運輸業・郵便業が小規模事業者持続化補助金を使うとき、何に投資して採択されているのか。この記事では、公開されている運輸業・郵便業の採択事例4選を取組内容ごとに整理し、この業種ならではの傾向と、採択につなげるための申請のポイントをまとめます。自社の販路開拓のヒントとして役立ててください。
(事例の一次出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ。本記事は同事例をもとにレオン・ストラテジーが分類・分析したものです)
目次
小規模事業者持続化補助金とは?
持続化補助金は、ものづくり補助金・新事業進出補助金・デジタル化・AI導入補助金と並び、通年で公募が行われている補助金です。年3〜4回の公募サイクルで実施されており、申請のチャンスが複数あります。
補助上限額は最大250万円(インボイス・賃上げ等の特例要件を満たした場合)、補助率は2/3〜最大3/4。小規模事業者にとって、自己負担を抑えて新しい挑戦ができる大きなチャンスです。令和8年度の予算規模は総額3,400億円にも上り、毎年約3万件以上の応募があります。
詳しくはこちら:【2026年】小規模事業者持続化補助金の最新情報を解説!
運輸業の採択事例にみる傾向
運輸業・郵便業4件を取組内容で分類すると、内訳は次のとおりです。
| 取組カテゴリー | 件数 |
|---|---|
| ホームページ制作・改修 | 2 |
| 予約・POS・業務システム | 1 |
| 広告・SNS・Web広告 | 1 |
| 合計 | 4 |
ここに運輸業ならではの特徴が出ています。ホームページが中心ですが、その狙いは単なる集客ではありません。既存の輸送・移動サービスに専門特化や新しい付加価値を加え、それを告知して新しい顧客層を開拓する取組が共通しています。
運輸・タクシー・バスといった業種は、サービス自体が他社と似通いやすく、価格や運行エリアでの差別化が難しいものです。採択事例を見ると、ストレッチャー移送に特化した介護タクシーや、看護師が添乗するバスツアーのように、他社にない切り口でサービスを尖らせ、それを広報で伝えて新規需要をつくる取組が中心になっています。
つまり運輸業で持続化補助金を活かすなら、**「自社の移動・輸送サービスに、どんな専門性や新サービスを加えて差別化し、どの顧客に届けるか」**を具体的に描くことが出発点になります。
採択事例(全4件)
公開されている運輸業・郵便業の採択事例を、全件、公開情報をもとに紹介します。
介護タクシーの専門特化を医療・福祉に発信|株式会社敷浪タクシー(ホームページ制作)
取組内容:ストレッチャー移送ができるタクシー会社であることを医療機関や老人施設にアピールするためのパンフレット・チラシを作成。町広報への広告掲載やホームページの更新、介護タクシーの利便性向上のための備品整備も行った。
成果:能登で唯一の介護タクシーを広くアピールでき、福祉・医療関係者とのネットワークが構築され、新たに福祉助成事業の継続契約が成立。地元外の医療機関からの転送依頼も増え、月平均30件の受注が45件ペースに伸びた。
事業者の声:これまで競合にない強みを持ちながら、営業エリア外に広くアピールできていなかった。この事業をきっかけに商圏を拡大でき、行政と連携しながら能登地区の福祉サービス向上を目指していきたい。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
「看護師添乗型ツアー」で他社と差別化|阿波中央バス株式会社(広告・SNS)
取組内容:競合との差別化のため、看護師である娘自身を活用した「看護師添乗型」のオリジナルツアーを企画し、モニタリングツアーを実施。自社バスの車体に看板を設置し、地元タウン誌や新聞にも広告を掲載した。
成果:モニタリングツアーには定員12名に対して47件の申し込みがあり、アンケートでも高評価。話題性から新聞などのマスメディアに度々取り上げられ、問い合わせも多数あった。
事業者の声:マスメディアへの露出を機会と捉え、「看護師添乗型ツアー」の一層の周知を図る。看護師が添乗する具体的なメリットを検討し、ツアー企画に活かしていきたい。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
「おとなの修学旅行」で新しい客層を開拓|橙雅交通株式会社(ホームページ制作)
取組内容:補助事業である『おとなの修学旅行』をホームページに掲載し、市内全域に2回のチラシを新聞折り込みで配布して会員募集を図った。
成果:会員数は21名となり、うち13名が年間契約を結び約110万円の売上につながった。この事業により、地元から添乗員1名を雇用することもできた。
事業者の声:現在は口コミで会員数が少しずつ増えており、本年度中に追加で50名の会員増加を目指している。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
ポイント制導入で粗利率の高い販路を拡大|有限会社本地水産(予約・業務システム)
取組内容:地域のガス事業者として初のポイント制を提供するためのソフトウェアとハンディターミナルを導入。利用量に応じたポイント付与サービスを広く周知するためチラシを作成した。
成果:「ガス利用へのポイント付与」を開始したことで多数の新規顧客を獲得。従来は粗利率の低い卸売が中心だったが、粗利率の高い販路が拡大して財務状況が好転した。検針員の作業性とモチベーションも向上した。
事業者の声:ハンディターミナルの導入で検針作業の効率が上がり、経営地盤を強化できた。運送業においても運行管理者資格を取得し、第一種利用運送業へとサービスを発展させていきたい。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
運輸業が採択されるための申請のポイント
事例から見えてくる、この業種特有の落とし穴と対策を整理します。
サービスの「尖り」をつくる。 運輸・移動サービスは似通いやすいため、「安全・丁寧」では差別化になりません。専門特化や新サービスで、他社にない切り口を打ち出します。
新しい顧客層・需要を明確にする。 介護・観光・特定ニーズなど、どの新しい顧客層を狙うのかを具体化し、その層にどう届けるかまで描きます。
車両そのものの購入は対象外と心得る。 補助の対象は、新サービスの提供や販路開拓のための設備・広報です。車両本体の購入は対象になりません。
ウェブ費の上限を前提に経費を組む。 ウェブサイト関連費は交付申請額の4分の1・最大50万円までで、単独申請もできません。広報費や機械装置費と組み合わせて全体を設計します。
持続化補助金の直近採択率
正直に申し上げると、直近の持続化補助金の難易度は上がっており、採択結果は非常に厳しいものとなっております。
たとえば第16回締切分の結果は、7371件の申請のうち2741件、採択率は37.2%でした。これは前回(第15回)の採択率41.8%を下回り、過去最低となる事業者にとって非常に厳しい結果となりました。
ただし上の数字が示すとおり、公募回によって40%を切ることもあれば50%を超えることもあります。最終的に明暗を分けているのは事業計画書の完成度です。
記事:【令和8年度】補助金採択率が急減!原因と成功の秘訣を解説
よくある質問
運輸業でも持続化補助金は使えますか?
使えます。運輸業は常時使用する従業員が20名以下であれば小規模事業者に該当します。
個人タクシーや小規模な運送業でも申請できますか?
申請できます。法人・個人事業主のどちらでも対象です。従業員数の要件を満たせば、小規模な事業者も申請できます。
補助金額の上限と補助率はどのくらいですか?
一般型・通常枠の場合、補助上限は50万円、補助率は3分の2が基本です。賃上げなどの特例や創業型では上限が異なります。公募回によって条件が変わるため、申請前に最新の公募要領で確認してください。
車両の購入に使えますか?
車両本体の購入は原則対象外です。 新サービスの提供や販路開拓につながる設備・備品・広報が対象になります。
新しいサービスやツアーの企画に使えますか?
新サービスの開発・告知として対象になり得ます。他社との差別化や新しい顧客層の獲得につながる計画であることがポイントです。
ホームページやチラシの作成に使えますか?
ホームページはウェブサイト関連費(上限は交付申請額の4分の1・最大50万円、単独申請不可)、チラシは広報費として対象です。
予約システムや業務システムの導入は対象ですか?
業務効率化や販路開拓につながるものは対象になり得ます。ウェブを介する場合はウェブサイト関連費の上限の対象になることがあります。
商工会議所・商工会の会員でないと申請できませんか?
会員でなくても申請できます。 ただし申請には商工会議所または商工会が発行する事業支援計画書(様式4)が必須です。発行には日数がかかるため、締切から逆算して早めに相談してください。
補助金はいつ受け取れますか?
後払い(精算払い)です。 採択後すぐに入金されるわけではなく、交付決定を受けてから補助事業を実施し、実績報告を提出して金額が確定した後に振り込まれます。先に自己資金で支払う必要がある点に注意してください。
関連する業種の採択事例
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- 不動産業の持続化補助金|活用事例
運輸業の持続化補助金について、自社のサービスにどんな専門性を加えて差別化するか、どの経費区分で組むべきか迷う場合は、計画段階からの伴走支援をご利用ください。240社以上の支援実績をもとに、採択される事業計画づくりをお手伝いします。
出典・参考資料
- 小規模事業者持続化補助金<一般型>補助金事務局(商工会議所地区)
- 小規模事業者持続化補助金について(中小企業庁)
- 補助金公募情報一覧(中小企業庁)
※本記事は上記公式資料をもとに作成しています。制度内容は変更される場合があります。申請の際は必ず最新の公募要領をご確認ください。
免責事項・ご注意
- 本記事について
本記事は、中小企業庁・補助金事務局が公表している公式資料をもとに、情報提供を目的として作成しています。特定の補助金申請の採択を保証・推奨するものではありません。 - 制度変更について
本補助金は公募回(現在:第19回)ごとに要件・補助率・スケジュール・申請枠が変更される場合があります。また申請窓口は商工会地区と商工会議所地区で異なります(事業支援計画書(様式4)の発行先が異なるため、事前に自社の管轄を必ずご確認ください)。 - 申請の際は必ずご確認ください
商工会議所地区 補助金事務局サイトに掲載の最新公募要領
管轄の商工会または商工会議所への事前相談(様式4の発行受付締切に注意)
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PROFILE

- 中小企業診断士 / 資金調達・補助金コンサルタント / 外資系戦略コンサルティングファーム出身。独立後、事業再構築補助金・ものづくり補助金を中心に200社超の資金調達を支援し、採択率80%以上を継続して維持しています。補助金申請において最も難しいのは「書類を書くこと」ではなく、「審査員に刺さる事業計画を設計すること」です。戦略コンサルとしての経験を活かし、単なる申請代行ではなく、事業計画の立案から採択後の実行フェーズまでを一気通貫でサポートすることを強みとしています。これまでの支援先は製造業・小売業・サービス業など幅広く、初めての補助金申請から複数回採択の実績づくりまで対応しています。また、補助金メディアの執筆者として1,000本超の記事を執筆。最新の制度情報・審査傾向を常にアップデートしながら、読者と支援先の双方に正確な情報を届けることを使命としています。


