事業再構築補助金は、事業の再構築を行う中小企業、個人事業主を対象に最大8,000万円の補助金が支給されるものとなっております。比較的に経費となる幅が広く、使いやすい補助金と言われています。そこで今回は、事業再構築補助金の対象となる経費について解説します。
目次
事業再構築補助金とは
事業再構築補助金とは、ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の事業再構築を支援し、日本経済の構造転換を目的とした補助金制度です。
この補助金は、補助対象となる経費の範囲が広く、補助上限が1.5億円・補助率も2/3の大型の制度です。また、補助金は返済の必要がないため、上手に活用すれば、ビジネスのコスト軽減が可能です。
【最新】事業再構築補助金とは?補助額や申請要件、採択傾向を解説
事業再構築補助金 補助対象経費とは
「補助対象経費」とは、事業再構築補助金において支援の対象となる経費を指します。
しかし、補助事業内のすべてが対象ではなく、あらかじめ定められた11の区分のいずれかに該当することが必要です。今回は、それぞれの経費について具体的な内容を説明します。
①対象補助経費となる要件
補助対象経費とは、補助事業期間中の補助事業関連費用の支出に限られ、原則支出が確認の出来る銀行振り込みやクレジットカードの引き落としによって支払われたものが対象です。つまり、下記の要件を満たす経費が、対象補助経費となります。
- 使用目的が補助事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
- 交付決定日以降に発生し対象期間中に支払が完了した経費
- 証拠資料等によって支払金額が確認できる経費
②対象補助経費となる11区分の経費
補助対象経費は、以下のように11区分に分けられ、いずれかに該当をする必要があります。
- 建物費
- 機械装置、システム構築費
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 外注費
- 知的財産権等関連経費
- 広告宣伝費、販売促進費
- 研修費
- 海外経費
補助対象経費となる具体例11項目
①建物費
建物費は、「補助事業のために必要な建物の建設・改修費や、建物の撤去費、賃貸物件等の原状回復費」などがこれに該当します。ただし、建物の単なる購入や賃貸は対象外です。また、建物費については、入札・相見積もりが必要となります。さらに、原状回復費のみでの申請はできません。
【 例 】居酒屋からオンライン専用の弁当宅配事業へ業態転換する際の店舗縮小にかかる建物改修費
②機械装置、システム構築費
機械装置、システム構築費は、システムの導入や開発などがこれに該当します。具体的には、機械装置自体または自社で機械装置やシステムを製作・構築する場合の部品の購入に要する経費です。
なお、これらの経費は、原則、新品が対象ですが、3社以上の中古品流通事業者から型式や年式が記載された相見積もりを取得している場合には、中古設備も対象になります。
【 例 】紳士服販売事業からネット販売事業へ業態転換する際に必要となるECシステムの構築費
③技術導入費
「本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費」がこれに該当します。なお、知的財産権を所有する他者から権利を取得する場合は、書面による契約の締結が必要となります。また、専門家経費、外注費を併せて支払うことはできません。
【 例 】織物の製造から手術用ガーゼの制作に転換する際に必要となる既存特許権の「ライセンス契約」の締結費
④専門家経費
専門家経費は、「事業のために依頼した専門家経費」がこれに該当します。専門家には、学識経験者、兼業・副業、フリーランス等が該当し、これらへのコンサルティング業務や旅費等の経費が対象となります。(1日5万円が上限)なお、本補助金の申請時の認定支援機関や外部支援者への事業計画の作成費は、補助対象外です。
【 例 】新製品を開発するにあたり、技術士に品質確認や管理のコンサルをしてもらうための謝金
⑤運搬費
運搬費は、「運搬料、宅配・郵送料等に要する経費」がこれに該当します。ただし、購入する機械装置の運搬料は、機械装置・システム費の対象となります。
【 例 】新事業に関する試作品の組み立てを委託する業者から本社までの運搬料。
⑥クラウドサービス利用費
クラウドサービス利用費は、「クラウドサービスの利用に関する経費」となります。ただし、補助事業のために利用するサービスに限られ、他事業で共有する場合は補助対象外です。なお、パソコン・タブレット端末・スマートフォンなどの本体費用も補助対象となりません。
【 例 】飲食店の事業者が健康食品販売店へ事業転換する場合のオンライン決済のためのクラウドサービス利用費。
⑦外注費
外注費は、「事業に必要な一部を外注する場合の経費」がこれに該当します。外注先との書面による契約の締結が必要です。ただし、外注先が設備やシステムの購入費用や、外部に販売するための量産品の加工を外注する費用などは対象になりません。
【 例 】新商品を製造するにあたり、対象製品のプロダクトデザインや性能検査を外部の専門家に委託する際の外注費
⑧知的財産権等関連経費
知的財産権等関連経費は、「新製品・サービス等の特許権等の取得費用や外国特許出願のための翻訳料」が該当します。本事業に関する発明等ではないものや、補助事業実施期間内に出願手続きを完了していない場合は、補助対象になりません。なお、日本の特許庁に納付する手数料等も補助対象外です。
【 例 】新技術を生かした特殊部品の開発にあたり、弁理士へ支払う特許権取得のための手続き代行費用
⑨広告宣伝、販売促進費
広告宣伝、販売促進費は、「本事業で開発又は提供する製品・サービスに関する広告の作成及び媒体への掲載、展示会出展、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用費など」がこれに該当します。なお、補助事業実施期間内に広告が使用・掲載されることや、展示会が開催されることが必要です。
【 例 】新たに開発する個人向けサービスの販促のため、見込み客の獲得を目的とした展示会・セミナー開催のためのチラシ作成費やセミナー会場の借料
⑩研修費
研修費は、「事業に必要な教育訓練や講座受講等に係る経費」がこれに該当します。補助事業に必要がない教育訓練、講座受講や、研修受講以外の経費(入学金、交通費、滞在費等)は補助対象外となります。
【 例 】高齢者向け介護サービスから転換し、病院向けの給食事業を開始する際の職員の研修費
⑪海外経費(卒業枠、グローバルV字回復枠のみ)
海外経費費は、「海外事業の拡大・強化等を目的とした、本事業に必要不可欠な海外渡航及び宿泊等に要する経費」がこれに該当します。国内旅費や本事業と関係が認められない海外旅費は、補助対象になりません。また、一度の渡航に随行できるのは、専門家含め2名までとなります。
【 例 】新たに開発する製品の販売契約を締結するための海外への渡航経費
補助の対象外となる経費の例
以下のような場合は補助対象外となる可能性があるためご注意下さい。
- 補助対象企業の従業員の人件費、従業員の旅費
- 不動産、株式、公道を走る車両、汎用品(パソコン、スマートフォン、家具等)の購入費
- キッチンカーの場合には、車両自体は対象ではないが積載する機材などは対象になる。
- フランチャイズ加盟料、販売する商品の原材料費、消耗品費、光熱水費、通信費
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補助対象経費のよくある質問
①通常枠の場合、補助事業の対象経費が50万円程度でも申請できるのでしょうか?
通常枠では、補助額の下限は100万円となっています。中小企業の場合、補助率は2/3のため、最低でも150万円以上の支出を行う計画となっている必要があります。
②実際に交付される補助額は、どのように算出されるのでしょうか?
補助事業終了後、補助対象となる設備等についての経費の証憑類を提出し、事務局が支払いが適切なことを確認の上、公募要領に定める所定の補助率を適用して算定します。
③既に事業再構築を行って自社で支出した費用は、補助対象となるのでしょうか?
交付決定の前に、すでに自社で補助事業を行った場合には、その費用は原則として補助金の対象とはなりません。ただし、公募開始後に事前着手申請を提出し、事務局に承認された場合は、令和3年2月15日以降の設備の購入契約等も補助の対象となります。
④契約を申請前に行った場合は、補助金の対象となるでしょうか?
本補助金では、補助事業の実施期間内に発注(契約)を行い、検収、支払いをしたものが対象となるため、原則、対象外となります。しかし、事前着手承認を受けている範囲で行われたものについては対象となります。
⑤建物の購入や賃貸、土地の造成費用は対象となるでしょうか?
これらは、本事業における「建物費」には該当しません。本事業における建物とは、減価償却資産の耐用年数等に関する省令における「建物」の区分に該当するものが対象となります。
⑥補助金の支払いはいつ頃か?
原則、補助事業終了後に実績報告書の提出をし、補助金額の精算が済んでからの支払いとなります。ただし、一定の要件を満たす場合には、概算払も可能です。
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PROFILE
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兵庫県出身、関西学院大学卒。調達件数100社以上、成功確率80%超。
東証プライム上場の事業会社→コンサルファームを経て2023年起業。経営者の新たな挑戦をサポートするため、事業再構築補助金やものづくり補助金、融資等を活用した資金調達支援やインキュベーション事業、イベント事業を提供しています。
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