環境省の令和7年度概算要求では、全体で前年の149%という大幅な増額が発表されました。今回の概算要求では、深刻化する世界的な環境問題への対応を中心に、循環経済の推進、地域の活性化、さらには災害対策まで幅広い分野が取り上げられています。
本記事では、環境省の令和7年度概算要求の詳細や注目すべきポイント、主要な事業についてわかりやすく解説します。今後の政策動向を理解し、ビジネスチャンスに備えましょう
概算要求とは
国税庁の国税庁の公式サイトによれば、概算要求とは、次年度の国家予算編成に向けて各省庁が財務省に提出する予算に関する方針を指します。財務省は、各省庁から提出された金額やその内容の妥当性を検討し、承認の可否を判断します。その結果は内閣に報告されます。
内閣は、財務省からの報告を基に「予算案」を作成します。この予算案は、国会の議決を経て初めて正式な予算として成立します。したがって、概算要求は来年度の国家政策の指針となりますが、必ずしも予算案に反映されるわけではありません。
目次
令和7年度 環境省概算要求額
環境省では、要求額の総計が8704億円となりました。一般会計は1730億円、エネルギー対策特別会計(GX推進対策費を除く)が2186億円です。
前年度比では一般会計が117%増、GX推進対策費を除くエネルギー対策特別会計が129%増となっています。そのほか、エネルギー対策特別会計のGX推進対策費として2318億円を計上しています。
出典:環境省 令和7年度 環境省重点施策
環境省 令和7年度概算要求の方針とは
今回の概算要求では、経済社会活動が自然資本を基盤に成り立つことを踏まえ、環境汚染等の世界的危機の克服が最重要課題として掲げられました。環境保全を通じたウェルビーイング(高い生活の質)の実現を目指し、循環共生型社会の構築を目指します。
また、地域の環境・経済・社会の統合的向上のため、地域循環共生圏の創出・拡大や脱炭素先行地域づくり等の支援充実を図ります。あわせて革新的な環境負荷低減技術の開発・実証等を支援し、科学技術・イノベーションの社会実装につなげることも示されています。
これらの方針を踏まえ、概算要求では、以下の2つの施策に重点が置かれています。
- 「新たな成長」を導く持続可能な生産と消費を実現するグリーンな経済システムの構築
- 自然資本を基盤とした国土のストックとしての価値の向上
- 環境・経済・社会の統合的向上の実践・実装の場としての地域づくり
- 「新たな成長」を支える科学技術・イノベーションの開発・実証と社会実装
- 環境を軸とした戦略的な国際協調の推進による国益と人類の福祉への貢献
- 「ウェルビーイング/高い生活の質」を実感できる安全・安心、かつ、健康で心豊かな暮らしの実現
- 東日本大震災、能登半島地震からの復興・創生及び今後の大規模災害への備え
令和7年度の環境省補助金活用のメリット
令和7年度の環境省の補助金には、企業や地域が環境問題に積極的に取り組むための支援が充実しています。以下に、主な活用メリットをご紹介します。
1. コスト削減と負担軽減
環境対策や循環型社会の実現に向けた設備投資や事業の拡充には多くの費用がかかりますが、補助金を活用することで初期投資や運用コストの負担を大幅に軽減することができます。これにより、中小企業でも無理なく環境対応型のビジネスを進めることが可能です。
2. 事業の持続可能性向上
環境省の補助金を活用することで、企業はエコ事業や環境保護に貢献するプロジェクトに取り組みやすくなります。これにより、企業の持続可能性が向上し、長期的な成長が見込めるだけでなく、社会的評価も高まります。環境対応が求められる現代において、これらの取り組みは将来の競争力にもつながります。
3. GX(グリーントランスフォーメーション)の推進
補助金は、グリーントランスフォーメーション(GX)を進めるための重要な支援策です。企業が環境配慮型のビジネスにシフトするための技術導入やプロジェクト推進に対して、国からの支援が得られるため、成長分野への早期参入を可能にします。
環境省概算要求の重点施策
それでは、具体的な施策を見ていきましょう。各テーマの主な事業をまとめました。
()内は令和6年度当初予算等です。
社会課題解決による持続可能な成長の推進
■民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業:119億円 自家消費型の太陽光発電設備や蓄電池の導入・価格低減を進め、ストレージパリティ(太陽光発電設備の導入に際して、蓄電池を導入しないよりも蓄電池を導入した方が経済的メリットがある状態)の達成を目指します。 また、新たな手法による再エネ導入・価格低減による地域の再エネポテンシャルの有効活用や、デマンド・サイド・フレキシビリティの確保による変動性再エネに対する柔軟性を確保します。 |
■プラスチック資源・金属資源等のバリューチェーン脱炭素化のための高度化設備導入等促進事業:59億8000万円(37億6100万円) 自治体・企業によるプラスチック資源の回収量増加や、再生可能資源由来素材の需要拡大の受け皿整備を行います。 また、確実なリサイクルする体制を確保し、脱炭素社会と循環経済への移行を推進します。 |
■「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)推進事業:42億7500万円(37億6300万円) 「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)を推進するため、自治体・企業・団体・消費者と連携した国民運動として、「新しい豊かな暮らし」を支える製品・サービスを社会実装するためのプロジェクトを展開します。 |
■コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業:70億円(70億円) コールドチェーンにおける脱炭素型自然冷媒機器の導入を支援します。 さらに既設機からのフロン排出抑制方法を検証することで、脱フロン・脱炭素型冷凍冷蔵機器への迅速かつ効率的な移行実現を図ります。 |
■商用車の電動化促進事業:444億円(409億円) トラック・タクシー・バスの商用車電動化を補助します。普及初期の導入加速を支援することで、価格低減による産業競争力強化・経済成長と温室効果ガスの排出削減を共に実現する事業です。 |
■建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業:100億円(47億1900万円) 業務用施設のZEB化・省CO2化の普及加速のため、高効率設備導入等の取り組みを支援します。 |
■断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業(経済産業省・国土交通省連携事業):1300億円(令和5年度補正予算額 1350億円) 断熱窓への改修による即効性の高いリフォームを推進し、くらし関連分野のGXを加速させます。 |
■業務用建築物の脱炭素改修加速化事業(経済産業省・国土交通省連携事業):266億1300万円(令和5年度補正予算額111円)】※3年間で総額343億7300万円の国庫債務負担 外皮の高断熱化及び高効率空調機器等の導入を支援し、既存業務用施設の脱炭素化の早期実現を目指します。 |
■地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共施設への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業:50億円(20億円) 災害・停電時に公共施設等へエネルギー供給が可能な再生可能エネルギー設備等の導入を支援します。 |
公害や災害を乗り越え、地域が共生する社会に向けた取り組み
■外来生物対策費:10億1800万円(6億2900万円) 法改正や新目標等を踏まえ、侵略的外来種への反転攻勢を強める水際対策や地方公共団体への支援や国際的な議論への貢献等を行います。 また、外来生物の防除を実施し、生態系等への被害を防止します。 |
■能登半島の自然資源を活かしたツーリズム・地域づくり推進事業:7億9300万円 能登半島の自然資源を活かしたツーリズム等の推進支援を通じて、石川県創造的復興プランに貢献します。 |
■大規模災害に備えた廃棄物処理体制の検討:13億6400万円(3億3000万円) 大規模災害発生時においても強靱な、災害廃棄物処理システムの構築を図ります。 |
まとめ
環境問題への取り組みや循環型社会の実現は、国内外でますます重要視されています。企業がどのようにこれらの社会課題に対応しているかは、その評価や信頼性に直結します。今後の企業成長のカギは、環境に配慮し、持続可能な事業運営を進める姿勢にあります。
令和7年度の環境省の概算要求には、こうした課題に対応するための対策や支援事業が多く含まれています。これらの施策は、時代のニーズに応えるだけでなく、企業の取り組みを後押しし、負担を軽減する重要な支援策ともなります。
概算要求を通じて、国が示す方針を的確に読み取り、来年度の事業計画に反映させることで、より良い未来へ向けた準備を進めましょう。
ものづくり補助金や持続化補助金、IT導入補助金はどうなる?
ものづくり補助金、持続化補助金、IT導入補助金、事業承継・引継ぎ補助金の4つの補助金を行う「生産性革命推進事業」について、令和7年度予算としての記載がありました。
令和6年度の補正予算にて追加される可能性があるため、今後の動きにも注目しながら、最新情報をお届けします。
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PROFILE
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兵庫県出身、関西学院大学卒。調達件数100社以上、成功確率80%超。
東証プライム上場の事業会社→コンサルファームを経て2023年起業。経営者の新たな挑戦をサポートするため、事業再構築補助金やものづくり補助金、融資等を活用した資金調達支援やインキュベーション事業、イベント事業を提供しています。
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