インボイス枠には「インボイス対応類型」と「電子取引類型」の2つがあります。名称が似ているため混同しやすいですが、申請主体・目的・対象ツールのすべてが異なります。
電子取引類型は、取引関係の発注者がインボイス対応の受発注ソフトを導入し、受注者である中小企業・小規模事業者へ無償でアカウントを発行・提供することを支援する枠です。大企業も申請対象になる唯一の枠でもあります。「取引先から電子取引類型への参加を勧められた」という形で関与するケースが多く、自社から能動的に申請を検討する枠ではないことがほとんどです。
この記事では、電子取引類型の補助率・対象ツール・申請主体の要件を整理し、インボイス対応類型との違いを説明します。
目次
デジタル化・AI導入補助金2026とは?
デジタル化・AI導入補助金は、小規模事業者持続化補助金、ものづくり補助金・新事業進出補助金と並び、通年で公募が行われている補助金です。年3〜4回の公募サイクルで実施されており、申請のチャンスが複数あります。

デジタル化・AI導入補助金は、中小企業・小規模事業者・個人事業主が業務効率化・生産性向上のためにITツールやAIシステムを導入する際の費用を国が補助する制度です。2026年より従来の「IT導入補助金」から名称が変更され、生成AI対応ツールへの補助が明確化されました。
詳しくはこちら:【2026年最新】デジタル化・AI導入補助金の新枠・対象・採択ポイントを徹底解説
デジタル化・AI導入補助金の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | デジタル化・AI導入補助金2026 |
| 前身 | IT導入補助金(2017年〜2025年) |
| 管轄 | 中小企業庁 |
| 申請窓口 | IT導入支援事業者経由(直接申請不可) |
| 補助上限 | 最大450万円(枠により異なる) |
| 補助率 | 1/2〜4/5(枠により異なる) |
| 対象経費 | ソフトウェア費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費等 |
出典:中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の概要」令和8年4月
この補助金では、会計ソフトや受発注システム、顧客管理(CRM)、在庫管理、ECサイト、セキュリティ対策ツールなど、さまざまなITツール導入費用の一部が補助対象となります。近年では、生成AIやAIチャットボット、RPAなどを活用した業務自動化・省力化の取り組みにも注目が集まっています。
インボイス枠(電子取引類型)とは?
電子取引類型は、デジタル化・AI導入補助金2026のインボイス枠に設けられた2つの類型のうちの一つです。取引関係における発注者がインボイス制度対応の受発注ソフトを導入し、受注者である中小企業・小規模事業者に対してアカウントを無償で提供することを支援します。
5枠の中で唯一、大企業も申請主体になれる枠です。自社のインボイス対応を進める「インボイス対応類型」とは異なり、取引先(受注者)のインボイス対応を発注者側が主導・支援する構造になっています。ハードウェア補助は対象外で、補助対象は受発注ソフトのみです。
補助率と補助額
電子取引類型の補助率は、申請者の規模によって異なります。
| 申請者区分 | 補助率 | 補助額 |
|---|---|---|
| 中小企業・小規模事業者 | 2/3以内 | 上限350万円(下限なし) |
| その他の事業者(大企業含む) | 1/2以内 | 上限350万円(下限なし) |
出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業「インボイス枠(電子取引類型)」公式ページ
インボイス対応類型と異なり、補助額の下限がありません。小規模な受発注ソフトの導入でも申請できます。また大企業が申請者になる場合は補助率1/2が適用されます。
対象者と対象ツールの要件
この類型の構造は「発注者が申請し、受注者にツールを無償提供する」という点が核心です。
申請できる事業者(発注者側)
中小企業・小規模事業者、およびその他の事業者(大企業含む)。ただし、取引関係における中小企業・小規模事業者との受発注を行っている事業者であることが前提です。
対象ツールの要件
以下の3条件をすべて満たすクラウド型ソフトウェアに限られます。
- インボイス制度に対応した「受発注」機能を持つこと
- 発注者がITツールを導入したうえで、取引相手(受注者)にアカウントを無償で発行・提供できる機能を持つこと
- クラウド型であること(オンプレミス型は対象外)
受注者への無償提供が必須要件である点が、インボイス対応類型との最大の違いです。発注者が自社の業務効率化のためだけに導入するツールは対象になりません。
インボイス対応類型との違い
この2つは同じ「インボイス枠」でも、想定している申請者と目的がまったく異なります。
| 比較項目 | インボイス対応類型 | 電子取引類型 |
|---|---|---|
| 想定申請者 | 自社のインボイス対応を進めたい中小企業・個人事業主 | 取引先(受注者)のインボイス対応を支援したい発注者 |
| 大企業の申請 | 不可 | 可(補助率1/2) |
| 対象ツール | 会計・受発注・決済の機能を持つソフト全般 | 受発注機能を持ち、受注者への無償アカウント発行が可能なクラウド型のみ |
| ハードウェア補助 | 対象あり(PC・POSレジ等) | 対象外 |
| 補助額下限 | 5万円 | なし |
自社の会計・経理のインボイス対応を進めたいならインボイス対応類型、取引先である中小企業のインボイス対応を受発注システムで支援したいなら電子取引類型、という使い分けです。
デジタル化・AI導入補助金 採択率
中小企業庁の公表資料をもとに、枠別の採択率をまとめました。
| 申請枠 | 2024年 申請数 | 2024年 採択数 | 2024年 採択率 | 2025年 採択率 |
|---|---|---|---|---|
| 通常枠 | 23,672件 | 8,936件 | 約37.8% | 約65.8% |
| インボイス枠(対応類型) | 56,029件 | 25,900件 | 約46.2% | 約72.1% |
| セキュリティ対策推進枠 | 730件 | 360件 | 約49.3% | 約85.3% |
| 複数社連携枠 | 8件 | 6件 | 約75.0% | 約57.1% |
(出典:中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の概要」令和8年4月)
通常枠の採択率は2024年の37.8%から2025年の65.8%へ大幅に上昇しています。インボイス対応類型も2025年は72.1%と高水準です。一方、セキュリティ対策推進枠は申請件数そのものが少なく、競争率の目安が読みにくい状況です。採択率が高まっているとはいえ、申請内容の質(事業計画の整合性・ツール選定の妥当性)は引き続き審査されます。特に通常枠は申請件数が多く、計画書の完成度が採否を分けるケースがあります。
申請のポイント
① 受注者への無償提供が必須
ツールを導入するだけでは要件を満たしません。取引先(受注者)に対してアカウントを無償で発行し、実際に使わせることが条件です。取引先が利用しない、あるいは有償で提供するケースは対象外です。
② 受注者側の事前同意と協力が必要
受注者がツールを使えるよう、事前の調整・同意取得が実務上必要になります。取引先が多い場合、全社への対応方法を先に整理しておく必要があります。
③ SECURITY ACTION宣言は発注者・受注者双方に必要
申請要件としてのSECURITY ACTION宣言は発注者側(申請者)が行います。ただし受注者側でも宣言が求められるケースがあるため、公募要領で確認してください。
④ 大企業が申請する場合の補助率に注意
大企業が申請主体になる場合の補助率は1/2です。取引規模が大きくなるほど補助金額も増えますが、補助上限は350万円で変わりません。
よくある質問
Q1. 受注者(取引先)は自分で申請する必要がありますか?
申請するのは発注者のみです。受注者は申請手続きをする必要はありませんが、ツールを実際に利用することが要件を満たすうえで必要です。
Q2. 取引先が複数社いる場合、全社に提供しなければなりませんか?
公募要領上「当該取引関係における受注者」への提供が要件とされています。すべての取引先への提供が必須かどうかは、取引関係の範囲の定義によります。IT導入支援事業者または事務局に確認してください。
Q3. インボイス対応類型と電子取引類型を同時に申請できますか?
同一経費の重複申請は不可ですが、異なる目的・経費での申請については公募要領での確認が必要です。発注者としての申請(電子取引類型)と自社の会計ソフト導入(インボイス対応類型)は別経費のため、同時申請できるケースがあります。IT導入支援事業者に相談してください。
Q4. 受注者はこの補助金の恩恵を受けられますか?
受注者は補助金を直接受け取りません。ただし、発注者が補助金を活用してツールを導入し、受注者に無償でアカウントを提供するため、受注者はコスト負担なしにインボイス対応ツールを使えるようになります。
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参考・引用資料
本記事は以下の公式資料をもとに作成しています。
免責事項
本記事について
本記事は、中小企業庁・独立行政法人中小企業基盤整備機構・デジタル庁等が公表している公式資料をもとに、情報提供を目的として作成しています。特定の補助金申請の採択や補助金受給を保証・推奨するものではありません。
制度変更について
デジタル化・AI導入関連補助金は、公募回ごとに補助率・補助上限額・対象経費・申請要件・スケジュール等が変更される場合があります。制度内容は予告なく変更される可能性があるため、申請前に必ず最新の公募要領・公式サイトをご確認ください。
申請の際は必ずご確認ください
- デジタル化・AI導入補助金公式サイトに掲載されている最新公募要領
- AIツール・ITツールの補助対象可否
- GビズIDプライムアカウントの取得状況
- 認定支援機関・IT導入支援事業者等への相談
著作権
本記事の文章・構成の著作権は leon-strategy.com に帰属します。引用・転載の際は出典を明記してください。
本記事の情報は2026年5月時点のものです。補助率・対象サービス・SECURITY ACTIONの手続きは変更になる場合があります。申請前に必ず最新の公募要領およびIPA公式サイトをご確認ください。 出典:中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の概要」令和8年4月 / セキュリティ対策推進枠公式ページ https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/security/ / IPA「SECURITY ACTION」 https://www.ipa.go.jp/security/security-action/
PROFILE

- 中小企業診断士 / 資金調達・補助金コンサルタント / 外資系戦略コンサルティングファーム出身。独立後、事業再構築補助金・ものづくり補助金を中心に200社超の資金調達を支援し、採択率80%以上を継続して維持しています。補助金申請において最も難しいのは「書類を書くこと」ではなく、「審査員に刺さる事業計画を設計すること」です。戦略コンサルとしての経験を活かし、単なる申請代行ではなく、事業計画の立案から採択後の実行フェーズまでを一気通貫でサポートすることを強みとしています。これまでの支援先は製造業・小売業・サービス業など幅広く、初めての補助金申請から複数回採択の実績づくりまで対応しています。また、補助金メディアの執筆者として1,000本超の記事を執筆。最新の制度情報・審査傾向を常にアップデートしながら、読者と支援先の双方に正確な情報を届けることを使命としています。
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