今回は、事業再構築補助金の対象経費である「建物費」について解説します。事業再構築補助金の申請を検討している人の中には、建物費を利用したいと考える人もいるでしょう。しかし、建物費で申請できる範囲は細かく定められているため注意点が必要です。本日はその事例と注意点を解説します。
目次
事業再構築補助金の建物費とは
事業再構築補助金の「建物費」にはどんな経費が対象となるのでしょうか、公募要領では以下のように定義されています。
建物費
①専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設・改修に要する経費
公募要領
②補助事業実施のために必要となる建物の撤去に要する経費
③補助事業実施のために必要となる賃貸物件等の原状回復に要する経費
➃貸工場・貸店舗等に一時的に移転する際に要する経費(貸工場・貸店舗等の賃借料、貸工場・貸店舗等への移転費等)
つまり、以下のような経費に活用できます。
- 建物の改修
- 建物の撤去
- 原状回復費用
- 一時移転
- 新築の建築
建物の改修
補助事業のために必要となる建物の改修費用は建物費に含まれます。例えば、飲食店をテイクアウトに対応できるように店舗内のレイアウトを変更する改装工事費用や、事務所のスペースをコワーキングスペースに改装する費用は建物費に該当します。
建物の撤去
補助事業実施場所を確保することを目的とした、既存建物の撤去も補助されます。ただし、補助事業を実施するための原状回復であることが条件です。
原状回復
老朽化等が原因で補助事業実施場所の現状回復工事が必要な場合も補助されます。しかし、契約満了に伴う原状回復など、補助事業実施の有無にかかわらず発生する費用は補助対象外となります。また「建物の撤去費用」と「原状回復費用」のみでの申請はできません。
一時移転
補助事業の実施に伴い一時移転が必要な場合も補助されます。しかし、一時移転に係る経費は補助対象経費総額の1/2を上限として認められます。また、補助事業実施期間内に、工場・店舗の改修や大規模な設備の入替えを完了し、貸工場・貸店舗等から退去することが必要になります。
新築の建設
第6回公募からは新築の建設費は原則補助対象外となりましたが、新築で申請したい事業者は「新築の必要性に関する説明書」を提出することで、建物費として補助される可能性があります。新築の建設費用は、工場や店舗の建設、オフィスの新築、コテージなどの宿泊施設も対象になります。
新築を建設する場合は説明書が必要
事業再構築補助金 第6回公募から以下の文言が追加されました。新築の建設費用を計上するためには、新築を建設する「経済合理性」と「代替性がないこと」を説明する必要があります。
建物の新築に要する経費は、補助事業の実施に真に必要不可欠であること及び代替手段が存在しない場合に限り認められます。「新築の必要性に関する説明書」を提出してください。※7 事業計画の内容に基づき採択された場合も、「新築の必要性に関する説明書」の内容に基づき、建物の新築については補助対象経費として認められない場合がありますのでご注意ください。
公募要領
「新築の必要性に関する説明」のDLリンクは下記
事業再構築補助金 建物費の事例
事業再構築補助金の建物費を使った採択事例としては以下のような事例が挙げられます。
- 自社で保有している土地で就労継続支援B型事務所と猫ふれあいスペース&カフェを建設した事例
- 資材置き場として使っていたスペースに野球練習場を建設して、レンタルスペース事業を行った事例
- 古民家をリノベーションして、シェアハウス・シェアオフィスに生まれ変わらせる事例
- 自社保有のテナントを改修して、地元生産者から仕入れた野菜を用い、1階を野菜専門レストラン、2階をゴルフ専門スポーツバーにした事例
- 貸事務所業からレンタルスタジオ事業への業種転換を図った事例・既存の不動産店舗をテイクアウトメインのスタンドカフェに改装した事例
- トレーラーハウスレンタルサービスから旅館業法に基づいた、宿泊施設に改装する事例
- 自社で保有しているコインランドリーも無人販売所を増築した事例
建物費が補助対象とならない場合
以下のような場合は、補助対象となりませんので覚えておきましょう。
- 補助事業以外で使用する場合
- 事務局に認められない場合
- 土地を購入するための費用
補助事業以外で使用する場合
事業再構築補助金の建物費を使って取得した建物は、補助事業でのみの使用が求められます。そのため、既存事業や別の取組で利用する経費は、補助対象外ですので覚えておきましょう。
専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設・改修に要する経費
公募要領
事務局に認められない場合
先述の通り、新築の経費を申請した事業者は「新築の必要性に関する説明書」を提出する必要があります。しかし、提出したからといって100%承認が保証されているわけではありません。事業計画の審査とは別に、独自の審査が設けられています。つまり、採択候補が決定しても、新築の経費の承認には別の審査が必要になるということです。
土地を購入するための費用建物費
土地取得に係る不動産の購入を補助対象経費にはできません。また仲介する不動産業者への支払いも対象外です。 つまり、土地購入費や仲介手数料などは補助対象経費にできません。
構築物の取得に係る経費
事業再構築補助金の建物費は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)における「建物」、「建物附属設備」に係る経費が対象です。「構築物」に係る経費は対象になりませんのでご注意ください。
建物費に含まれる例
- 事務所
- アパート
- マンション
- 工場
- 倉庫
- 店舗
構築物に含まれる例
- 塀
- 防壁
- 貯水用タンク
- アンテナ
- 青空駐車場の舗装路面
- アスファルト敷の舗装道路
- 花壇
減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)
事業再構築補助金 建物費の注意点
担保権を設定する場合
事業再構築補助金の建物費で、抵当権や根抵当権などの担保権を設定する場合、事務局の承認がないと補助対象外になります。公募要領の抵当権に関する説明は以下の通りです。
根抵当権が設定されている土地に建物を新築する場合は、根抵当権設定契約において、建設した施設等の財産に対する追加担保差入条項が定められていないことについての確認書を交付申請時に提出する必要があります。
公募要領
必要書類はなるべく早く集めておくこと
建物費を計上する場合、実績報告時の書類として見積書や納品書に加えて、建物の完成後の写真や工事完了後の図面が必要です。また、一時移転費も計上している場合は、さらに追加書類を求められます。補助事業実施期間中に納入・検査・支払いまで完了させることを考えると、なるべく余裕を持っておくことがおすすめです。
その他のNG経費例はこちら
まとめ
今回は事業再構築補助金の「建物費」について解説しました。事業再構築補助金の補助対象経費のうち、建物費は他の経費に比べて必要書類が多いです。事業再構築補助金で建物費を計上する人は、事前にいつ何が必要になるかを確認しておきましょう。
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PROFILE
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兵庫県出身、関西学院大学卒。調達件数100社以上、成功確率80%超。
東証プライム上場の事業会社→コンサルファームを経て2023年起業。経営者の新たな挑戦をサポートするため、事業再構築補助金やものづくり補助金、融資等を活用した資金調達支援やインキュベーション事業、イベント事業を提供しています。
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