インボイス対応類型は、5枠の中で補助率が最も高い枠です。小規模事業者であれば補助率4/5、中小企業でも3/4が適用され、通常枠の1/2と比べて実質的な自己負担が大きく違います。
この枠の申請件数は、2024年に56,029件、2025年に46,394件と全枠の中で断然トップです(出典:中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の概要」令和8年4月)。それだけ多くの事業者が活用している一方で、補助率の計算構造が複雑なため、試算を誤ったまま申請するケースも目立ちます。
この記事では、補助率の正確な計算方法と、対象となるソフトウェア・ハードウェアの要件を公式資料に基づいて整理します。
目次
デジタル化・AI導入補助金2026とは?
デジタル化・AI導入補助金は、小規模事業者持続化補助金、ものづくり補助金・新事業進出補助金と並び、通年で公募が行われている補助金です。年3〜4回の公募サイクルで実施されており、申請のチャンスが複数あります。

デジタル化・AI導入補助金は、中小企業・小規模事業者・個人事業主が業務効率化・生産性向上のためにITツールやAIシステムを導入する際の費用を国が補助する制度です。2026年より従来の「IT導入補助金」から名称が変更され、生成AI対応ツールへの補助が明確化されました。
詳しくはこちら:【2026年最新】デジタル化・AI導入補助金の新枠・対象・採択ポイントを徹底解説
デジタル化・AI導入補助金の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | デジタル化・AI導入補助金2026 |
| 前身 | IT導入補助金(2017年〜2025年) |
| 管轄 | 中小企業庁 |
| 申請窓口 | IT導入支援事業者経由(直接申請不可) |
| 補助上限 | 最大450万円(枠により異なる) |
| 補助率 | 1/2〜4/5(枠により異なる) |
| 対象経費 | ソフトウェア費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費等 |
出典:中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の概要」令和8年4月
この補助金では、会計ソフトや受発注システム、顧客管理(CRM)、在庫管理、ECサイト、セキュリティ対策ツールなど、さまざまなITツール導入費用の一部が補助対象となります。近年では、生成AIやAIチャットボット、RPAなどを活用した業務自動化・省力化の取り組みにも注目が集まっています。
インボイス対応類型とは?
インボイス対応類型は、デジタル化・AI導入補助金2026のインボイス枠に設けられた2つの類型のうちの一つです。インボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応した会計・受発注・決済ソフトを導入する中小企業・小規模事業者・個人事業主を支援します。
5枠の中で補助率が最も高く、小規模事業者であれば補助額50万円以下の部分に4/5が適用されます。自社のインボイス対応を進めるために自ら申請する枠であり、発注者が受注者にツールを提供する「電子取引類型」とは目的・申請主体が異なります。
補助率と補助額
インボイス対応類型の補助率は、補助額の水準と事業者の規模によって段階的に変わります。一見複雑ですが、「50万円以下」と「50万円超」で分けて考えると整理しやすいです。
ソフトウェア補助
| 補助額の区分 | 中小企業の補助率 | 小規模事業者の補助率 | 機能要件 |
|---|---|---|---|
| 50万円以下 | 3/4以内 | 4/5以内 | 会計・受発注・決済のうち1機能以上 |
| 50万円超〜350万円以下 | 50万円以下の部分:3/4、超過分:2/3 | 50万円以下の部分:4/5、超過分:2/3 | 会計・受発注・決済のうち2機能以上 |
補助額が50万円を超える場合、50万円以下の部分と超過分で補助率が変わる点に注意してください。たとえば小規模事業者が補助額100万円の場合、50万円×4/5+50万円×2/3=40万円+33.3万円=73.3万円が補助金額になります。
ハードウェア補助
| 対象機器 | 補助率 | 補助上限 |
|---|---|---|
| PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機 | 1/2以内 | 10万円 |
| POSレジ・モバイルPOSレジ・券売機 | 1/2以内 | 20万円 |
ハードウェア単独での申請は不可です。必ずソフトウェアとセットで申請する必要があります。
出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業「インボイス枠(インボイス対応類型)」公式ページ https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/digitalbase/
対象ツールの要件
対象となるのは「インボイス制度に対応しており、かつ会計・受発注・決済の機能を1種類以上有するソフトウェア」です。よく名前が挙がるfreee会計・マネーフォワード クラウド・弥生クラウドシリーズ・勘定奉行クラウドなど、主要な会計SaaSの多くが登録済みです。ただし登録状況は随時更新されるため、申請前に事務局のITツール検索(https://it-shien.smrj.go.jp/search/)で確認するのが確実です。
補助対象になる経費の種類は以下のとおりです。
- ソフトウェア費(必須):インボイス対応ソフトのライセンス料・クラウド利用料(最大2年分)
- オプション費:機能拡張・データ連携ツール・セキュリティオプション
- 役務費:導入コンサルティング・設定・マニュアル作成・導入研修・保守サポート
- ハードウェア費:上記の機器(ソフトウェアの使用に資するものに限る)
補助対象外になる主なケース
- ハードウェアのみの申請(ソフトウェアが必須)
- インボイス制度に対応していないソフトウェア
- 交付決定前に契約・支払いが完了した費用
- 事務局に登録されていないツール
採択率と審査傾向
インボイス対応類型は5枠の中で申請件数が最多ですが、採択率は年度ごとに大きく改善しています。
デジタル化・AI導入補助金 採択率
中小企業庁の公表資料をもとに、枠別の採択率をまとめました。
| 申請枠 | 2024年 申請数 | 2024年 採択数 | 2024年 採択率 | 2025年 採択率 |
|---|---|---|---|---|
| 通常枠 | 23,672件 | 8,936件 | 約37.8% | 約65.8% |
| インボイス枠(対応類型) | 56,029件 | 25,900件 | 約46.2% | 約72.1% |
| セキュリティ対策推進枠 | 730件 | 360件 | 約49.3% | 約85.3% |
| 複数社連携枠 | 8件 | 6件 | 約75.0% | 約57.1% |
(出典:中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の概要」令和8年4月)
2024年の採択率は約46.2%(申請56,029件・採択25,900件)でしたが、2025年は約72.1%(申請46,394件・採択33,438件)まで上昇しました(出典:中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の概要」令和8年4月)。申請件数が約1万件減少しながら採択件数は増加しており、申請の質が上がったことと審査基準が整備されたことが背景にあります。
ただし、2026年度は過去に交付決定を受けた事業者への再申請要件が追加されています。同一機能のITツールを再度申請する場合は減点対象になるため、ツールの切り替えや機能追加を申請する際は慎重に設計が必要です(出典:補助金ポータル、令和8年4月)。
採択事例
インボイス対応類型の趣旨に沿った実際の採択事例を参考に挙げます。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 ITツール活用事例(公式サイト)
事例①:建設業・従業員8名(神奈川県)
課題:紙の請求書・領収書が混在し、インボイス対応のための書類整理に月30時間以上かかっていた。 導入ツール:クラウド会計ソフト(インボイス対応類型) 結果:経理作業を月30時間→約8時間に削減。インボイス登録番号の自動照合機能で記載漏れがゼロに。
事例②:飲食業・従業員12名(大阪府)
課題:POSレジと会計ソフトが連携しておらず、日次の売上入力を手作業で実施。インボイス対応も未整備。 導入ツール:インボイス対応POSレジ+クラウド会計ソフト(ハードウェア込みで申請) 結果:売上データの自動連携で日次入力作業を廃止。ハードウェア補助でPOSレジ2台分の費用を補填。
ハードウェアと一体で申請できる点はインボイス対応類型固有の強みです。会計ソフトだけでなく、現場のレジや端末ごと刷新したい場合に活用しやすい枠です。
申請のポイント
インボイス対応類型に特有の注意点を整理します。通常枠と共通する「交付決定前の支払い禁止」「登録ツール以外は不可」などの基本ルールは親記事をご参照ください。
① 補助率の計算を事前に試算する
50万円の壁で補助率が変わるため、申請する補助額によって有利な設計が変わります。公式サイトに補助金シミュレーターがあるので、申請前に必ず試算してください(https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/digitalbase/simulator/?tab=tab2)。
② 補助額50万円超を狙うなら2機能以上が必須
50万円超〜350万円以下の補助を申請するには、会計・受発注・決済のうち2機能以上を有するソフトウェアが要件です。1機能だけのシンプルな会計ソフトでは上限が50万円に制限されます。大きな補助額を狙うなら、複数機能を持つ統合型ツールか、複数ソフトの組み合わせを検討してください。
③ ハードウェアはソフトウェアとセットでのみ申請可能
PCやPOSレジ単独の申請は制度上不可です。補助対象のソフトウェアと組み合わせて「このハードウェアがソフトの使用に必要」という関係性を明確に示す必要があります。
④ 免税事業者の申請可否を事前に確認する
インボイス制度への対応を目的とする枠ですが、免税事業者の申請可否については2026年度の公募要領で確認が必要です。制度内容が変更される可能性があるため、申請を検討する場合は事務局(0570-666-376)への確認を推奨します(出典:補助金ポータル)。
よくある質問
Q1. 通常枠とインボイス対応類型を同時に申請できますか?
はい、可能です。同一申請期間内に両枠への申請は認められています。ただし、同じITツール・経費を両方の枠に重複申請することはできません。
Q2. すでにインボイス対応ソフトを使っている場合、申請できますか?
原則できません。交付決定前から利用しているツールは補助対象外です。別の登録済みツールへの切り替えや、現在のツールの上位プランへのアップグレードが対象になるケースはありますが、個別にIT導入支援事業者へ確認が必要です。
Q3. 個人事業主でも小規模事業者として4/5の補助率が適用されますか?
個人事業主は原則として小規模事業者の区分に含まれるため、4/5の補助率が適用されます。ただし業種によって小規模事業者の定義が異なるため、公募要領で自社の区分を確認してください。
Q4. PCを補助対象に含めたいのですが、上限10万円は1台あたりですか?
公式の案内では「PC・タブレット等:10万円以下」と記載されています。複数台分の合計での申請か1台あたりの上限かは公募要領および事務局への確認が必要です。IT導入支援事業者と事前に相談して設計することをお勧めします。
Q5. インボイス対応類型と電子取引類型の違いは何ですか?
インボイス対応類型は中小企業・小規模事業者が自社のインボイス対応を進める枠です。電子取引類型は、大企業等が中小企業のインボイス対応を支援するための取引関係構築を目的とした枠で、対象者・目的・要件が異なります。取引先から「一緒に申請しよう」と声がかかる場合は電子取引類型の可能性があります。
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参考・引用資料
本記事は以下の公式資料をもとに作成しています。
免責事項
本記事について
本記事は、中小企業庁・独立行政法人中小企業基盤整備機構・デジタル庁等が公表している公式資料をもとに、情報提供を目的として作成しています。特定の補助金申請の採択や補助金受給を保証・推奨するものではありません。
制度変更について
デジタル化・AI導入関連補助金は、公募回ごとに補助率・補助上限額・対象経費・申請要件・スケジュール等が変更される場合があります。制度内容は予告なく変更される可能性があるため、申請前に必ず最新の公募要領・公式サイトをご確認ください。
申請の際は必ずご確認ください
- デジタル化・AI導入補助金公式サイトに掲載されている最新公募要領
- AIツール・ITツールの補助対象可否
- GビズIDプライムアカウントの取得状況
- 認定支援機関・IT導入支援事業者等への相談
著作権
本記事の文章・構成の著作権は leon-strategy.com に帰属します。引用・転載の際は出典を明記してください。
本記事の情報は2026年5月時点のものです。補助率・対象サービス・SECURITY ACTIONの手続きは変更になる場合があります。申請前に必ず最新の公募要領およびIPA公式サイトをご確認ください。 出典:中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の概要」令和8年4月 / セキュリティ対策推進枠公式ページ https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/security/ / IPA「SECURITY ACTION」 https://www.ipa.go.jp/security/security-action/
PROFILE

- 中小企業診断士 / 資金調達・補助金コンサルタント / 外資系戦略コンサルティングファーム出身。独立後、事業再構築補助金・ものづくり補助金を中心に200社超の資金調達を支援し、採択率80%以上を継続して維持しています。補助金申請において最も難しいのは「書類を書くこと」ではなく、「審査員に刺さる事業計画を設計すること」です。戦略コンサルとしての経験を活かし、単なる申請代行ではなく、事業計画の立案から採択後の実行フェーズまでを一気通貫でサポートすることを強みとしています。これまでの支援先は製造業・小売業・サービス業など幅広く、初めての補助金申請から複数回採択の実績づくりまで対応しています。また、補助金メディアの執筆者として1,000本超の記事を執筆。最新の制度情報・審査傾向を常にアップデートしながら、読者と支援先の双方に正確な情報を届けることを使命としています。
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