IT・情報通信業が小規模事業者持続化補助金を使うとき、何に投資して採択されているのか。この記事では、公開されている情報通信業の採択事例6選を取組内容ごとに整理し、この業種ならではの傾向と、採択につなげるための申請のポイントをまとめます。自社サービスの販路開拓のヒントとして役立ててください。
(事例の一次出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ。本記事は同事例をもとにレオン・ストラテジーが分類・分析したものです)
目次
小規模事業者持続化補助金とは?
持続化補助金は、ものづくり補助金・新事業進出補助金・デジタル化・AI導入補助金と並び、通年で公募が行われている補助金です。年3〜4回の公募サイクルで実施されており、申請のチャンスが複数あります。
補助上限額は最大250万円(インボイス・賃上げ等の特例要件を満たした場合)、補助率は2/3〜最大3/4。小規模事業者にとって、自己負担を抑えて新しい挑戦ができる大きなチャンスです。令和8年度の予算規模は総額3,400億円にも上り、毎年約3万件以上の応募があります。
詳しくはこちら:【2026年】小規模事業者持続化補助金の最新情報を解説!
情報通信業の採択事例にみる傾向
情報通信業6件を取組内容で分類すると、内訳は次のとおりです。
| 取組カテゴリー | 件数 |
|---|---|
| ホームページ制作・改修 | 3 |
| チラシ・パンフ・DM | 2 |
| その他販路開拓 | 1 |
| 合計 | 6 |
ここに情報通信業ならではの特徴が出ています。ホームページやチラシなどの広報が中心ですが、その狙いは単なる集客にとどまりません。自社で開発したサービスや製品を、どう新しい顧客層に広げるかが共通テーマになっています。
IT企業はサービスの中身が専門的で伝わりにくく、また既存顧客とは違う市場に踏み出す難しさもあります。採択事例を見ると、自社製品の機能を強化して新市場を開拓したり、小・中学生向けプログラミング講座のようにまったく新しい顧客層に向けたサービスを立ち上げて告知する取組が目立ちます。
つまり情報通信業で持続化補助金を活かすなら、**「自社のサービスや製品を、どの新しい市場・顧客層に、どう届けるか」**を具体的に描くことが出発点になります。
注目の採択事例3選
まず、取組の中身がイメージしやすい3件を、公開情報をもとに紹介します。
紙面の電子版化で発行部数と売上を伸ばす|かながわ経済新聞合同会社(販路開拓)
取組内容:新規顧客の開拓と読者の利便性向上を目的に、紙面の電子版を発行した。
成果:紙面に加えて電子版も発行し、メール配信でタイムリーな情報発信が可能に。創刊時3千部から約1万部へ発行部数が増加し、売上高は年間平均で150%増加した。
事業者の声:電子版という新たな取組を当初計画より前倒しで実施でき、部数増加の大きな後押しとなった。補助金活用の有益性を実感でき、中小企業向けの各種支援施策の情報発信強化にもつながった。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
自社開発製品の機能強化で販路を広げる|株式会社フリーライン(ホームページ制作)
取組内容:国家試験対策専門学校市場に向けて、自社開発製品に新機能(特許出願)を実装し、付加価値の向上と販路開拓のための研究開発を実施。新機能を広く周知するためパンフレットやホームページを作成し、医療系出版社との協業や教育学会への出展も行った。
成果:製品強化により教育現場で改めて高評価を得て、新規顧客への販売機会が増加。パンフレットやホームページによる周知も想定を上回る反響があり、全国の関係専門学校からの問い合わせが増加した。
事業者の声:以前から考えていた自社開発製品の機能強化に取り組むきっかけとなった。現在は新たにAI機能の導入を目指して研究開発に取り組んでおり、さらなる事業繁栄の大きな機会となっている。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
新しい客層に向けた講座でファンを増やす|株式会社エルアール(チラシ・パンフ)
取組内容:新たな顧客層の獲得を目的に、小・中学生をターゲットとした「ロボット制御用プログラミング講座」を開設し、チラシの作成とポスティングを行った。
成果:まず自社を知ってもらうことを目的に無料講座をチラシでうたったところ、問い合わせと受講につながった。直接の顧客にならなかったケースでも、受講者の口コミから新規顧客につながった。
事業者の声:整理できず悩んでいた短期・中期・長期計画について、商工会議所の指導員に寄り添ってアドバイスをもらい、具体的な道筋ができた。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
取組カテゴリー別のポイント
3件のように、情報通信業の取組はカテゴリーごとに勘どころが異なります。
ホームページは、自社サービスや製品を分かりやすく伝え、問い合わせや契約につなげる取組が中心です。ここで注意したいのは、ウェブサイト関連費には上限がある点です。補助金交付申請額の4分の1、最大50万円までで、しかもこの費目だけでは申請できません。サイト中心の計画でも、広報費など他の経費と組み合わせて設計します。
チラシ・パンフレットは、新サービスや新しい顧客層への告知に効果を発揮します。新講座や新製品を、誰にどう届けて契約につなげるかまで描けている計画が評価されます。製品の開発・製造に踏み込む取組は製造業の採択事例、Web制作や動画など専門サービスの見せ方は専門・技術サービス業の事例もあわせて参考になります。
情報通信業が採択されるための申請のポイント
事例から見えてくる、この業種特有の落とし穴と対策を整理します。
「新しい市場・顧客層」を明確にする。 IT企業は既存顧客への深耕に偏りがちですが、採択されるのは新しい市場や顧客層への販路開拓を描いた計画です。誰に向けた、どんな新サービスなのかを具体化します。
専門的なサービスを分かりやすく言い換える。 サービスの中身が専門的すぎると伝わりません。顧客にとっての価値に翻訳して示すことが重要です。
受託開発の費用そのものは対象外と心得る。 補助の対象は、自社サービスを広めるための広報・販路開拓です。顧客から請け負う受託開発の費用は対象になりません。
ウェブ費の上限を前提に経費を組む。 ウェブサイト関連費は交付申請額の4分の1・最大50万円までで、単独申請もできません。広報費などと組み合わせて全体を設計します。
持続化補助金の直近採択率
正直に申し上げると、直近の持続化補助金の難易度は上がっており、採択結果は非常に厳しいものとなっております。
たとえば第16回締切分の結果は、7371件の申請のうち2741件、採択率は37.2%でした。これは前回(第15回)の採択率41.8%を下回り、過去最低となる事業者にとって非常に厳しい結果となりました。
ただし上の数字が示すとおり、公募回によって40%を切ることもあれば50%を超えることもあります。最終的に明暗を分けているのは事業計画書の完成度です。
記事:【令和8年度】補助金採択率が急減!原因と成功の秘訣を解説
情報通信業の採択事例6選(全一覧)
公開されている情報通信業の採択事例を一覧にまとめました。自社の取組に近いものを探す際の参考にしてください。
| 企業名 | 取組カテゴリー | 取組概要 |
|---|---|---|
| かながわ経済新聞合同会社 | その他販路開拓 | 神奈川県内の中小企業情報に特化した新聞で売上高2.5倍に! |
| 株式会社フリーライン | ホームページ制作・改修 | 自社開発「国家試験対策システム」の製品力強化による販路拡大 |
| 株式会社エルアール | チラシ・パンフ・DM | 『ITをちょっと身近にする』小・中学生向けプログラミング講座 |
| 株式会社ロボインク. | ホームページ制作・改修 | 映像制作とウェブ制作・運用ノウハウを活かした「ウェブ動画」 |
| 株式会社ITATI | チラシ・パンフ・DM | いつでも見守る防犯カメラによるITATIcare保守制度 |
| 株式会社スリーワイズエデュケーションズ | ホームページ制作・改修 | ターゲット層を設定し、新聞広告・WEBを活用した企業PR |
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビをもとにレオン・ストラテジーが分類・作成)
上の一覧は、各事例の取組概要のみを掲載しています。それぞれの事業者がどんな課題からどう計画を組み立て、どの取組で採択に至ったのか、そして自社の場合に何をどう使えるのかといった具体的な活用方針は、個別の面談でお話ししています。 「自社のサービスだとどの事例が近いか分からない」「新サービスのPRや開発が対象になるか知りたい」という段階でも構いません。240社以上の支援実績をもとに、自社に合った進め方を一緒に整理します。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
IT・情報通信業でも持続化補助金は使えますか?
使えます。常時使用する従業員数の上限は業種区分によって異なるため、申請前に公募要領で自社の区分を確認してください。
自社開発サービスの販路拡大に使えますか?
使えます。自社サービスを広めるためのウェブ・広告・展示会出展・パンフレットなどが対象です。実際に自社製品を強化して新市場を開拓した採択事例があります。
補助金額の上限と補助率はどのくらいですか?
一般型・通常枠の場合、補助上限は50万円、補助率は3分の2が基本です。賃上げなどの特例や創業型では上限が異なります。公募回によって条件が変わるため、申請前に最新の公募要領で確認してください。
受託開発の費用は対象になりますか?
対象外です。 顧客から請け負う受託開発そのものの費用は補助対象になりません。補助の対象は、自社サービスの販路開拓や業務効率化のための経費です。
ホームページやWeb広告に使えますか?
ウェブサイト関連費として対象です。ただし上限は交付申請額の4分の1・最大50万円で、この費目単独での申請はできません。広報費など他の経費と組み合わせる必要があります。
新しいサービスの立ち上げに使えますか?
新サービスの開発や告知は対象になり得ます。新しい顧客層の獲得につながる計画であることがポイントです。
パソコンやサーバーの購入は対象ですか?
汎用的なパソコンなどは対象になりにくいですが、新サービスの提供に不可欠な機器であれば機械装置等費として対象になる場合があります。経費区分の確認が必要です。
商工会議所・商工会の会員でないと申請できませんか?
会員でなくても申請できます。 ただし申請には商工会議所または商工会が発行する事業支援計画書(様式4)が必須です。発行には日数がかかるため、締切から逆算して早めに相談してください。
補助金はいつ受け取れますか?
後払い(精算払い)です。 採択後すぐに入金されるわけではなく、交付決定を受けてから補助事業を実施し、実績報告を提出して金額が確定した後に振り込まれます。先に自己資金で支払う必要がある点に注意してください。
関連する業種の採択事例
自社の業態に近い業種の事例もあわせてご覧ください。
- 製造業の持続化補助金|採択事例113選
- 卸売・小売業の持続化補助金|採択事例72選
- 飲食店・宿泊業の持続化補助金|採択事例53選
- 建設業の持続化補助金|採択事例20選
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- 農業・林業の持続化補助金|採択事例4選
- 運輸業の持続化補助金|採択事例4選
- 整骨院・福祉業の持続化補助金|採択事例3選
- 漁業の持続化補助金|採択事例2選
- 不動産業の持続化補助金|活用事例
情報通信業の持続化補助金について、自社のサービスをどの新しい市場に広げるか、どの経費区分で組むべきか迷う場合は、計画段階からの伴走支援をご利用ください。240社以上の支援実績をもとに、採択される事業計画づくりをお手伝いします。
出典・参考資料
- 小規模事業者持続化補助金<一般型>補助金事務局(商工会議所地区)
- 小規模事業者持続化補助金について(中小企業庁)
- 補助金公募情報一覧(中小企業庁)
※本記事は上記公式資料をもとに作成しています。制度内容は変更される場合があります。申請の際は必ず最新の公募要領をご確認ください。
免責事項・ご注意
- 本記事について
本記事は、中小企業庁・補助金事務局が公表している公式資料をもとに、情報提供を目的として作成しています。特定の補助金申請の採択を保証・推奨するものではありません。 - 制度変更について
本補助金は公募回(現在:第19回)ごとに要件・補助率・スケジュール・申請枠が変更される場合があります。また申請窓口は商工会地区と商工会議所地区で異なります(事業支援計画書(様式4)の発行先が異なるため、事前に自社の管轄を必ずご確認ください)。 - 申請の際は必ずご確認ください
商工会議所地区 補助金事務局サイトに掲載の最新公募要領
管轄の商工会または商工会議所への事前相談(様式4の発行受付締切に注意)
認定支援機関または中小企業診断士等の専門家への相談 - 損害免責
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PROFILE

- 中小企業診断士 / 資金調達・補助金コンサルタント / 外資系戦略コンサルティングファーム出身。独立後、事業再構築補助金・ものづくり補助金を中心に200社超の資金調達を支援し、採択率80%以上を継続して維持しています。補助金申請において最も難しいのは「書類を書くこと」ではなく、「審査員に刺さる事業計画を設計すること」です。戦略コンサルとしての経験を活かし、単なる申請代行ではなく、事業計画の立案から採択後の実行フェーズまでを一気通貫でサポートすることを強みとしています。これまでの支援先は製造業・小売業・サービス業など幅広く、初めての補助金申請から複数回採択の実績づくりまで対応しています。また、補助金メディアの執筆者として1,000本超の記事を執筆。最新の制度情報・審査傾向を常にアップデートしながら、読者と支援先の双方に正確な情報を届けることを使命としています。


