複数者連携デジタル化・AI導入枠とは?グループの組み方と補助上限
この記事の要点
複数者連携デジタル化・AI導入枠は、商店街や取引の連なりにある10者以上の中小企業がグループを作り、代表事業者がまとめて申請する枠です。3つの経費区分と上限、対象になる取り組みの型、生産性の目標、代表事業者の役割を公募要領で整理しました。
この記事の目次
複数者連携デジタル化・AI導入枠は、商店街や温泉街、取引の連なりにある10者以上の中小企業がグループを作り、代表事業者がまとめて申請する枠です。商店街振興組合や商工会だけでなく、取りまとめ役を担える中小企業も代表になれます。
補助は、各社に入れる会計・受発注・決済のソフト、地域の人の流れや購買を分析するAIカメラなどの経費、取りまとめの事務費と専門家の謝金の3つの区分に分かれ、グループ全体の上限があります。
商店街や組合、取引先のグループでキャッシュレスやデータ共有を進めたいときに、この枠で何がどこまで補助されるのか、誰が何を準備するのかを知りたい方に向けた記事です。
グループの組み方、3つの経費区分と上限、対象になる取り組みの型、生産性の目標、代表事業者の役割を、複数者連携デジタル化・AI導入枠の公募要領で整理します。1社で申請するほかの枠との違いはデジタル化・AI導入補助金の5つの枠で取り上げています。
複数者連携デジタル化・AI導入枠とは?
この枠は、同じ商業集積地か同じサプライチェーンに属する事業者が10者以上でグループを作り、そのうち1者が代表事業者として交付申請・実績報告・効果報告をまとめて出す枠です。各社がばらばらに申請することはできません。
代表事業者になれるのは「代表事業者:取りまとめ役を担える中小企業・小規模事業者等、商店街振興組合等、商工会、商工会議所」で、ほかの構成員は参画事業者と呼ばれます1。組合員の全員が参加する必要はなく、組合に入っていない店も地域で活動していれば加われます。
商業集積地とは、商店街、共同店舗、テナントビル、温泉街、飲食店街、問屋街のように店が集まっている場所のことです。複数の地域にまたがっていても申請できます。申請に使うGビズIDプライムは代表事業者のものだけなので、取り方はGビズIDの取得方法で先に確かめます。
御社がこの補助金の対象になるかは、会社のURLを入れるだけでAIが確かめます。
3つの経費区分と補助上限の組み立て
補助は「基盤導入経費」「消費動向等分析経費」「その他経費」の3つに分かれ、基盤導入経費と消費動向等分析経費を合わせてグループ全体の上限があります。その他経費は、2つの合計に応じて上限が決まります。
| 経費の区分(今の公募回) | 中身 | 補助率と上限 |
|---|---|---|
| ① 基盤導入経費(ソフト) | 構成員が入れる会計・受発注・決済のソフトと設定・保守 | 構成員1者当たり:1機能のみ50万円、2機能以上350万円。補助率は50万円以下の部分3/4以内(小規模事業者4/5以内)、50万円超の部分2/3以内 |
| ① 基盤導入経費(機器) | パソコン・タブレット、POSレジ・券売機 | ハードウェアは補助率1/2以内。PC・タブレット等は10万円まで、POSレジ・券売機は20万円まで |
| ② 消費動向等分析経費 | AIカメラ・ビーコン・需要予測など地域で使う分析の仕組み | 補助率2/3以内。グループ構成員数×50万円か実際の経費×2/3のいずれか低い方 |
| ③ その他経費 | 取りまとめの事務費、外部専門家の謝金・旅費 | 事務費・外部専門家謝金等:補助率2/3以内、(①+②)×10%×2/3か200万円のいずれか低い方 |
| ①と②の合計 | ①基盤導入経費と②消費動向等分析経費を合わせた補助上限額は3,000万円 | |
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 複数者連携デジタル化・AI導入枠 公募要領 p.20『2-4(1)① 基盤導入経費』『2-4(1)② 消費動向等分析経費』『2-4(1)③ 補助事業グループのとりまとめにかかる事務費』台帳で見る
構成員の数が多いほど①と②の上限が積み上がるので、参加する店の数が決まってから見積を組みます。対象外は「スクラッチ開発を伴うソフトウェア、大幅なカスタマイズが必要なもの、従量課金方式のもの」で、地域専用のアプリを一から作る計画はこの枠に向きません。経費の区分ごとに率を分けて計算する考え方は補助率と自己負担の計算が参考になります。
補助の対象になる取り組みの7つの型
公募要領は、対象になる取り組みを7つの型で示していて、どれも複数の事業者がデータやしくみを共有して生産性を上げるものです。
- 対象となる取組み(1)インボイス対応:会計・受発注・決済ソフトなどを複数者に導入し、事業者間のデータ連携や活用で生産性を上げる
- (2)異業種間のデータ連携:同じ商圏で同じ顧客を持つ卸売・小売・飲食などが、来客数・在庫・宿泊情報などを共有できるソフトで顧客データを共有し、販売・在庫管理を効率化する
- (3)企業間決済の効率化:複数者共通の受発注ソフトと連携した電子地域通貨やデジタル口座で法人間決済ネットワークサービスを導入する
- (4)面的キャッシュレス化:複数者共通の電子地域通貨でキャッシュレス化を進め、新規顧客獲得やデータを使ったマーケティングを行う
- (5)需要予測システム等による顧客分析:需要予測システムやPOSレジを複数者に導入し、購買行動の分析を地域で共有して販売促進を行う
- (6)人流・消費者分析:AIカメラ・ビーコン・デジタルサイネージ等を個店や街路に置き、得たデータで情報発信・商品や陳列の見直し・発注や人員配置の適正化を図る
- (7)参画事業者の事業の効率化:アンケート、商品券・ポイント券の配布など複数者でアナログに行っていた取組みをデジタル化し、通年でITツールの活用・データ分析を行う
ただし「代表事業者だけがITツールを使い参画事業者が使わないパターンは申請できない。ITツールを使わない参画事業者はグループ構成員として認められない」とされています2。全員が同じツールである必要はなく、店ごとに違うツールを入れる理由を申請書に書けば認められます。
キャッシュレスや受発注の連携で採択された事例は採択事例のデータから探せます。
賃上げ要件はないが生産性の目標は高い
この枠には賃上げの申請要件がない代わりに、グループ全体で2年間の労働生産性を大きく伸ばす目標が求められ、届かないとグループの名前が公表されます。
目標は「2年間の事業計画で労働生産性の年平均成長率5%以上(構成員にIT導入補助金2024・2025の通常枠又は複数社連携枠の交付決定事業者がいれば6%以上)」です3。未達の場合は「労働生産性の年平均成長率5%(6%)未達又は効果報告なしの場合、「補助事業名」「代表事業者名」「補助事業グループの構成員数」を公表」とされ、代表事業者の名前が出ます。
参画事業者は申請の前に自社の生産性の伸びを計算して代表事業者に出し、代表事業者がグループの数字にまとめます。効果報告の流れはデジタル化・AI導入補助金の申請手順で取り上げています。
申請の準備は代表事業者が取りまとめる
準備は、グループを作って代表事業者を決め、ITツールを提供するIT提供事業者と助言する外部専門家を選ぶところから始まり、交付申請も実績報告も代表事業者が出します。
- グループを作り、代表事業者を決める(構成員は1つのグループにしか入れない)
- IT提供事業者と、必要なら外部専門家を選ぶ
- 事業計画を考え、ツールを選んで見積をとる
- 代表事業者がGビズIDプライムを取り、SECURITY ACTIONを宣言する(参画事業者も宣言が必要)
- 代表事業者が申請マイページで交付申請を出す
- 交付決定のあとに契約・導入・支払いをし、実績報告と効果報告を出す
外部専門家の助言は「すでに経営やマーケティングの知見があってデータを十分活用できる場合もあるため、外部専門家による助言は必須ではない」とされています4。IT提供事業者と外部専門家はグループの構成員になれないので、組合の役員が経営するIT会社を選ぶときは構成員から外します。
個社の枠との併願の扱いは「通常枠・インボイス枠(両類型)との重複申請は不可、セキュリティ対策推進枠との重複申請は可。構成員は1グループのみ」です。1社で申請する枠と比べたいときはインボイス対応類型の補助率と対象機器も参考になります。
間違えやすい点
間違えやすいのは、ツールを使わない構成員、構成員の数え方、併願の3つです。
名前だけ参加してITツールを使わない店は、構成員として数えられません。10者の中に使わない店が混じると、要件を満たさなくなります。
1人の代表者が複数の会社を経営している場合、その会社はまとめて1者と数えます。同じ経営者の店を並べて10者にすることはできません。
この枠の構成員は、同じ時期に通常枠やインボイス枠へ申請できません。自店のソフトを別に申請する予定がある店は、参加の前に代表事業者と調整します。
構成員の書類がそろわず確定額が減る場面は採択後に補助金が減額になるケースで取り上げています。
どこで評価が分かれるかは、事業の中身によって変わります。御社の計画でどう書けばよいかは、専門家に無料で相談して確かめられます。
専門家から見た複数者連携枠のポイント
この枠は、10者を集めて代表事業者が書類を回せるかどうかで成否が決まり、ツール選びより先に体制づくりに時間をかけるべき枠です。採択事例を見ると、集客や繁閑の差を課題にした事例が13.5%、販路や情報発信を課題にした事例が10.8%あり、店単位では手が届きにくい課題がこの枠の出番です。
この枠で組むとよいグループ
商店街振興組合や温泉街の旅館組合のように、事務局の職員がいて会員とのやり取りに慣れている団体です。紙の商品券やスタンプカードを電子地域通貨に置き換え、来街者の動きを全店で共有する計画が組みやすくなります。
取引先が多い卸売業が代表になり、仕入先や納品先と受発注をつなぐ形もこの枠に当てはまります。
個社の枠で出したほうがよい会社
参加する店が10者に届かない場合や、各店の決算書や納税証明書を集められる人がいない場合です。自店の会計やレジを替えたいだけなら、インボイス対応類型で1社ずつ申請するほうが早く進みます。
グループで取れる加点の考え方は補助金の加点一覧で取り上げています。
よくある質問
複数者連携デジタル化・AI導入枠について、相談でよく聞かれる問いと答えです。
商店街振興組合などの団体でないと申請できませんか?
団体でなくても、中小企業・小規模事業者がグループを作れば申請できます。取りまとめ役を担える中小企業が代表事業者になります。
参画事業者のGビズIDで申請してもよいですか?
認められません。交付申請は代表事業者のGビズIDプライムで行います。
古いポイントカードを電子地域通貨に置き換える計画は対象ですか?
申請できます。ただし入れ替えるだけでなく、顧客のデータを集めて分析し、生産性を上げる計画にする必要があります。
参画事業者は売上高を代表事業者に報告しますか?
効果報告で売上高を出す必要はありません。申請前に計算した自社の生産性の伸びを、代表事業者に出します。
ほかの質問はよくある質問にまとめています。
出典(4件)
- デジタル化・AI導入補助金2026 複数者連携デジタル化・AI導入枠 公募要領 p.8『2-2-1(2) 代表事業者』
- デジタル化・AI導入補助金2026 複数者連携デジタル化・AI導入枠 公募要領 p.10『【補足1】補助事業実施のパターンの例と交付申請可否』
- デジタル化・AI導入補助金2026 複数者連携デジタル化・AI導入枠 公募要領 p.13『2-2-1(5) 申請要件 (オ)』
- デジタル化・AI導入補助金2026 複数者連携デジタル化・AI導入枠 公募要領 p.22『3-1 補助事業の流れ』
いま申請できる回
デジタル化・AI導入補助金
- 公募回
- 6次締切分
- 締切
- 2026年10月30日(金)17:00
公募要領の台帳より(2026年10月20日確認)
この補助金の採択事例
一覧へ同じ取り組みで、実際に採択された会社です。
日報・原価・会計のデータをつなぎ、月次の利益集計を早める
株式会社 一寸房✓ 経産省などの認定・選定
成果受注物件ごとの月次利益集計の期間が1週間以上短縮され、体感で約30%のコスト削減になった。
バイタル記録をタブレット化し、利用者と向き合う時間を増やす
有限会社鈴木在宅ケアサービス✓ 経産省などの認定・選定
成果パソコンの順番待ちと帳票への転記がなくなり、記録の時間と手間が大きく減った。
ICカードとスマホ打刻で、勤怠の集計作業をなくす
花の舞酒造 株式会社✓ 経産省などの認定・選定
成果給与計算までの作業時間が8割以上減り、労務管理の担当者に新しい仕事を任せられるようになった。
VOICE
この補助金を使った人の声
京都府の電気工事会社従業員8名この業界は非常に閉じた世界ですから、経営者同士の横の繋がりも非常に重要です。社会的に人手不足と言われていますが、この業界も本当に人手不足。案件によっては人手が足りないこともありますから。
大阪府の金属部品の熱処理・塗装会社従業員71名入力作業のような人手はできるだけ減らしていき、人の力は、出てきたデータを分析し、判断して手を打つところに活用していきたいと考えています。
熊本県の放課後等デイサービス従業員13名できるだけ子どもと接する時間を多く作りたいと思っています。一方で、どうしても事務作業は付いて回ってしまいます。支援記録をつけたり保護者への請求書を作成したりしますが、とても手間がかかります。
出典:国・省庁などの公開情報をもとに当社が加工
中小機構「補助金活用ナビ」の事例記事にある事業者の発言を引用しています。
まだ相談は早いと感じる方は、まず資料で全体をつかんでください。
締切も改訂も見落とさない
- 公募開始条件にあう補助金の公募をいち早く
- 締切前準備が間に合うよう2週間前と3日前
- 改訂変わった点の詳細と御社への影響
この記事の更新履歴
- 最新の公募要領と照らして、数字や制度名を直しました
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