【2026年】補助金の対象外経費とよくある失敗パターンと回避策を解説

補助金

補助金で一番痛いのは、不採択よりも採択後の減額・返還です。そして、その原因の多くは事業計画書の出来ではありません。経費の線引きミスです。対象外の経費を1行混ぜただけで、数百万円が削られることがあります。

この記事では、対象外になりやすい経費を7カテゴリで一覧化し、現場で本当に起きる失敗5パターンと、申請前にできる回避策まで、診断士の実務目線でまとめました。

補助金の対象経費とは?

補助金は、「事業の成長に直接貢献する投資」にしか使えません。 これが対象・対象外を分ける一番の軸です。

補助金は税金を財源とする公的な支援制度です。だからこそ「誰もが納得できる、事業への投資」にしか使えないという原則があります。審査担当者が経費を見るときの判断基準は、主に次の2つです。

① 投資性があるか

消耗品・日用品のように使い捨てになるものは対象外になりやすい。設備・システムのように事業へ継続的な価値をもたらすものが対象になりやすい。

② 補助事業との関連性があるか

申請した事業計画と直接関係のある経費か。関係性が薄いと「補助事業のための支出ではない」と判断されます。

そして、どの制度にも共通する大前提が「交付決定後に発注・支払いした経費だけが対象」という点です。この2つの軸+このタイミング原則を頭に入れておくだけで、対象外のミスは大きく減らせます。

なお、対象経費のルールは制度ごとに差があります。「ものづくり補助金ではOKだった経費が、持続化補助金ではNGだった」というケースは珍しくありません。次の章で、主要制度の対象経費の例を見ていきましょう。

補助金で補助対象となる経費は?

主要補助金の補助対象経費の例

制度によって「どんな経費が対象か」は変わります。代表的な制度の対象経費を押さえておきましょう。

小規模事業者持続化補助金

持続化補助金では、事業計画に必要な経費のみが補助対象となります。補助対象経費は以下の13区分に分かれており、いずれかに該当する必要があります。

販路開拓に使える小規模事業者持続化補助金を解説! | NKKソリューションズ – 補助金 申請なら認定支援機関の当社へ/士業者支援/Asktop/サムライメディア

  • 機械装置等費(業務効率化設備・厨房機器・製造機械など)
  • 広報費(チラシ・パンフレット・広告運用・Web広告など)
    →広報費が補助される補助金はこちら
  • 展示会等出展費展示会出展料・ブース設営費など)
    →展示会出展が補助される補助金はこちら
  • 旅費(販路開拓に必要な出張費など)
  • 開発費(試作品開発・パッケージ試作など)
  • 資料購入費(専門書籍・市場調査資料など)
  • 雑役務費アルバイト・臨時スタッフ費用など)
    →人件費が補助される補助金はこちら
  • 借料(機器レンタル・会場利用料など)
  • 専門家謝金(専門家への相談費用など)
  • 専門家旅費(専門家派遣に伴う交通費など)
  • 設備処分費(設備更新に伴う既存設備の処分費)
  • 委託費HP・システム開発・調査委託など)
    →ホームページが補助される補助金はこちら
  • 外注費(Web制作・動画制作・キッチンカーなど)
    キッチンカーが補助される補助金はこちら

詳しくはこちら:【2026年最新】小規模事業者持続化補助金の補助対象経費を詳しく解説

新事業進出・ものづくり補助金(統合後の新制度)

2026年度から、ものづくり補助金と新事業進出補助金が統合され「新事業進出・ものづくり補助金」として一本化されます。設備投資・新分野進出・海外展開を一体的に支援する大型制度です。代表的な補助対象経費は次のとおり。

経費区分 主な内容
機械装置・システム構築費 設備・専用システムの導入(必須項目のひとつ
建物費 補助事業に必要な建物の建設・改修(必須項目のひとつ
技術導入費 知的財産権等の導入にかかる費用
専門家経費 補助事業遂行のための専門家への謝金
運搬費 設備の運搬・据付など
クラウドサービス利用費 補助事業に使うクラウド利用料
外注費 製造・加工等の外注
知的財産権等関連経費 特許・実用新案等の出願費用
広告宣伝・販売促進費 新製品のプロモーション費用

機械装置・システム構築費または建物費のいずれかが、必ず補助対象経費に含まれている必要があります。 一過性の支出が大半を占める計画は対象になりません。
※旧ものづくり補助金では対象外だった広告宣伝・販売促進費が、革新的新製品・サービス枠で新たに対象になりました。
※統合新制度の公募要領は2026年6月公開、申請受付は2026年8月開始の予定です。対象経費の細部は公開後に必ず最新版で確認してください。

詳しくはこちら:【最新】新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?

補助金で対象外になる経費一覧

対象外経費は、大きく次の7カテゴリに分けられます。まずは全体像を一覧で押さえてください。

カテゴリ 対象外となる経費の例 主な理由
① 時期に関するもの 交付決定前に発注・支払いした全ての費用 事後補助の原則に反する
② 人件費 役員報酬・社員の給与/アルバイト代・派遣費用
※外注費は別途判断
人件費は原則対象外(例外あり)
③ 汎用性の高い消耗品・備品 一般的なノートPC・スマートフォン/コピー用紙・文具・トナー/一般的な事務用品 事業専用でない汎用品は対象外
④ 税金・保険・手数料 消費税(仕入税額控除できる場合)/社会保険料・労働保険料/振込手数料・収入印紙代 制度上の除外
⑤ 交際費・娯楽費 接待・会食・ゴルフ代/慶弔費・祝儀・香典/旅行・レジャー費 事業投資性がない
⑥ 不動産・賃借料 土地・建物の購入費/事務所家賃・駐車場代
※補助事業専用スペースは別途判断
原則対象外(一部例外あり)
⑦ 補助事業と無関係な経費 既存製品ラインの増産設備/申請内容と関係のない広告費/経営者個人の資産になる支出 補助事業との関連性がない

⚠ 制度・公募回によって例外があります。必ず申請する制度の最新公募要領でご確認ください。

よくある失敗パターンと回避策

対象外による失敗は、突き詰めると「時期・モノ・金額」の3軸でしか起きません。やりがちな順に、失敗とその防ぎ方をセットで解説します。

①【時期】交付決定前に1円でも払ってしまう

よくある失敗: 500万円の設備のうち、着手金50万円“だけ”を交付決定前に支払った。あるいは「採択は確実だろう」と発注書を先に出してしまった。

補助金は「交付決定後に動いた経費」だけが対象という、事後補助が大原則です。金額の大小は一切関係ありません。50万円の先払いが原因で、500万円が丸ごと対象外になる——採択されても1円も出ない、ということが現実に起きます。制度によっては、発注の事実だけで申請全体が無効になります。

回避策: 交付決定通知書を紙で受け取るまで、契約・発注・支払いを一切しない。業者に急かされても「補助金の交付決定後でないと動けない」と伝え、納期もそれ前提で握っておく。交付決定日より前の日付の見積・発注・請求・振込が1件でもあれば危険信号です。

②【モノ】汎用品をそのまま計上する

よくある失敗:「AIツールを動かすのにPCが要る」と、市販の一般的なノートPCを計上した。スマホやタブレット、一般事務用品も同じ落とし穴です。

業務でも私用でも使える物は「汎用性が高い=補助事業専用とは言えない」と判断され、対象外になりやすい。審査は“その経費が補助事業のためだけに必要か”を見ています。

回避策: 「なぜこのスペックが、この補助事業に不可欠か」を計上根拠として書く。たとえば汎用ノートPCではなく「AI画像解析の処理に必要なGPU搭載の専用端末」として、用途・台数・配置場所まで具体化する。判断の分かれ目は「申請事業がなくても会社で使うか?」——使うなら対象外を疑ってください。

③【金額】消費税込みで申請する

よくある失敗:「税込500万円で設備を買った」として、500万円を補助対象経費に計上した。

課税事業者で仕入税額控除できる場合、消費税は補助対象から除外されます。この例なら基準は税抜き約454.5万円。気づかず税込で出すと、その差額分が減額対象になります。

回避策: 計上前に、自社が課税事業者か免税事業者かを確定させる。インボイス対応状況でも扱いが変わるため、税理士に一度通す。見積書・経費明細を税抜きベースで組み直してから、申請額を確定してください。

この経費は補助対象経費になる?判断基準

「対象か対象外か、公募要領を読んでも判断できない」これがグレーゾーンです。迷ったら、次の3つの問いに通してください。1つでも「No」が混じると、対象外リスクが上がります。

  1. 専用性:その経費は、補助事業のためだけに使うものか?(私用・他事業と兼用なら危険)
  2. 紐付け:事業計画書の中で「どの工程に・なぜ必要か」を1行で説明できるか?
  3. 根拠:金額や仕様の妥当性を、見積書など客観的な資料で示せるか?

この3軸で、よくある4つのグレー経費を見ていきます。

AI・生成AIの利用料

分かれ目は「補助事業専用か、業務全般用か」です。補助事業の特定工程に直接使うAIツール、自社専用のAIシステム開発費、補助事業専用のAPI利用料は通りやすい。一方、ChatGPT等の汎用AIの月額サブスクや、業務全般に使うツールは「専用性なし」と見られて落ちやすくなります。計上するなら「補助事業のどの工程に、どう組み込むか」を必ず明記してください。

クラウドサービス利用料

ここは「補助事業のために新たに導入したか」が軸です。補助事業専用のクラウドシステム構築費や、新規導入するSaaSの初期・年額費用は対象になりやすい。逆に、補助事業の前から使っている既存サービスの継続費用や、全社で使う汎用グループウェアは対象外寄りです。「この補助事業がきっかけで契約したもの」かどうかで線を引きます。

出張・旅費

軸は「行き先と目的が補助事業に直結しているか」。補助事業に関する展示会・商談への出張、海外展開のための市場調査などは通りやすい。一方、目的が補助事業と無関係な出張、規定上限を超える高額な宿泊費、私的旅行と抱き合わせの視察は落ちやすい。「誰と・何のために会い、補助事業がどう前進するか」を記録に残しておきましょう。

中古機械・設備

新品と違い、「価格の妥当性を客観的に示せるか」が最大の関門です。複数の見積もりで市場価格が確認でき、状態・スペックが補助事業に必要だと説明できれば対象になり得ます。逆に、市場価格が不明瞭なもの、関係者・身内からの購入(利益相反の疑い)、価格の根拠が示せないものは対象外になりやすい。中古は「なぜその価格が適正か」の立証がセットだと考えてください。

それでも判断がつかないときは

3軸に通しても白黒つかない経費は、計上する前に事務局へ確認してください。メールなど記録の残る形が鉄則です。「口頭でOKと言われた」という主張は審査で通らないことがあります。確認の手間を惜しんで対象外を計上するより、一本メールを送るほうが、採択後の減額・返還を確実に防げます。

よくある質問(FAQ)

Q. 補助金で対象になる経費にはどんなものがありますか?

機械装置・システム構築費、広報費、外注費などが代表的です。ただし対象範囲は制度ごとに違い、持続化補助金は販路開拓系、新事業進出・ものづくり補助金は設備投資が中心です。共通するのは「事業の成長に直接貢献する投資」であることです。

Q. ノートパソコンやスマートフォンは補助対象になりますか?

市販の一般的なPC・スマホは「汎用品」として対象外になりやすいです。業務でも私用でも使えるためです。補助事業に専用で使うことと、そのスペックが必要な理由を事業計画書で具体的に示せれば、制度によっては認められる場合があります。

Q. ChatGPTなどの生成AIの利用料は経費にできますか?

業務全般に使う汎用AIの月額サブスクは対象外になりやすい費用です。一方、補助事業の特定の工程に直接活用するAIツールや、自社専用のAIシステム開発費は対象になり得ます。「どの工程にどう使うか」を明記できるかが分かれ目です。

Q. 交付決定の前に契約・支払いをしてしまいました。対象になりますか?

原則として対象外です。金額の大小に関わらず、交付決定前に発注・支払いした費用は対象外となり、着手金の先払いだけで申請全体が無効になるケースもあります。交付決定通知書を受け取るまでは、契約も発注もしないでください。

Q. 消費税は補助対象経費に含めていいですか?

課税事業者で仕入税額控除できる場合は、消費税は補助対象経費から除外して計上します。免税事業者やインボイス対応の状況によって扱いが変わるため、計上前に税理士へ確認することを推奨します。

Q. 人件費は補助対象になりますか?

役員報酬・社員給与・アルバイト代などの人件費は原則対象外です。ただし制度によっては例外的に認められる費目もあり、外注費は人件費とは別に判断されます(多くの制度で上限あり)。申請する制度の公募要領で確認してください。

Q. 中古の機械や設備は補助対象になりますか?

なり得ます。ただし複数の見積もりで市場価格が確認でき、状態・スペックが補助事業に必要だと説明できることが条件です。市場価格が不明瞭なものや、関係者・身内からの購入(利益相反の疑い)は対象外になりやすいので注意してください。

Q. 経費が対象になるか分からないとき、誰に聞けばいいですか?

まずは各補助金の事務局へ、メールなど記録の残る形で問い合わせるのが基本です。「口頭でOKと言われた」という主張は審査で通らないことがあります。判断が難しい場合は、認定支援機関や中小企業診断士など申請実務の専門家に相談すると確実です。

Q. 採択された後でも、経費が減額・返還になることはありますか?

あります。実績報告の段階で、対象外経費の計上や交付決定前の支払いが判明すると、その分が減額されます。場合によっては受け取った補助金の返還を求められることもあります。だからこそ、申請前の経費設計が重要になります。

Q. 補助対象経費のルールは、どの制度でも同じですか?

いいえ、制度ごとに異なります。「ものづくり補助金ではOKでも、持続化補助金ではNG」というケースは珍しくありません。また同じ制度でも公募回によって変わることがあります。本記事は複数制度に共通するパターンの整理なので、最終判断は必ず申請する制度の最新公募要領で行ってください。

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参考・引用資料

本記事は以下の公式資料をもとに作成しています。


免責事項・ご注意

本記事について

本記事は、中小企業庁および新事業進出・ものづくり補助金事務局が公表している公式資料をもとに、情報提供を目的として作成しています。特定の補助金申請の採択を保証・推奨するものではありません。

制度変更について

新事業進出・ものづくり補助金は、公募回ごとに補助率・補助上限額・対象要件・スケジュール等が変更される場合があります。また、2026年度以降は「新事業進出・新事業進出・ものづくり補助金」として制度再編が行われる可能性もあります。制度内容は予告なく変更される場合があるため、申請前に必ず最新の公募要領をご確認ください。

申請の際は必ずご確認ください

  • 新事業進出・ものづくり補助金総合サイトに掲載されている最新公募要領
  • GビズIDプライムアカウントの取得状況
  • 認定支援機関または中小企業診断士等の専門家への相談

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PROFILE

神谷 恒一
神谷 恒一
中小企業診断士 / 資金調達・補助金コンサルタント / 外資系戦略コンサルティングファーム出身。独立後、事業再構築補助金・ものづくり補助金を中心に200社超の資金調達を支援し、採択率80%以上を継続して維持しています。補助金申請において最も難しいのは「書類を書くこと」ではなく、「審査員に刺さる事業計画を設計すること」です。戦略コンサルとしての経験を活かし、単なる申請代行ではなく、事業計画の立案から採択後の実行フェーズまでを一気通貫でサポートすることを強みとしています。これまでの支援先は製造業・小売業・サービス業など幅広く、初めての補助金申請から複数回採択の実績づくりまで対応しています。また、補助金メディアの執筆者として1,000本超の記事を執筆。最新の制度情報・審査傾向を常にアップデートしながら、読者と支援先の双方に正確な情報を届けることを使命としています。

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