デジタル化・AI導入補助金の電子取引類型|申請者と対象経費の考え方
この記事の要点
デジタル化・AI導入補助金のインボイス枠には、インボイス対応類型と電子取引類型の2つがあり、申請する人も目的も対象のツールも違います。公募要領をもとに、電子取引類型の対象者と補助率、2つの違いを整理しました。
この記事の目次
電子取引類型は、発注側の会社がインボイスに対応した受発注のクラウドシステムを契約し、取引先の中小企業にアカウントを無償で渡す場合に、その利用料の一部を補助する枠です。大企業も申請でき、取引先は申請せずに使うだけです。
補助の対象は、契約したアカウントのうち取引先の中小企業に渡した分の割合にあたる利用料だけで、導入設定やオプションは対象外です。
取引先との受発注をシステムに移したい発注側の会社や、取引先から「電子取引類型で一緒にやりませんか」と声をかけられた会社で、誰が何をするのかを知りたい方に向けた記事です。
申請する側と使う側の役割、補助される利用料の計算、取引先ごとにそろえる書類、インボイス対応類型との違いを、電子取引類型の公募要領で整理します。5つの枠の比べ方はデジタル化・AI導入補助金の5つの枠で取り上げています。
電子取引類型とは?
電子取引類型を申請するのは、取引先に仕事を発注している側の会社で、中小企業だけでなく大企業も申請者になれます。アカウントを受け取る受注側の取引先は申請の手続きをせず、システムを無償で使います。
公募要領は申請者を「中小企業・小規模事業者等と受発注の取引を行っている事業者(大企業含む)が申請者」としています1。アカウントを受け取る取引先の中に、中小企業・小規模事業者が1社以上いることが前提です。
補助率は申請者の規模で変わり、「中小企業・小規模事業者等:2/3以内、その他の事業者等:1/2以内」です。大企業が申請しても上限は同じで、取引先の数が多いほど補助の上限に早く届きます。申請の前にそろえるGビズIDプライムの取り方はGビズIDの取得方法で取り上げています。
御社がこの補助金の対象になるかは、会社のURLを入れるだけでAIが確かめます。
補助されるのは取引先に渡した分の利用料
補助の対象になる経費はクラウドの利用料だけで、契約したアカウントの総数のうち、取引先の中小企業に渡したアカウントの割合をかけた額が対象経費になります。自社の社員が使うアカウントの分は補助されません。
| 項目 | 電子取引類型の決まり(今の公募回) |
|---|---|
| 補助額 | クラウド利用費:下限なし~350万円 |
| 対象経費 | クラウド利用費。ただし、契約する受注側アカウント総数のうち取引先の中小企業・小規模事業者等に供与するアカウント数の割合を乗じた額 |
| 対象外 | 大分類Ⅱ「オプション」、大分類Ⅲ「役務」等は対象外(ソフトウェアのみ) |
| ツールの条件 | インボイス対応の受発注機能を持ち、受注側にアカウントを無償発行できるクラウド型ソフトウェア。申請は1つのみ。受注側の全ての利用者に無償発行 |
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(電子取引類型)公募要領(改訂版) p.16『2-3 補助対象経費、補助率及び補助額』台帳で見る
たとえば契約するアカウントが100で、そのうち取引先の中小企業に渡すのが60なら、利用料の6割が対象経費になり、そこに補助率をかけます。アカウントを上限なく発行できる契約は対象外なので、発行できる数が決まったプランを選びます。補助率のかけ方は補助率と自己負担の計算で取り上げています。
取引先ごとにそろえる書類と同意
電子取引類型では、申請する会社の書類に加えて、アカウントを渡す取引先1社ごとに登記や納税の書類と申請への同意が要ります。取引先がインボイスの登録をしていることも条件です。
- 取引先の書類:取引先ごとに、法人は履歴事項全部証明書(3カ月以内)と法人税の納税証明書、個人事業主は本人確認書類と所得税の納税証明書・確定申告書の控えを出す
- 取引先の同意:取引先が対象外事業者に該当しないことを確認し、申請する旨の同意を得ること
- 取引先のインボイス登録:取引先である中小企業・小規模事業者等が適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者であること
- 取引先の一覧:事務局が指定する「取引先アカウント一覧【交付申請用】」を申請ごとに出す
取引先の書類は、申請の直前に集め始めると発行から3か月以内という期限や印字の不備で差し戻されやすくなります2。取引先に説明する段階で、出してもらう書類の一覧を一緒に渡しておくと準備がそろいます。
書類の細かい注意と支払いの決まりはデジタル化・AI導入補助金の申請手順で取り上げています。
インボイス対応類型と何が違うのか
インボイス対応類型は自社の会計や請求を整える会社が自分のために申請する枠で、電子取引類型は取引先の請求のやり取りまで整えたい発注側が申請する枠です。2つの類型は同じ会社が重複して申請できません。
| 比べる点 | インボイス対応類型 | 電子取引類型 |
|---|---|---|
| 申請する会社 | 自社の経理を整える中小企業・個人事業主 | 取引先に発注している会社(大企業も可) |
| 対象のソフト | 会計・受発注・決済のいずれかの機能 | 受発注の機能を持ち、取引先に無償でアカウントを出せるクラウド型 |
| パソコン・レジ | ソフトと一緒なら対象 | 対象外 |
| 導入設定・保守 | 対象 | 対象外 |
| 取引先の書類 | 不要 | 取引先ごとに必要 |
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(電子取引類型) よくあるご質問 p.3『交付申請/申請可否(No.15)』台帳で見る
自社の経理を先に整えたい会社は、インボイス対応類型の補助率と対象機器を先に確かめます。
紙の請求を電子にした採択事例は?
電子取引類型で採択された事例の公開はまだありませんが、取引先とのやり取りを紙から電子に移した事例は通常枠にあります。
山口県の駅前商業施設の運営会社(従業員126名)は、取引先への請求書を紙と郵送からシステムのメール送信に切り替え、郵送コストが約6割減りました。取引先が受け取ったかどうかもシステムの画面で確かめられるようになっています(商業施設の運営会社の事例)。
この事例は自社の請求を整えた例で、取引先にアカウントを渡す形ではありません。取引先の側の受発注まで同じシステムにそろえたい発注側の会社が、電子取引類型を検討する順番になります。
間違えやすい点
間違えやすいのは、対象経費の割合、取引先の入れ替え、併願の3つです。
利用料の全額が補助の対象になるわけではありません。自社の社員のアカウントや大企業の取引先に渡すアカウントの分は、対象経費の計算から外れます。
交付申請のあとに取引先が入れ替わった場合は、新しい取引先の書類を実績報告で出します。それでも、交付決定された補助額を超えては支払われません。
電子取引類型を申請した会社は、同じ公募期間にインボイス対応類型と複数者連携デジタル化・AI導入枠へは申請できません。自社の会計ソフトも入れ替える予定なら、どちらを使うかを先に決めます。
取引先の書類の不備で確定額が下がる流れは採択後に補助金が減額になるケースでも確かめられます。
どこで評価が分かれるかは、事業の中身によって変わります。御社の計画でどう書けばよいかは、専門家に無料で相談して確かめられます。
専門家から見た電子取引類型のポイント
電子取引類型は、取引先の数が多く、紙やFAXの注文書が往復している発注側に向く枠で、取引先が少ない会社は手間に見合いません。採択事例では卸売・小売業が2.7%、運輸業が8.1%で、取引先との連携まで広げた事例はまだ少数です。
電子取引類型が合う発注側の会社
部品や資材を数十社の協力会社に発注している製造業や、多くの仕入先とやり取りする卸売業です。取引先に渡すアカウントが多いほど対象経費の割合が上がり、注文書と請求書の照合の手間も一度に減らせます。
取引先が書類を出せるかどうかで申請の時期が決まるので、説明会を開いて同意を先に集めます。
インボイス対応類型を選ぶ受注側の会社
取引先から誘われた側の小さな会社が、自社の会計や請求も整えたいなら、自分で申請できるのはインボイス対応類型です。受け取る側が自社で申請するときの条件は、インボイス対応類型の公募要領で別に確かめます。
業種ごとの採択事例は採択事例のデータから探せます。
よくある質問
電子取引類型について、相談でよく聞かれる問いと答えです。
アカウントを受け取る取引先は何か手続きをしますか?
補助金の申請はしませんが、申請への同意と、登記や納税の書類を発注側に出します。インボイスの登録をしていることも条件です。
大企業が申請するときもSECURITY ACTIONは必要ですか?
必要です。電子取引類型は中小企業を含む取引の流れで申請するため、大企業も同じセキュリティの条件を満たします。
取引先が過去にIT導入補助金を使っていても大丈夫ですか?
大丈夫です。アカウントを渡す取引先が1年以内にIT導入補助金を使っていても申請できると、事務局のよくある質問に書かれています。
アカウントの数はどう数えますか?
契約するアカウントの総数には、使う予定のないものも含めて全部を入れます。取引先が使う数には、中小企業に渡す分だけを入れます。
ほかの質問はよくある質問にまとめています。
出典(2件)
- デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(電子取引類型)公募要領(改訂版) p.4『1-2 デジタル化・AI導入補助金事業のスキーム』
- デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(電子取引類型)公募要領(改訂版) p.19『3-2(2) 交付申請に必要な書類』
いま申請できる回
デジタル化・AI導入補助金
- 公募回
- 6次締切分
- 締切
- 2026年10月30日(金)17:00
公募要領の台帳より(2026年10月20日確認)
この補助金の採択事例
一覧へ同じ取り組みで、実際に採択された会社です。
ICカードとスマホ打刻で、勤怠の集計作業をなくす
花の舞酒造 株式会社✓ 経産省などの認定・選定
成果給与計算までの作業時間が8割以上減り、労務管理の担当者に新しい仕事を任せられるようになった。
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有限会社鈴木在宅ケアサービス✓ 経産省などの認定・選定
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VOICE
この補助金を使った人の声
京都府の電気工事会社従業員8名この業界は非常に閉じた世界ですから、経営者同士の横の繋がりも非常に重要です。社会的に人手不足と言われていますが、この業界も本当に人手不足。案件によっては人手が足りないこともありますから。
大阪府の金属部品の熱処理・塗装会社従業員71名入力作業のような人手はできるだけ減らしていき、人の力は、出てきたデータを分析し、判断して手を打つところに活用していきたいと考えています。
熊本県の放課後等デイサービス従業員13名できるだけ子どもと接する時間を多く作りたいと思っています。一方で、どうしても事務作業は付いて回ってしまいます。支援記録をつけたり保護者への請求書を作成したりしますが、とても手間がかかります。
出典:国・省庁などの公開情報をもとに当社が加工
中小機構「補助金活用ナビ」の事例記事にある事業者の発言を引用しています。
まだ相談は早いと感じる方は、まず資料で全体をつかんでください。
締切も改訂も見落とさない
- 公募開始条件にあう補助金の公募をいち早く
- 締切前準備が間に合うよう2週間前と3日前
- 改訂変わった点の詳細と御社への影響
この記事の更新履歴
- 最新の公募要領と照らして、数字や制度名を直しました
- 本文の誤りを直しました
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