漁業者が小規模事業者持続化補助金を使うとき、何に投資して採択されているのか。この記事では、公開されている漁業の採択事例2選を取組内容ごとに整理し、この業種ならではの傾向と、採択につなげるための申請のポイントをまとめます。自社の販路拡大のヒントとして役立ててください。
(事例の一次出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ。本記事は同事例をもとにレオン・ストラテジーが分類・分析したものです)
目次
小規模事業者持続化補助金とは?
持続化補助金は、ものづくり補助金・新事業進出補助金・デジタル化・AI導入補助金と並び、通年で公募が行われている補助金です。年3〜4回の公募サイクルで実施されており、申請のチャンスが複数あります。
補助上限額は最大250万円(インボイス・賃上げ等の特例要件を満たした場合)、補助率は2/3〜最大3/4。小規模事業者にとって、自己負担を抑えて新しい挑戦ができる大きなチャンスです。令和8年度の予算規模は総額3,400億円にも上り、毎年約3万件以上の応募があります。
詳しくはこちら:【2026年】小規模事業者持続化補助金の最新情報を解説!
漁業の採択事例にみる傾向
漁業2件を取組内容で分類すると、内訳は次のとおりです。
| 取組カテゴリー | 件数 |
|---|---|
| チラシ・パンフ・DM | 1 |
| ホームページ制作・改修 | 1 |
| 合計 | 2 |
漁業は事例数こそ多くありませんが、採択された取組には共通点があります。それは、獲った水産物の品質や価値を高め、それを伝えて、これまで届かなかった新しい販路に出ていくという方向性です。
漁業は市場や漁協への出荷に依存しがちで、価格決定の主導権を持ちにくい業種です。採択事例を見ると、鮮度保持の設備投資によって競合が出荷できない時期に高品質な状態で出荷したり、多言語のホームページでインバウンド客を取り込んだりと、品質と情報発信を強化して、都市部や海外という新しい市場を開く取組になっています。
つまり漁業で持続化補助金を活かすなら、**「自社の水産物の品質や価値をどう高め、どう伝えて、どの新しい販路に届けるか」**を具体的に描くことが出発点になります。
採択事例(全2件)
公開されている漁業の採択事例を、全件、公開情報をもとに紹介します。
鮮度保持の設備投資で都市部の新販路を開く|株式会社橋本水産(チラシ・パンフ)
取組内容:夏場の高温期にイワガキの鮮度を保持するため冷却器を導入。高品質なイワガキを広く周知するためのポスターを作成した。
成果:冷却器の導入により、競合他社が出荷できない期間にイワガキの生食出荷を実現。京阪神の飲食店にその品質が認められて新規取引を獲得し、前年対比で8月の利益が5%増加した。
事業者の声:地元商工会の支援を受けて事業計画をブラッシュアップできた。事業拡大と若手漁業者の育成に補助金を有効活用でき、今後は高齢化に伴う漁業者の減少に歯止めをかけていきたい。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
多言語サイトでインバウンド客を取り込む|天保養魚場(ホームページ制作)
取組内容:体験見学ツアー「浜名湖うなぎ探検隊」をインバウンド客に言語のストレスなく理解してもらうため、既存パンフレットを翻訳して英語版を作成。既存のホームページも英語・韓国語・中国語に対応したものへリニューアルした。
成果:浜松・浜名湖のうなぎ養殖と日本のうなぎ和食文化を外国人にも分かりやすく伝えられるように。ホームページのリニューアルにより、インドネシア・シンガポールから5件の問い合わせ、台湾・韓国・中国からのツアー客80名の受け入れにつながり、売上が増加した。
事業者の声:今回の事業でインバウンド客に「浜名湖うなぎ探検隊」をアピールできたが、コミュニケーション面で難しさも感じた。今後は自身の語学力の向上などさらなる改善に取り組んでいきたい。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
漁業が採択されるための申請のポイント
事例から見えてくる、この業種特有の落とし穴と対策を整理します。
品質・鮮度の強化を販路開拓に直結させる。 設備投資を「鮮度を保つため」で終わらせず、それによってどの新しい取引先・市場が開けるのかまで描きます。鮮度保持が、出荷時期や出荷先の拡大にどうつながるかを示すことが重要です。
価値の伝え方に投資する。 高品質でも伝わらなければ価格に反映されません。ポスター・多言語サイトなどで価値を伝える取組は、漁業の高付加価値化に効きます。
都市部・海外・インバウンドなど新販路を狙う。 地元出荷に留まらず、新しい顧客層や市場を狙う計画は評価されやすくなります。
ウェブ費の上限を前提に経費を組む。 ホームページのウェブサイト関連費は交付申請額の4分の1・最大50万円までで、単独申請もできません。広報費や機械装置費と組み合わせて全体を設計します。
持続化補助金の直近採択率
正直に申し上げると、直近の持続化補助金の難易度は上がっており、採択結果は非常に厳しいものとなっております。
たとえば第16回締切分の結果は、7371件の申請のうち2741件、採択率は37.2%でした。これは前回(第15回)の採択率41.8%を下回り、過去最低となる事業者にとって非常に厳しい結果となりました。
ただし上の数字が示すとおり、公募回によって40%を切ることもあれば50%を超えることもあります。最終的に明暗を分けているのは事業計画書の完成度です。
記事:【令和8年度】補助金採択率が急減!原因と成功の秘訣を解説
よくある質問
漁業でも持続化補助金は使えますか?
使えます。漁業も対象で、個人事業主の漁業者も申請できます。
どんな取組が採択されていますか?
鮮度保持の設備投資による出荷時期・出荷先の拡大や、多言語サイトによるインバウンド客の獲得など、品質と情報発信を強化して新販路を開く取組が採択されています。
補助金額の上限と補助率はどのくらいですか?
一般型・通常枠の場合、補助上限は50万円、補助率は3分の2が基本です。賃上げなどの特例や創業型では上限が異なります。公募回によって条件が変わるため、申請前に最新の公募要領で確認してください。
鮮度保持の冷却器などの設備に使えますか?
販路開拓につながることを説明できれば、機械装置等費として対象になり得ます。出荷時期や出荷先の拡大にどうつながるかを計画書で示すことがポイントです。
ホームページやパンフレットの多言語化に使えますか?
ホームページはウェブサイト関連費(上限は交付申請額の4分の1・最大50万円、単独申請不可)、パンフレットは広報費として対象です。
漁具や船の設備の購入に使えますか?
販路開拓との結びつきが説明できれば対象になり得ますが、通常の操業設備の更新は対象になりにくいです。
水揚げした魚の加工品開発に使えますか?
新商品開発費として対象になり得ます。試作で終わらず、販路開拓につながる計画であることが求められます。
商工会議所・商工会の会員でないと申請できませんか?
会員でなくても申請できます。 ただし申請には商工会議所または商工会が発行する事業支援計画書(様式4)が必須です。発行には日数がかかるため、締切から逆算して早めに相談してください。
補助金はいつ受け取れますか?
後払い(精算払い)です。 採択後すぐに入金されるわけではなく、交付決定を受けてから補助事業を実施し、実績報告を提出して金額が確定した後に振り込まれます。先に自己資金で支払う必要がある点に注意してください。
関連する業種の採択事例
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- 運輸業の持続化補助金|採択事例4選
- 整骨院・福祉業の持続化補助金|採択事例3選
- 不動産業の持続化補助金|活用事例
漁業の持続化補助金について、自社の水産物をどう高付加価値化して新しい販路につなげるか、どの経費区分で組むべきか迷う場合は、計画段階からの伴走支援をご利用ください。240社以上の支援実績をもとに、採択される事業計画づくりをお手伝いします。
出典・参考資料
- 小規模事業者持続化補助金<一般型>補助金事務局(商工会議所地区)
- 小規模事業者持続化補助金について(中小企業庁)
- 補助金公募情報一覧(中小企業庁)
※本記事は上記公式資料をもとに作成しています。制度内容は変更される場合があります。申請の際は必ず最新の公募要領をご確認ください。
免責事項・ご注意
- 本記事について
本記事は、中小企業庁・補助金事務局が公表している公式資料をもとに、情報提供を目的として作成しています。特定の補助金申請の採択を保証・推奨するものではありません。 - 制度変更について
本補助金は公募回(現在:第19回)ごとに要件・補助率・スケジュール・申請枠が変更される場合があります。また申請窓口は商工会地区と商工会議所地区で異なります(事業支援計画書(様式4)の発行先が異なるため、事前に自社の管轄を必ずご確認ください)。 - 申請の際は必ずご確認ください
商工会議所地区 補助金事務局サイトに掲載の最新公募要領
管轄の商工会または商工会議所への事前相談(様式4の発行受付締切に注意)
認定支援機関または中小企業診断士等の専門家への相談 - 損害免責
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PROFILE

- 中小企業診断士 / 資金調達・補助金コンサルタント / 外資系戦略コンサルティングファーム出身。独立後、事業再構築補助金・ものづくり補助金を中心に200社超の資金調達を支援し、採択率80%以上を継続して維持しています。補助金申請において最も難しいのは「書類を書くこと」ではなく、「審査員に刺さる事業計画を設計すること」です。戦略コンサルとしての経験を活かし、単なる申請代行ではなく、事業計画の立案から採択後の実行フェーズまでを一気通貫でサポートすることを強みとしています。これまでの支援先は製造業・小売業・サービス業など幅広く、初めての補助金申請から複数回採択の実績づくりまで対応しています。また、補助金メディアの執筆者として1,000本超の記事を執筆。最新の制度情報・審査傾向を常にアップデートしながら、読者と支援先の双方に正確な情報を届けることを使命としています。


