建設業が小規模事業者持続化補助金を使うとき、何に投資して採択されているのか。この記事では、公開されている建設業の採択事例20選を取組内容ごとに整理し、建設業ならではの傾向と、採択につなげるための申請のポイントをまとめます。自社の受注拡大のヒントとして役立ててください。
(事例の一次出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ。本記事は同事例をもとにレオン・ストラテジーが分類・分析したものです)
目次
小規模事業者持続化補助金とは?
持続化補助金は、ものづくり補助金・新事業進出補助金・デジタル化・AI導入補助金と並び、通年で公募が行われている補助金です。年3〜4回の公募サイクルで実施されており、申請のチャンスが複数あります。
補助上限額は最大250万円(インボイス・賃上げ等の特例要件を満たした場合)、補助率は2/3〜最大3/4。小規模事業者にとって、自己負担を抑えて新しい挑戦ができる大きなチャンスです。令和8年度の予算規模は総額3,400億円にも上り、毎年約3万件以上の応募があります。
詳しくはこちら:【2026年】小規模事業者持続化補助金の最新情報を解説!
建設業の採択事例にみる傾向
建設業20件を取組内容で分類すると、内訳は次のとおりです。
| 取組カテゴリー | 件数 |
|---|---|
| ホームページ制作・改修 | 8 |
| 展示会・商談会出展 | 2 |
| 広告・SNS・Web広告 | 2 |
| チラシ・パンフ・DM | 2 |
| 新商品・新メニュー開発 | 2 |
| 予約・POS・業務システム | 1 |
| 看板・サイン | 1 |
| その他販路開拓 | 1 |
| 店舗改装・内外装 | 1 |
| 合計 | 20 |
ここに建設業のはっきりした特徴が出ています。最も多いのはホームページで、次いでチラシや冊子といった広報物が続きます。これらに共通するのは、**「自社の工法や施工実績を分かりやすく見える化して、新しい受注につなげる」**という狙いです。
建設業の多くは、公共工事や元請けからの下請けに売上を依存しがちです。採択事例を見ると、その依存から抜け出して、民間の個人客やエンドユーザーから直接受注を取りに行く取組が目立ちます。施工は形が残る一方で、その品質や技術力は外から伝わりにくいものです。だからこそ、実績や工法を「見える化」する投資が販路開拓に直結します。
つまり建設業で持続化補助金を活かすなら、**「自社の技術と実績を、どの新しい受注先に、どう伝えて信頼を得るか」**を具体的に描くことが出発点になります。
注目の採択事例3選
まず、取組の中身がイメージしやすい3件を、公開情報をもとに紹介します。
実績の見える化で公共依存から民間受注へ|有限会社本山建設(ホームページ制作)
取組内容:公共工事への偏りという経営課題を解消するため、小規模工事の民間需要者をターゲットに設定。施工実績や強みを掲載したWebサイトの構築、インターネット広告、Facebookページの作成に加え、専門家指導による若手人材育成を実施した。
成果:施工実績や強みの「見える化」が顧客から評価され、民間工事の受注件数が8件から10件(前年対比125%)に増加。見える化によって社員のモチベーションも高まり、施工品質や生産性の向上にもつながった。
事業者の声:建設業界は厳しい人手不足が続き、成長性を確保するには生産性向上が不可欠。持続化補助金がとても良いきっかけになった。商工会経営指導員から伴走型でアドバイスを受けながら、経営革新の実現に取り組んでいきたい。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
看板とイベントで地域のファミリー層をつかむ|船岡建設株式会社(看板・サイン)
取組内容:新築需要のある若いファミリー層の獲得を図るため、新たに作成した会社ロゴマークで会社看板と車両ロゴステッカーを設置。あわせて自社敷地内で感謝祭イベントを開催し、事業内容の認知度とイメージの向上を図った。
成果:看板設置後に新規客の来店があり、約500万円の工事を成約。イベントには32組120〜130人が来場し、OB客からリフォーム工事2件(合計約1,000万円)を成約した。
事業者の声:イベントは来場者アンケートでも大変好評で、売上にもつながった。今後は毎年開催し、新規顧客の獲得とOB客の需要掘り起こしを続けていく方針。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
自社工法の小冊子で全国に代理店を広げる|有限会社真鍋組(チラシ・冊子)
取組内容:自社開発工法の小冊子を作成し、それを活用した営業活動を展開。工法への理解や商談成功の可能性を高めることで、全国からの提携代理店の獲得や工事受注による業績増を図った。
成果:半年足らずで売上は前年度対比14%増、営業利益は49%増、当該工法の売上構成も60%増加。同業他社の落札工事で下請け受注を獲得し、近隣自治体が当該工法を採用した入札も実施された。提携代理店も兵庫・岩手に各1件配置し、全国からの問い合わせが急増している。
事業者の声:地域の建設施策(橋梁長寿命化修繕計画)などに貢献し、持続的に発展させるために、本補助事業で得た成果を次に繋げたい。小冊子を活用して工法の詳細を理解してもらい、さらなる販路拡大を目指している。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
取組カテゴリー別のポイント
3件のように、建設業の取組はカテゴリーごとに勘どころが異なります。
ホームページは最多で、施工実績や対応できる工事内容を掲載し、個人客からの直接受注に対応できる体制をつくる取組が中心です。ここで注意したいのは、ウェブサイト関連費には上限がある点です。補助金交付申請額の4分の1、最大50万円までで、しかもこの費目だけでは申請できません。サイト中心の計画でも、広報費など他の経費と組み合わせて設計します。
チラシ・冊子は、自社の工法や強みを分かりやすく伝える広報物として効果を発揮します。配るだけでなく、誰に・どう届けて受注につなげるかまで描けている計画が評価されます。
看板・サインやイベントは、地域内での認知度を高め、新築・リフォーム需要のある層を呼び込む取組です。受注単価が大きい建設業では、1件の成約でも投資回収につながりやすい点が計画書でアピールしやすい特徴です。
設備や車両の改造などは、それが新たな受注先の開拓につながることを説明できれば対象になり得ます。物販や店舗を併せて考える場合は卸売・小売業の採択事例、製品開発に踏み込むなら製造業の事例もあわせて参考になります。
建設業が採択されるための申請のポイント
事例から見えてくる、建設業特有の落とし穴と対策を整理します。
技術や実績を「見える化」する。 建設業の強みは施工品質や工法ですが、それは外から伝わりにくいものです。HP・冊子・施工写真などで何ができる会社かを具体的に示し、それがどの受注につながるかまで描くと評価されます。
下請け・公共依存からの脱却を販路開拓として位置づける。 「民間の個人客から直接受注する」「新しい工法で別の市場に出る」といった、新規販路の獲得として計画を組み立てます。
受注単価の大きさを効果の裏づけに使う。 建設業は1件の受注額が大きいため、**「看板を見た新規客1件で◯◯万円成約」**のように、少ない件数でも大きな効果を数値で示せます。
ウェブ費の上限を前提に経費を組む。 ウェブサイト関連費は交付申請額の4分の1・最大50万円までで、単独申請もできません。広報費や機械装置費と組み合わせて全体を設計します。
持続化補助金の直近採択率
正直に申し上げると、直近の持続化補助金の難易度は上がっており、採択結果は非常に厳しいものとなっております。
たとえば第16回締切分の結果は、7371件の申請のうち2741件、採択率は37.2%でした。これは前回(第15回)の採択率41.8%を下回り、過去最低となる事業者にとって非常に厳しい結果となりました。
ただし上の数字が示すとおり、公募回によって40%を切ることもあれば50%を超えることもあります。最終的に明暗を分けているのは事業計画書の完成度です。
記事:【令和8年度】補助金採択率が急減!原因と成功の秘訣を解説
建設業の採択事例20選(全一覧)
公開されている建設業の採択事例を一覧にまとめました。自社の取組に近いものを探す際の参考にしてください。
| 企業名 | 取組カテゴリー | 取組概要 |
|---|---|---|
| わくわくお米本舗 | 展示会・商談会出展 | パッケージデザインの改良を行い展示会に出展して自社製品をPR |
| 猫本タタミ工業株式会社 | 予約・POS・業務システム | 福祉用具畳の販売店として地域№1の畳店を目指す |
| 有限会社本山建設 | ホームページ制作・改修 | 個人客からの受注に対応できるHPを構築し受注アップ |
| 株式会社青木工務所 | ホームページ制作・改修 | HP活用による販路拡大と最新工法導入による業務効率化 |
| 有限会社川合工務店 | 広告・SNS・Web広告 | 「ガレージハウス」のモデルハウスを設置し愛好家からの受注に対応 |
| 小林造園土木 | 広告・SNS・Web広告 | 立地条件の克服と女性顧客獲得への取り組み |
| 有限会社サクラ住研 | ホームページ制作・改修 | ネットワークを生かした販売機会の創出と受注の獲得 |
| 船岡建設株式会社 | 看板・サイン | 若いファミリー層向けのPRを行うことで、認知度アップと顧客獲得 |
| 永井建設株式会社 | ホームページ制作・改修 | 在来工法による木造建築のPRをHP・パンフレットで実施 |
| 株式会社琉球住樂 | その他販路開拓 | オリジナル木製家具の販売 |
| 株式会社サカモト瓦店 | ホームページ制作・改修 | デザイン瓦を使用して瓦エクステリア、瓦チップの販売促進を実施 |
| 株式会社リノベーションホーム | チラシ・パンフ・DM | 工法がわかりやすい告知チラシを利用して、潜在顧客にアプローチ |
| 江口板金工業株式会社 | 店舗改装・内外装 | 県外社寺仏閣への出張工事を展開し販路を拡大 |
| 茂助建築店 | ホームページ制作・改修 | エイジング塗装に特化した家具修理とPR強化による販路拡大事業 |
| 有限会社真鍋組 | チラシ・パンフ・DM | わかりやすい自社開発工法PR冊子の作成で売り上げ増を達成 |
| 株式会社天城カントリー工房 | ホームページ制作・改修 | 「amagear TINY HOUSE」を全国へ!一大ブランドに成長させる広告宣… |
| 有限会社伊具緑化 | 新商品・新メニュー開発 | 可搬式室内緑化装置をチラシとDMで顧客に提案 |
| 有限会社相澤工業 | ホームページ制作・改修 | 自然素材建材の英語版Webを作成し在日外国人に遡求 |
| 有限会社 ミトモ | 展示会・商談会出展 | 新工法を展示会でPRし、取引先開拓に成功 |
| 総合緑化コガキュー | 新商品・新メニュー開発 | 樹木医の専門性を活かした商品開発を行い取引先拡大 |
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビをもとにレオン・ストラテジーが分類・作成)
上の一覧は、各事例の取組概要のみを掲載しています。それぞれの事業者がどんな課題からどう計画を組み立て、どの取組で採択に至ったのか、そして自社の場合に何をどう使えるのかといった具体的な活用方針は、個別の面談でお話ししています。 「自社の工事内容だとどの事例が近いか分からない」「うちの設備や広報が対象になるか知りたい」という段階でも構いません。240社以上の支援実績をもとに、自社に合った進め方を一緒に整理します。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
建設業でも持続化補助金は使えますか?
使えます。建設業は常時使用する従業員が20名以下であれば小規模事業者に該当します。
一人親方や個人事業主でも申請できますか?
申請できます。法人・個人事業主のどちらでも対象です。従業員20名以下の要件を満たせば、一人親方も申請できます。
補助金額の上限と補助率はどのくらいですか?
一般型・通常枠の場合、補助上限は50万円、補助率は3分の2が基本です。賃上げなどの特例や創業型では上限が異なります。公募回によって条件が変わるため、申請前に最新の公募要領で確認してください。
重機や工具の購入に使えますか?
販路開拓につながることを説明できれば、機械装置等費として対象になり得ます。一方で、汎用的な備品の更新や通常の工具買い替えは対象になりにくいです。
ホームページの制作に使えますか?
ウェブサイト関連費として対象です。ただし上限は交付申請額の4分の1・最大50万円で、この費目単独での申請はできません。広報費など他の経費と組み合わせる必要があります。
モデルハウスや展示場の設置は対象になりますか?
新規顧客の獲得につながる集客の取組であれば対象になり得ます。ただし販路開拓との結びつきを計画書で明確に説明する必要があります。
自社工法のPR冊子やチラシは対象ですか?
広報費として対象です。工法や施工実績を分かりやすく伝え、受注につなげる広報物が該当します。
資材費や外注の工事費は対象になりますか?
通常の資材費や外注工事費は対象外です。 補助の対象は、販路開拓や業務効率化のための経費に限られます。
商工会議所・商工会の会員でないと申請できませんか?
会員でなくても申請できます。 ただし申請には商工会議所または商工会が発行する事業支援計画書(様式4)が必須です。発行には日数がかかるため、締切から逆算して早めに相談してください。
補助金はいつ受け取れますか?
後払い(精算払い)です。 採択後すぐに入金されるわけではなく、交付決定を受けてから補助事業を実施し、実績報告を提出して金額が確定した後に振り込まれます。先に自己資金で支払う必要がある点に注意してください。
関連する業種の採択事例
自社の業態に近い業種の事例もあわせてご覧ください。
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- 漁業の持続化補助金|採択事例2選
- 不動産業の持続化補助金|活用事例
建設業の持続化補助金について、自社の技術や実績をどう見える化して新しい受注につなげるか、どの経費区分で組むべきか迷う場合は、計画段階からの伴走支援をご利用ください。240社以上の支援実績をもとに、採択される事業計画づくりをお手伝いします。
出典・参考資料
- 小規模事業者持続化補助金<一般型>補助金事務局(商工会議所地区)
- 小規模事業者持続化補助金について(中小企業庁)
- 補助金公募情報一覧(中小企業庁)
※本記事は上記公式資料をもとに作成しています。制度内容は変更される場合があります。申請の際は必ず最新の公募要領をご確認ください。
免責事項・ご注意
- 本記事について
本記事は、中小企業庁・補助金事務局が公表している公式資料をもとに、情報提供を目的として作成しています。特定の補助金申請の採択を保証・推奨するものではありません。 - 制度変更について
本補助金は公募回(現在:第19回)ごとに要件・補助率・スケジュール・申請枠が変更される場合があります。また申請窓口は商工会地区と商工会議所地区で異なります(事業支援計画書(様式4)の発行先が異なるため、事前に自社の管轄を必ずご確認ください)。 - 申請の際は必ずご確認ください
商工会議所地区 補助金事務局サイトに掲載の最新公募要領
管轄の商工会または商工会議所への事前相談(様式4の発行受付締切に注意)
認定支援機関または中小企業診断士等の専門家への相談 - 損害免責
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PROFILE

- 中小企業診断士 / 資金調達・補助金コンサルタント / 外資系戦略コンサルティングファーム出身。独立後、事業再構築補助金・ものづくり補助金を中心に200社超の資金調達を支援し、採択率80%以上を継続して維持しています。補助金申請において最も難しいのは「書類を書くこと」ではなく、「審査員に刺さる事業計画を設計すること」です。戦略コンサルとしての経験を活かし、単なる申請代行ではなく、事業計画の立案から採択後の実行フェーズまでを一気通貫でサポートすることを強みとしています。これまでの支援先は製造業・小売業・サービス業など幅広く、初めての補助金申請から複数回採択の実績づくりまで対応しています。また、補助金メディアの執筆者として1,000本超の記事を執筆。最新の制度情報・審査傾向を常にアップデートしながら、読者と支援先の双方に正確な情報を届けることを使命としています。


