脱炭素社会への移行が加速する中、企業には二酸化炭素(CO2)排出量の削減が求められています。特に、カーボンプライシングは環境負荷のコストを明確にし、企業の脱炭素化を推進する重要なツールとなっています。しかし、これに伴う取り組みには多大なコストがかかる場合もあります。そこで、企業がカーボンプライシング対応のために活用できる補助金や助成金の存在が、今後ますます重要になるでしょう。
本記事では、脱炭素化に向けたカーボンプライシングと、それに関連する補助金制度について詳しく解説します。
目次
今後10年で150兆円超のGX投資
政府は2023年、今後10年間で官民合わせて150兆円超のGX投資を実現することを表明しました。その実現に向け、カーボンプライシングや国債を利用したGXへの投資の促進が必要です。その中でも重要な施策である「カーボンプライシング」について解説します。
カーボンプライシングとは?
脱炭素に関する話題の中で、「カーボンプライシング」という言葉をよく耳にするという方も多いのではないでしょうか。
カーボンプライシングとは、CO2などの温室効果ガス排出に対して価格を設定し、企業にその負担を求める仕組みです。これにより、環境負荷をコストとして可視化し、企業が自発的に排出削減を進める動機づけとなります。国際的には、炭素税や排出量取引などが導入されており、持続可能な経済成長を実現するための重要な政策手段とされています。
カーボンプライシングが注目される理由
「カーボンプライシング」という言葉が広く知られるようになったのはここ10年ほどですが、その概念自体は以前から存在していました。たとえば、1990年にフィンランドが導入した炭素税を皮切りに、北欧諸国が次々に同様の制度を採用してきました。近年、この仕組みが再び注目を集めている理由として、脱炭素の重要性が増す中で、政府主導だけでなく、民間企業による取り組みも活発化している点が挙げられます。
カーボンプライシングの種類
カーボンプライシングとは、排出する炭素量に応じて価格付けをする手法です。カーボンプライシングには、2つの主要なアプローチがあります。
- 明示的カーボンプライシング:具体的に価格を設定し、炭素税や排出量取引(キャップ&トレード)が該当します。炭素税は、一定量のCO2排出に対して税を課すもので、排出量取引は企業に排出枠を割り当て、それを取引する制度です。
- 暗示的カーボンプライシング:税や規制により間接的に価格が設定されるもので、日本の石油石炭税や再生可能エネルギーへの賦課金がこれにあたります。
日本におけるカーボンプライシングの現状
日本でもカーボンプライシングの取り組みが進められています。全国的に導入されているカーボンプライシング制度には、温対税(炭素税)とJクレジット(クレジット取引制度)があります。
出所:環境省 カーボンプライシングの活用に関する小委員会(第17回) カーボンプライシングの全体像
温対税はCO2排出量に対して1トンあたり289円の税率が設定されていますが、他国と比べて「低い」と評価されることが多いです。しかし、税率だけで評価するのは適切ではありません。課税対象の範囲や他の脱炭素関連の課税・規制も考慮する必要があります。それでも、日本の炭素価格は国際的に低い水準にあると言えるでしょう。
参照:環境省・経産省資料、Jクレジット制度HP等
一方、Jクレジットは自主的な取り組みを評価する制度であり、法的拘束力はありません。
削減努力を認証する仕組みは重要ですが、2013年の制度開始以来、8年間で認証された削減量はわずか706万t-CO2にとどまり、2019年度の日本の温室効果ガス排出量の約0.6%にしか相当しません。これからもわかるように、自主的な取り組みだけでは排出削減の効果は限定的であることが示唆されています。
企業が利用できる補助金制度
企業が脱炭素化を推進する際、コスト負担を軽減するための補助金制度は今後も重要な役割を果たすと考えられます。特に、令和7年度の予算案には、新たなカーボンプライシング対応や脱炭素関連の補助金が含まれる可能性が指摘されています。
現行の制度としては、省エネルギー設備導入支援や再生可能エネルギー利用に対する補助が充実していますが、最新の制度情報を随時確認することが重要です。
まとめ
カーボンプライシングは企業にとって環境負荷削減の大きなプレッシャーである一方、持続可能なビジネス展開への転換を促す重要な手段です。これに対応するためのコストを補うために、補助金制度を積極的に活用し、企業の成長と環境保全を両立させることが今後の課題となるでしょう。
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