度変更について
本補助金は公募回(現在:第19回)ごとに要件・補助率・スケジュール・申請枠が変更される場合があります。また申請窓口は商工会地区と商工会議所地区で異なります(事業支援計画書(様式4)の発行先が異なるため、事前に自社の管轄を必ずご確認ください)。 - 申請の際は必ずご確認ください
商工会議所地区 補助金事務局サイトに掲載の最新公募要領
管轄の商工会または商工会議所への事前相談(様式4の発行受付締切に注意)
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PROFILE

- 中小企業診断士 / 資金調達・補助金コンサルタント / 外資系戦略コンサルティングファーム出身。独立後、事業再構築補助金・ものづくり補助金を中心に200社超の資金調達を支援し、採択率80%以上を継続して維持しています。補助金申請において最も難しいのは「書類を書くこと」ではなく、「審査員に刺さる事業計画を設計すること」です。戦略コンサルとしての経験を活かし、単なる申請代行ではなく、事業計画の立案から採択後の実行フェーズまでを一気通貫でサポートすることを強みとしています。これまでの支援先は製造業・小売業・サービス業など幅広く、初めての補助金申請から複数回採択の実績づくりまで対応しています。また、補助金メディアの執筆者として1,000本超の記事を執筆。最新の制度情報・審査傾向を常にアップデートしながら、読者と支援先の双方に正確な情報を届けることを使命としています。



