目次
補助金の仕訳処理の種類
補助金の仕訳の方法には、単式簿記と複式簿記の二種類があります。
単式簿記
単式簿記は、基本的には収支のみを帳簿に付ける方式で、家計簿のように単純な現金の流れが知りたいときに使われます。一方、複式簿記は、「借方」、「貸方」という概念を用いて、少し複雑に帳簿を付けます。昨今の会計では、複式簿記を採用することが一般的です。
【特徴】
- 現金の流れのみを記録する単純な記帳方法
- 例:「補助金100万円を受け取った」 →「現金100万円の収入」として記録
- 資産や負債の増減など、複雑な取引の二面性は記録されない
【デメリット】
- 財務状況の正確な把握が難しい
- 取引の因果関係や負債状況を記録できないため、企業の会計処理には不向き
複式簿記
複式簿記は、現金で何かを購入する取引においては、「購入したものが手に入る=資産の増加」という側面と、「現金が減少する=資産の減少」という側面があることに着眼した、取引の二面性を同時に記入する手法です。資産が増加した方を「借り方」、資産が減少した方を「貸方」と呼び、それぞれに同じ金額を記入することを仕訳といいます。それぞれに同一金額を記録していくことになるので、最終的に借方と貸方の合計額は常に一致することになります。これを「貸借平均の原理」といいます。
【特徴】
- 「借方」と「貸方」の二側面を同時に記録
- 取引の原因(資産の減少)と結果(資産の増加)を正確に反映
- 貸借平均の原理:借方と貸方の金額が常に一致するルールに基づく
【仕訳例】(補助金100万円を受け取った場合)
- 借方:現金 100万円(資産の増加)
- 貸方:雑収入 100万円(収益の発生)
このように、取引の両面を記録することで、企業の財務状況を正確に把握できるのが特徴です。
補助金の会計処理タイミング
補助金の会計処理を正しく行うためには、資金の受領や事業の進捗に応じて適切なタイミングで仕訳を行うことが重要です。以下の主要なタイミングに分けて解説します。
- 交付決定時
補助金の交付が決定された時点では、まだ資金の入金がないため、会計処理は発生しません。ただし、交付決定通知書を受領した時点で、補助対象事業の開始が認められる場合が多いため、支出の発生時期を管理する必要があります。
- 補助金清算時
補助金の対象経費をすべて使用し、実績報告を提出した後に補助金が入金されます。この時点で「雑収入」や「補助金収入」として計上され、法人税の課税対象となります。
- 決算をまたぐ場合
補助金の交付決定が年度内であっても、資金の受領が翌期になる場合は注意が必要です。この場合、未収入金として計上し、補助対象経費の支出は発生した期に計上します。 - 圧縮記帳時
補助金を活用して取得した固定資産の圧縮記帳を行う場合、補助金の受領と同時に資産の取得を行った場合に適用されます。圧縮記帳を行うことで、補助金収入分を控除し、税負担の軽減が可能となります。
補助金の会計処理を自社で適切に管理したい場合は、バックオフィスの体制強化が重要です。
会計処理を自社内で処理したい方は「【イラスト付き】バックオフィスとは?主な職種や役割、効率化のポイントを解説」なども参考になります
交付決定時
例えば、支給決定通知書により100万円の補助金が下りたら、その時点で以下のように仕訳をします。

補助金清算時
補助金清算後、実際に振り込まれたら、未収入金を消します。

決算期をまたぐ時
交付決定から入金までに手続きや審査で時間が掛かり、決算期をまたぐ場合があります。その場合は一度「未収入金」勘定で仕訳を行い、取引を計上しておきましょう。以下例のように、50万円の支給決定通知書が到着した場合は仕訳処理をします。

翌期に補助金が振込まれたとき、次のような仕訳処理をします。

圧縮記帳で課税の繰延処理が可能
圧縮記帳は、複数の取引を一つにまとめる手法です。国税庁では、法人税法上の特例として課税負担を一時的に減らす会計処理である圧縮記帳を認めています。圧縮記帳とは、補助金の臨時的に発生する税金を、補助金を受取った年度に一括に課税するのではなくて、税金の支払いのタイミングを次年度以降に遅らせることができる制度です。
例:600万円の機械(耐用年数8年)を補助金300万円受給して購入した場合
圧縮記帳した場合の会計処理
①補助金等を受け取った時
現金預金 300万円/雑収入 300万円
②機械を購入した時
機械装置 600万円/現金預金 600万円
③圧縮損の計上
固定資産圧縮損 300万円/機械装置 300万円
④決算で減価償却費を計上(償却率0.25、1年分)
減価償却費 75万円/機械装置 75万円
補助金等の収入300万円は固定資産圧縮損と相殺され0円になり、減価償却費75万円が経費になるため、補助金等を受給したことで発生する税負担はなくなります。ただし、翌期以降の減価償却費の額は圧縮後の金額で計上されるため、通常の会計処理をした場合に比べて少なくなります。
補助金の会計処理の注意点
補助金を受け取った際の会計処理は、税務上の取り扱いが複雑であり、正しい処理を行うことが重要です。本記事では、消費税の課税対象の有無や法人税の取り扱い、圧縮記帳の適用条件について解説します。
- 消費税の課税対象とはならない
補助金は、資金の受領により「収入」として計上されますが、事業活動に直接関係しないため、消費税の課税対象外となります。具体的には、補助金や助成金は売上収益ではなく、「雑収入」勘定で処理されるため、消費税の計算には含まれません。ただし、補助金を活用して購入した物品やサービスには消費税がかかるため、支出時の消費税処理は別途注意が必要です。
- 法人税は課税対象になる
補助金は法人税の課税対象となるため、受領した補助金の額に応じて法人税の計算基礎に含める必要があります。補助金は大きく以下の2つに分類されますが、どちらも法人税の課税対象となります。
経費補助金:事業運営に必要な経費を補助(例:人件費補助、研究開発費補助)
施設補助金:設備投資や建物の新設に対する補助(例:機械装置の導入補助、店舗改装費補助) - 補助金は圧縮記帳の適用条件
補助金の受領に伴い、法人税負担を軽減するための特例として圧縮記帳の適用があります。圧縮記帳とは、補助金を活用して取得した固定資産の取得価格を補助金額分だけ控除し、課税対象を減少させる制度です。
例:1,000万円の機械を導入し、300万円の補助金を受け取った場合
→ 圧縮記帳を適用すると、機械の取得価格を700万円(1,000万円 − 300万円)として計上可能
圧縮記帳できる補助金
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PROFILE

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兵庫県出身、関西学院大学卒。調達件数100社以上、成功確率80%超。
東証プライム上場の事業会社→コンサルファームを経て2023年起業。経営者の新たな挑戦をサポートするため、事業再構築補助金やものづくり補助金、融資等を活用した資金調達支援やインキュベーション事業、イベント事業を提供しています。
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