2026年度、海外展開を見据えた設備投資を検討する事業者にとって、最大の注目ポイントがグローバル枠の大幅拡充です。統合により、グローバル枠の補助上限は旧ものづくり補助金の最大3,000万円から、最大7,000万円(特例時9,000万円)へと2倍以上に引き上げられる見込みです。
一方で、グローバル枠は基本要件に加えて海外事業特有の要件・書類が求められ、「通常の設備投資の感覚」で申請すると不足が生じやすい枠でもあります。この記事では、統合後のグローバル枠について、補助額・対象経費・申請要件・採択のポイントまで解説します。
目次
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?
2026年度より、旧「ものづくり補助金」と旧「新事業進出補助金」は1つの補助金に統合され、予算規模約2,960億円の大型制度として生まれ変わります。
【重要】2026年度からの統合について 旧「ものづくり補助金」と旧「中小企業新事業進出補助金」は、2026年度より「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」として1本化される予定です。制度の目的・補助水準は旧制度と同水準で維持される見込みです。公募要領は2026年6月公開予定。最新情報は中小企業庁の公募情報ページでご確認ください。
従来の「新事業進出補助金」と「ものづくり補助金」が統合された形で、3つの申請枠で実施される予定です。
詳しくはこちら:【最新】新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?
基本要件
新事業進出補助金の基本要件や補助上限、補助率等は以下のとおりです。
1. 企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦(新規性)
- 成長や事業拡大に向けた新たな事業展開を計画している。
- 新規性があり、既存事業との差別化が明確である。
(付加価値額の年平均成長率+4%以上増加)
2. 賃金要件
- 事業所内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上水準。
- 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表
グローバル枠とは?
グローバル枠では、海外事業を実施し、国内の生産性を高める取組みに必要な設備・システム投資等を支援します。たとえば、海外市場向けの製品開発、輸出体制の整備、海外展示会への出展、インバウンド需要を取り込む製品・サービス提供体制の整備などが対象になり得ます。
- 従業員数20人以下:2,500万円(3,000万円)
- 従業員数21~50人:4,000万円(5,000万円)
- 従業員数51~100人:5,500万円(7,000万円)
- 従業員数101人以上:7,000万円(9,000万円)
補助上限・補助率(見込み)
| 旧ものづくり補助金 グローバル枠 | 統合後 グローバル枠(見込み) | |
|---|---|---|
| 補助上限 | 3,000万円 | 最大7,000万円(特例時9,000万円) |
| 補助率 | 中小1/2・小規模2/3 | 原則2/3 |
補助上限・補助率ともに大幅に有利になる見込みで、海外展開・輸出体制強化を検討する企業にとっては過去最大規模の支援になります。なお、補助率・上限・特例の確定値は公募要領で必ずご確認ください。
出典:中小企業庁
「革新的新製品・サービス枠」はものづくり補助金と同程度、「新事業進出枠」は新事業進出補助金と同程度の補助率・上限額が設定されています。特にグローバル枠は補助上限額が従業員規模別に設定され、最大7,000万円(特例時は9,000万円)と大幅に引き上げられる点が注目されます(旧ものづくり補助金のグローバル枠は最大3,000万円)。
グローバル枠 追加書類
グローバル市場開拓枠では、海外事業の種類に応じて追加の書類提出が求められます。
- 海外への直接投資に関する事業
海外子会社等の事業概要・財務諸表・株主構成が分かる資料 - 海外市場開拓(輸出)に関する事業
事前のマーケティング調査に基づく、想定顧客が具体的に分かる海外市場調査報告書 - インバウンド対応に関する事業
想定顧客が具体的に分かるインバウンド市場調査報告書 - 海外事業者と共同で行う事業
共同研究契約書又は業務提携契約書(検討中の案を含む)
ローバル枠|活用事例
※グローバル枠は採択率が21.9%と製品・サービス高付加価値化枠(34.8%)より一段低く、単なる輸出では足りず、海外拠点運営や革新的な海外向けサービス展開などハードルが高く設定されています。以下はその要件を満たした事例です。
事例①|伝統工芸業 和櫛の海外向け高付加価値製品開発と欧米EC展開
- 業種・規模: 伝統工芸品製造・従業員12名
- 課題: 国内の和装需要の縮小により売上が低迷。海外での「JAPAN BRAND」への関心の高さに着目したものの、多様な髪質に対応した製品がなく、欧米市場への参入が困難だった。
- 取り組み: 多様な髪質に対応する立体的一体形成し表面加工した和櫛の開発に取り組み、欧米人の髪質にも対応できる素材・形状の研究開発と専用加工機の導入を実施。海外向けECサイトの構築と現地展示会への出展も合わせて行った。
- 活用した主な補助対象経費: 機械装置等費(精密加工機)、開発費(試作品開発)、海外向け広告宣伝費、展示会出展費・旅費
- 結果: 欧米向けECで月次販売数が安定推移。国内売上比率を下げつつ、海外売上比率を新たな柱として確立。補助金額は約2,000万円(補助率2/3)。
事例②|製造業 青果物のプラズマ殺菌装置開発とアジア輸出事業
- 業種・規模: 食品関連機械メーカー・従業員28名
- 課題: アジア各国では農産物の衛生管理基準が厳格化しており、低コストで殺菌できる装置のニーズが高まっていたが、国内向け製品のみで海外仕様への対応ができていなかった。
- 取り組み: 青果物生産地のロスを減らすプラズマ殺菌装置開発事業として、タイ・ベトナム向けの現地電源・衛生基準に対応したプラズマ殺菌装置を開発。現地バイヤーとの商談会参加および現地代理店の開拓も並行して進めた。
- 活用した主な補助対象経費: 機械装置等費(試作・製造設備)、開発費(現地仕様への改良)、海外旅費、通訳・翻訳費
- 結果: タイの農産物加工業者3社と契約締結。現地代理店を通じた継続受注モデルを構築。補助金額は約2,500万円(補助率2/3)。
事例③|IT業 ベトナム医療機関向けクラウド型統合システムの開発・展開
- 業種・規模: 医療系システム開発会社・従業員42名
- 課題: 国内の医療DX市場は競合が多く、成長に限界を感じていた。ベトナムでは医療IT化が急速に進んでおり、現地病院から問い合わせが来ていたが、対応するシステム・インフラがなかった。
- 取り組み: ベトナムの医療機関における横断的なクラウド型統合システムの開発として、電子カルテ・予約管理・在庫管理を一元化したSaaSを開発。ベトナム語対応UIと現地の医療規制への適合も行い、現地法人設立と合わせて展開した。
- 活用した主な補助対象経費: 機械装置等費(サーバー・開発環境)、開発費(現地言語・規制対応)、海外旅費、専門家謝金(現地法規専門家)
- 結果: ホーチミン市内の病院5施設に導入。月額ライセンス型で継続収益を確保し、国内外の収益比率の多様化に成功。補助金額は約2,800万円(補助率2/3)。
上記の事例は弊社の申請サポートにより実際に採択された事例をベースにご紹介しています。申請をご検討の方はぜひ一度ご相談ください。
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よくある疑問・FAQ
Q1. グローバル枠とはどんな枠ですか?
A. 海外事業の実施を通じて、国内の生産性向上につなげる取組を支援する枠です。海外市場の開拓や、輸出に向けた国内体制の強化に係る設備投資等が対象となります。円安や経済安全保障を背景に海外進出ニーズが高まる中、3枠の中で最も補助上限が大きく設定されている一方、要件のハードルも最も高い枠です。
Q2. 「グローバル要件」とは何ですか?単なる輸出ではダメなのですか?
A. グローバル枠では、海外直接投資、海外市場開拓(輸出)、インバウンド対応、海外事業者との共同事業など、定められたグローバル要件のいずれか1つ以上に該当する必要があります。単なる輸出だけでは要件を満たしにくく、海外拠点での活動や革新的な海外向けサービス展開など、踏み込んだ海外戦略が求められます。
Q3. 補助率と補助上限はどのくらいですか?
A. 統合に伴い補助上限が大幅に引き上げられ、旧ものづくり補助金の全規模共通3,000万円(特例時4,000万円)から、統合後は従業員規模別に最大7,000万円(大幅賃上げ特例適用時は最大9,000万円)規模へ拡充される見込みです。補助率は2/3が見込まれています。海外展開を狙う企業にとって大きな後押しとなりますが、正確な金額は最新の公募要領でご確認ください。
Q4. 対象になる経費にはどんなものがありますか?
A. 機械装置・システム構築費(必須)などに加え、グローバル枠特有の経費として、海外旅費、通訳・翻訳費、海外市場開拓(輸出)に関する広告宣伝・販売促進費などが対象に含まれます。海外市場での事業展開を実際に進めるための費用まで幅広くカバーされる設計です。
Q5. 海外展開調査報告書や実現可能性調査は必要ですか?
A. グローバル枠では、海外事業に関する実現可能性調査の実施や、詳細な「海外展開調査報告書」の作成が求められる場合があります。ターゲット市場における具体的な販売戦略や、実現可能性の高い海外進出計画を客観的に示す必要があるため、専門性の高い資料準備が前提になります。早めに調査・計画づくりに着手することが重要です。
Q6. グローバル枠は採択されやすいですか?なぜ難関なのですか?
A. グローバル枠は3枠の中で最も採択ハードルが高い傾向にあります。直近の採択率は20%台前半〜半ば(21〜26%前後)で推移しており、革新的新製品・サービス枠の30%台と比べて一段低い水準です。海外拠点運営や革新的な海外向けサービス展開など、要件が高く設定され、専門的な資料作成も必要なことが理由です。
Q7. 海外展開する新製品の場合、革新的新製品・サービス枠とどちらで申請すべきですか?
A. 新製品を開発し海外市場へ展開する計画は、両方の枠に該当する可能性があります。技術革新や付加価値向上を主軸に説明するなら革新的新製品・サービス枠、海外市場での販売戦略を主軸に説明するならグローバル枠が向きます。どちらを選ぶかで事業計画書の構成や強調点が大きく変わるため、申請前にどの枠が最適かを整理しておくことが重要です。
Q8. 補助事業の実施期間はどのくらいですか?
A. グローバル枠は海外事業を伴うため、他枠より実施期間が長めに設定される傾向があります。旧制度では交付決定日から12か月(採択発表日から14か月後まで)が目安でした。海外との調整は想定外の遅延が起きやすいため、スケジュールに余裕をもった計画づくりが欠かせません。正確な期間は最新の公募要領でご確認ください。
Q9. インバウンド対応もグローバル枠の対象になりますか?
A. はい。グローバル要件には海外直接投資や輸出に加え、インバウンド(訪日外国人)需要への対応も含まれます。国内にいながら海外需要を取り込む取組も、要件を満たせば対象になり得ます。ただし、その取組が国内の生産性向上にどうつながるかを明確に示す必要があります。
Q10. 採択されるための事業計画のポイントは何ですか?
A. ターゲット市場における具体的な販売戦略と、実現可能性の高い海外進出計画を、客観的な調査データで裏づけることが最重要です。「なぜその市場か」「どう売るか」「なぜ実現できるか」を、海外展開調査報告書などの専門資料で論理的に示しましょう。海外戦略の具体性と裏づけが、採択の可否を分ける鍵になります。
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参考・引用資料
本記事は以下の公式資料をもとに作成しています。
免責事項・ご注意
本記事について
本記事は、中小企業庁およびものづくり補助金事務局が公表している公式資料をもとに、情報提供を目的として作成しています。特定の補助金申請の採択を保証・推奨するものではありません。
制度変更について
ものづくり補助金は、公募回ごとに補助率・補助上限額・対象要件・スケジュール等が変更される場合があります。また、2026年度以降は「新事業進出・ものづくり補助金」として制度再編が行われる可能性もあります。制度内容は予告なく変更される場合があるため、申請前に必ず最新の公募要領をご確認ください。
申請の際は必ずご確認ください
- ものづくり補助金総合サイトに掲載されている最新公募要領
- GビズIDプライムアカウントの取得状況
- 認定支援機関または中小企業診断士等の専門家への相談
損害免責
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PROFILE

- 中小企業診断士 / 資金調達・補助金コンサルタント / 外資系戦略コンサルティングファーム出身。独立後、事業再構築補助金・ものづくり補助金を中心に200社超の資金調達を支援し、採択率80%以上を継続して維持しています。補助金申請において最も難しいのは「書類を書くこと」ではなく、「審査員に刺さる事業計画を設計すること」です。戦略コンサルとしての経験を活かし、単なる申請代行ではなく、事業計画の立案から採択後の実行フェーズまでを一気通貫でサポートすることを強みとしています。これまでの支援先は製造業・小売業・サービス業など幅広く、初めての補助金申請から複数回採択の実績づくりまで対応しています。また、補助金メディアの執筆者として1,000本超の記事を執筆。最新の制度情報・審査傾向を常にアップデートしながら、読者と支援先の双方に正確な情報を届けることを使命としています。



