令和9年度の補助金はどう変わる?概算要求でわかった中小企業向けの変化

この記事の要点

来年度の概算要求では、新事業進出・ものづくり補助金が売上目標の宣言を原則の要件にするなど、宣言した会社を手厚く支える方向です。経済産業省と中小企業庁の概算要求の資料をもとに、補助金ごとの変化と今から準備できることを整理しました。

この記事の目次
  1. 概算要求とは?
  2. 中小企業向けの要求額
  3. 補助金ごとの主な変化
  4. 売上目標を宣言する仕組み
  5. 賃上げの実績も審査へ
  6. 今から準備できること
  7. 間違えやすい点
  8. 専門家から見たポイント
  9. よくある質問
結論

令和9年度の概算要求では、新事業進出・ものづくり補助金が10億宣言を原則の要件にするなど、売上目標を宣言した会社を手厚く支える方向です。要求額も要件も確定ではなく、12月の政府予算案と公募要領で決まります。

来年度の補助金を待つか、今の公募で申請するかで迷う会社は多いはずです。概算要求の資料をもとに、補助金ごとの変化と今から備えられることを整理した、来年度の変化を知りたい方に向けた記事です。

概算要求とは?

概算要求は、各省庁が来年度に使いたい予算を財務省に出す要望です。経済産業省は2026年8月31日に令和9年度の概算要求を公表しました。

経済産業省関係の要求の合計は7兆7,859億円で、令和8年度の当初予算(3兆693億円)の2倍を超えます。このうち中堅・中小企業・小規模事業者関係は1兆3,841億円です。

概算要求の額が、そのまま来年度の予算になるわけではありません。12月の政府予算案で削られたり、一部が秋の補正予算に回ったりします。

予算が決まってから公募が始まるまでの流れは概算要求から補助金の公募開始までの流れで取り上げています。

中小企業向けの要求額

令和9年度の概算要求のうち、補助金に関係する主な事業の要求額を並べました。中小企業基盤整備機構(中小機構)への交付金の中に、4つの補助金がまとめて入っています。

事業 令和9年度の要求額 中身
中小機構の運営費交付金 6,980億円 成長加速化補助金、省力化・デジタル化・AI投資補助金、持続化補助金、M&A・事業承継補助金を含む
新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業 2,200億円 新しい製品・サービスの開発や新市場への進出の設備投資
サプライチェーン形成支援補助金 2,376億円 地域の産業クラスターづくりに向けた投資
事業承継・事業再生の総合支援 280億円 事業再生と、後継者のいない会社の引継ぎ
小規模事業対策推進等事業 175億円 商工会・商工会議所の伴走支援と、成長志向の経営計画(仮称)の宣言の仕組み
ワンストップ総合支援事業 96億円 よろず支援拠点など。AI導入を地域で伴走する「地域AXネットワーク事業」を新しく作る
Go-Tech事業(研究開発) 128億円 大学や公設試験研究機関と組んだ研究開発

出典:令和9年度 中小企業・小規模事業者・地域経済関係 概算要求等のポイント p.2〜3

新事業進出・ものづくり補助金の今の補助上限や締切は、新事業進出・ものづくり補助金の公募要領の台帳でページつきで確かめられます。

補助金ごとの主な変化

令和9年度の概算要求の資料には、今の補助金ごとに次の変化が書かれています。

補助金 令和9年度の概算要求での書き方
新事業進出・ものづくり補助金 売上高10億円を目指す「10億宣言」を原則として要件にする
持続化補助金 売上規模の拡大を目指す小規模事業者の販路開拓等を支援。「成長志向の経営計画(仮称)」を宣言する者を含む
デジタル化・AI導入補助金 「省力化・デジタル化・AI投資補助金」として、AIを含むデジタル技術の活用と省力化設備の導入を一体で支援する
中小企業省力化投資補助金 デジタル化・AI導入補助金と一体の、1つの補助金として要求されている
成長加速化補助金 売上高100億円超を目指す中小企業の大胆な投資を支援
事業承継・M&A補助金 設備投資やM&A・PMIの専門家活用費用などを支援

出典:令和9年度 中小企業・小規模事業者・地域経済関係 概算要求等のポイント p.2『中小機構運営費交付金』

補助金の名前や要件が変わる案が出ていても、今公募中の回は、今の公募要領のとおりに申請します。新しい要件が当てはまるのは、来年度の公募からです。

今の持続化補助金(一般型 通常枠)は、補助上限50万円・補助率2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4)です。特例の上乗せは持続化補助金の公募要領の台帳で確かめられます。

今の制度どうしの違いは中小企業が申請できる主な補助金で比べられます。

売上目標を宣言する仕組み

令和9年度の概算要求で大きいのは、会社が売上をどこまで伸ばすかを先に宣言する仕組みです。補助金は、宣言した会社を優先して支える形になります。宣言は会社の規模に合わせて3つ並びます。

宣言 目指す売上 関係する補助金
100億宣言 100億円 成長加速化補助金(今も申請の要件)
10億宣言 10億円 新事業進出・ものづくり補助金(原則の要件にする案)
成長志向の経営計画(仮称) 売上高1億円(飲食業・生活関連サービス業など1億円が難しい業種は5千万円程度) 持続化補助金(宣言した事業者を含める案)

出典:令和9年度 中小企業・小規模事業者・地域経済関係 概算要求等のポイント p.2『新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業』

10億宣言は、売上1〜10億円の会社が金融機関の伴走を受けて宣言し、内容を公表する仕組みとして検討されています。宣言の様式や例外の範囲は、公募要領が出るまで決まっていません。

それぞれの宣言は、次の記事でくわしく取り上げています。

この記事の補助金のうち、今の公募でどれが自社に合いそうかは、会社のURLを入れるとAIで確かめられます。

AIで対象か確認する

賃上げの実績も審査へ

補助金の審査は、これからの賃上げの計画だけを見る形から変わる方向です。申請するときまでに、実際にどれだけ賃上げしてきたかも見られます。

中小企業政策審議会の資料には、補助金ごとに、申請時点の賃上げの状況も審査・評価する仕組みに見直すと書かれています。

税制でも、中小企業向けの賃上げ促進税制について今後5年間を重点期間とし、全雇用者の給与総額や賃上げ水準の要件を見直して強化という要望が出ています。税制は年末の税制改正大綱で決まります。

出典:労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略(案)に伴う政策の見直しについて(概要) p.14

今の補助金の賃上げの要件は、省力化投資補助金の賃上げ要件などの記事で制度ごとに取り上げています。

今から準備できること

宣言や新しい要件の中身は、公募要領が出るまで決まりません。ただ、どの宣言でも求められそうな材料は今から用意できます。

  1. 直近3期の決算書から、売上・粗利・人件費の推移を1枚にまとめます。
  2. 従業員一人あたりの給与が、この1〜2年でどれだけ上がったかを数えます。
  3. 3〜5年後の売上の目標と、そこへ行くための新しい事業や設備投資を書き出します。
  4. メインバンクや商工会・商工会議所に、来年度の計画を早めに話しておきます。

今の制度の公募も続いています。たとえば持続化補助金(一般型 通常枠)の今の回の日程は次のとおりです。

  • 申請受付開始:2026年11月5日(木)
  • 申請受付締切:2026年12月15日(火)17:00

ほかの制度の締切は、公募中の補助金の台帳でまとめて確かめられます。

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間違えやすい点

令和9年度の補助金の話で間違えやすいのは、決まった時期と、名前の変わり方です。

  1. 要求額は予算ではない:概算要求は要望の段階です。12月の政府予算案で額が変わり、一部は補正予算に回ります。
  2. 今の公募はすぐ変わらない:新しい要件は来年度の公募から当てはまる案です。今公募中の回は、今の要件で審査されます。
  3. 宣言だけでは採択されない:宣言は申請の入口です。審査では事業計画の中身と賃上げの実績も見られる方向です。
  4. 補助金の名前が変わる:デジタル化・AI導入補助金と中小企業省力化投資補助金は、1つの名前で要求されています。古い名前だけで探すと、新しい公募を見落とします。

予算の出どころで公募の時期が変わる理由は、補助金の予算はどこから出る?で取り上げています。

専門家から見たポイント

来年度の補助金で差がつくのは、売上の目標を数字で示し、金融機関や商工会と話を進めておけるかです。補助金の採択者一覧を合計すると、主な7制度で230,183件の採択があり、こうした会社の多くに宣言が問われる方向です。

早めに動くとよい会社

売上1〜10億円で、新しい製品・サービスや新しい市場への投資を考えている会社です。10億宣言は金融機関の伴走が前提になる案なので、メインバンクと計画を話す時間を取れるかで差がつきます。

様子を見てよい会社

今年度の公募で使える補助金がはっきりしている会社は、まず今の公募を優先します。来年度の要件が決まるのは、早くても年明けの公募要領です。

AIの導入を考えている会社は、ChatGPT・生成AI導入に使える補助金の選び方で今の制度から候補を絞れます。

よくある失敗

概算要求のニュースだけを見て、今の公募の準備を止めてしまうことです。来年度の制度に合わせるのは、予算案が出る12月以降でも間に合います。

来年度の宣言を待つか、今の公募で申請するかは、売上の規模と投資の時期で変わります。迷う場合は、専門家に無料で相談して自社の順番を決めるのが早いです。

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よくある質問

概算要求の補助金はいつから申請できますか?

政府予算案が12月に決まり、国会で予算が成立するのは3月ごろです。公募は4月以降が目安ですが、補正予算に回った事業は年明けから公募が始まることがあります。

IT導入補助金の名前で探していますが、来年度もありますか?

IT導入補助金は名前が変わり、後継のデジタル化・AI導入補助金になっています。概算要求では中小企業省力化投資補助金と一体の補助金として書かれていて、今公募中の回は今のまま申請できます。

10億宣言をしないと新事業進出・ものづくり補助金は使えませんか?

概算要求の資料では「原則として要件にする」とされています。例外の範囲や宣言の様式は公募要領で決まるため、今はまだ確定していません。

小規模事業者も新しい宣言の対象ですか?

小規模事業者向けには、成長志向の経営計画(仮称)の宣言が検討されています。商工会・商工会議所の伴走支援を受けて計画を作ることが前提の案です。

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出典

まだ相談は早いと感じる方は、まず資料で全体をつかんでください。

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