補助金は企業や個人事業主の財務支援となる重要な要素ですが、申請から採択後の記帳まで、適切な知識が必要です。この記事では、補助金採択後の圧縮記帳の方法と注意点を分かりやすく解説し、税負担の軽減を目指す具体的なアプローチを紹介します。
目次
補助金の圧縮記帳とは
補助金の圧縮記帳は、補助金を受け取った際の税金負担を減らすための手法です。具体的には、補助金の税金を受け取った年度に一括で課税するのではなく、次年度以降に税金の支払いを延ばすことができます。この制度を利用することで、補助金受取年の税負担を軽減し、税金の支払いタイミングを調整することが可能となります。
国税庁では、法人税法上の特例として課税負担を一時的に減らす会計処理である圧縮記帳を認めています。
補助金 圧縮記帳するメリット
①補助金の課税の繰延処理ができる
国税庁は、法人税法上の特例として圧縮記帳を認めており、これにより補助金の臨時的な税金を一括に課税するのではなく、税金の支払いのタイミングを次年度以降に遅らせることができます。これは企業にとって、資金流の管理をより柔軟に行い、短期的な財務負担を軽減する大きなメリットとなります。
②補助金の会計処理の効率化
圧縮記帳は、複数の取引を一つにまとめる手法であり、これにより補助金の記帳処理を効率化することができます。記帳に要する時間と労力が大幅に削減されます。
③エラーリスクの低減
記帳の手間が減少することで、人為的なエラーや誤記のリスクも低減します。記帳の正確性が保たれ、企業の財務報告の信頼性が向上します。
補助金の会計処理の方法(圧縮記帳なし)
まずは一般的な補助金の会計処理の方法を解説します。こちらは圧縮記帳しないパターンです。
- 補助金の交付決定時
- 補助金を補助金する時
- 補助金の交付が決算をまたぐ時
- 補助金が振り込まれた時
○補助金の交付決定時
例えば、支給決定通知書により100万円の補助金が下りたら、その時点で以下のように仕訳をします。
○補助金を清算する時
補助金清算後、実際に振り込まれたら、未収入金を消します。
○補助金の交付が決算期を跨ぐ時
交付決定から入金までに手続きや審査で時間が掛かり、決算期をまたぐ場合があります。その場合は一度「未収入金」勘定で仕訳を行い、取引を計上しておきましょう。以下例のように、50万円の支給決定通知書が到着した場合は仕訳処理をします。
○補助金が振り込まれる時
翌期に補助金が振込まれたとき、次のような仕訳処理をします。
補助金 圧縮記帳した場合の会計処理例
今回の例では、「例:600万円の機械(耐用年数8年)を補助金300万円受給して購入した場合」を解説します。補助金による機械購入の圧縮記帳法を適用すると、税負担は一時的に減少します。具体的には、補助金収入を固定資産圧縮損で相殺し、初年度の減価償却費を計上します。これにより、補助金受取年の税負担は0円になりますが、翌年以降の減価償却費は通常よりも少なくなります。
それぞれの取引を二つの部分、借方と貸方に分け、それぞれの金額を示します。通常、会計ではこれらは「ジャーナルエントリ」と呼ばれる形で記録されます。ここでは、各トランザクションを次のように表現します。
例:600万円の機械(耐用年数8年)を補助金300万円受給して購入した場合(単位:千円)
トランザクション | 借方 | 金額(万円) | 貸方 | 金額(万円) |
---|---|---|---|---|
①補助金等の受領 | 現金預金 | 300 | 雑収入 | 300 |
②機械の購入 | 機械装置 | 600 | 現金預金 | 600 |
③圧縮損の計上 | 固定資産圧縮損 | 300 | 機械装置 | 300 |
④減価償却の計上 | 減価償却費 | 75 | 機械装置 | 75 |
①補助金等の受領
会社が補助金を受け取ると、現金または銀行預金が増加します(借方)。同時に、この受け取りは収入として計上されるため、雑収入(貸方)も増加します。
②機械の購入
会社が機械を購入すると、その価値は資産として会計上の「機械装置」に記録され(借方)、支払いのために現金または銀行預金が減少します(貸方)。
③圧縮損の計上
圧縮損が発生した場合、その損失額は「固定資産圧縮損」として経費(借方)に記録され、同時に関連する資産(この場合は「機械装置」)の価値が減少します(貸方)。
④減価償却の計上
決算時に減価償却費が計上されると、その費用は経費として「減価償却費」(借方)に記録され、同時に「機械装置」の帳簿価値が減少します(貸方)。
補助金等の収入300万円は固定資産圧縮損と相殺され0円になり、減価償却費75万円が経費になるため、補助金等を受給したことで発生する税負担はなくなります。ただし、翌期以降の減価償却費の額は圧縮後の金額で計上されるため、通常の会計処理をした場合に比べて少なくなります。
圧縮記帳が適用できる補助金
圧縮記帳が適用できる要件
圧縮記帳は概ね以下の要件を満たすと適用することができます。
1.圧縮限度額の範囲内で次のどれかの経理方法によること
- 帳簿価額を損金経理により減額する方法
- 確定した決算において積立金として積み立てる方法
- 決算確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法
2.確定申告書に圧縮記帳経理額の損金算入についての明細を添付すること
3.清算中の法人でないこと
補助金 圧縮記帳の方式
圧縮記帳の方式は、直接減額方式と積立金方式の2種類です。直接減額方式は「圧縮損」と呼ばれる勘定項目を発生させ、積立金方式では「繰越利益余剰金」や「圧縮積立金」という勘定項目を発生させます。それぞれの特徴は以下の通りです。
- 直接減額方式:計算方法がシンプルな分、経常利益分が少なくなる
- 積立金方式:計算方法が複雑な分、財務上正しく固定資産の計算ができる
どちらの方式を採用しても算出結果は同じですが、税理士は正しく固定資産の計算ができる積立金方式を採用することが多いようです。
補助金 圧縮記帳の注意点
1.併用できない特例
圧縮記帳と他の特例適用は併用できない場合があります。このため、企業は事前にどの特例が最も税務効果が高いのかを検討し、適切な選択を行う必要があります1。
2.法定の申告と添付書類
圧縮記帳を行う際には、法人税申告書で圧縮記帳の別表の添付が必要となります。また、償却資産税の申告には圧縮記帳の制度が適用されない点も注意が必要です2。
3.補助金の交付時期と返還条件
補助金の交付が事業年度をまたぐ場合や、期末時点で返還不要であることが確定していない場合には、圧縮記帳を適切に行うことが困難になる可能性があります。補助金が法人税の課税対象となるため、補助金の交付条件と返還条件を事前に確認し、適切な会計処理を行うことが重要です3。
補助金の相談窓口
「どんな補助金に申請できるの?」など些細な疑問でもお気軽にお申し付けください。
まとめ
補助金の採択されると補助事業を実施することができますが、採択後の会計処理は複雑になりがちです。圧縮記帳を理解し活用することで、税負担を軽減し、より効果的な資金管理が可能となります。この記事を通じて、圧縮記帳の基本と適切な手続きについて学び、補助金を最大限に活用しましょう。
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東証プライム上場の事業会社→コンサルファームを経て2023年起業。経営者の新たな挑戦をサポートするため、事業再構築補助金やものづくり補助金、融資等を活用した資金調達支援やインキュベーション事業、イベント事業を提供しています。
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