【2026年最新】農業・林業の持続化補助金|採択事例4件とブランド化のヒント
この記事の要点
農業・林業の事業者も、小規模事業者持続化補助金(以下、持続化補助金)を使えます。公開されている採択事例4件では、パッケージ・ブランディングが2件、ECサイトと広告・SNSが各1件でした。種苗代や肥料代などの生産コストは対象外で、作った産品を商品化して新しい顧客に売る取組みが対象です。

この記事の目次
農業・林業の事業者も、小規模事業者持続化補助金(以下、持続化補助金)を使えます。公開されている採択事例4件では、パッケージ・ブランディングが2件、ECサイトと広告・SNSが各1件でした。種苗代や肥料代などの生産コストは対象外で、作った産品を商品化して新しい顧客に売る取組みが対象です。
農家や林業者が小規模事業者持続化補助金を使うとき、何に投資して採択されているのか。この記事では、公開されている農業・林業の採択事例4選を取組内容ごとに整理し、この業種ならではの傾向と、採択につなげるための申請のポイントをまとめます。自社の販路開拓とブランド化のヒントとして役立ててください。
(事例の一次出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ。本記事は同事例をもとにレオン・ストラテジーが分類・分析したものです)
小規模事業者持続化補助金とは?
持続化補助金は、ものづくり補助金・新事業進出補助金・デジタル化・AI導入補助金と並ぶ代表的な補助金です(ものづくり補助金と新事業進出補助金は、現在は新事業進出・ものづくり補助金に統合されています)。公募は回ごとに受付期間が決まっています。
補助上限額は50万円で、特例を満たすと上がります。インボイス特例で最大100万円、賃金引上げ特例で最大200万円、両特例を満たすと最大250万円です。補助率は2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4)です。
持続化補助金は、小規模事業者が自己負担を抑えて新しい販路づくりに取り組める制度です。第20回の申請受付は2026年11月5日から12月15日17:00までです1。
農業・林業の採択事例にはどんな傾向がある?
農業・林業の採択事例4件で最も多いのは、パッケージ・ブランディングの取組み(2件)です。取組内容で分類した内訳は次のとおりです。
| 取組カテゴリー | 件数 |
|---|---|
| パッケージ・ブランディング | 2 |
| ECサイト・ネット販売 | 1 |
| 広告・SNS・Web広告 | 1 |
| 合計 | 4 |
ここに農業・林業ならではの特徴が出ています。最も多いのはパッケージ・ブランディングで、ECや広告がそれに続きます。これらに共通するのは、「作った農産物を、そのまま売るのではなく、商品としての付加価値を高めて新しい顧客に届ける」という狙いです。
農業・林業は、市場や農協への出荷では価格決定の主導権を持ちにくく、品質の高さが価格に反映されにくいという課題があります。採択事例の中心は、加工品の開発、ラベル・パッケージの刷新、ECによる直販です。どれも一次産品を高付加価値化して、自分で価格をつけられる販路をつくる取組です。
農業・林業で持続化補助金を使うなら、出発点は「自社の農産物や素材を、どう商品化・ブランド化して、どの新しい顧客に直接届けるか」です。これを計画書の中で具体的に描きます。
農業・林業の採択事例4件は何に使った?
公開されている農業・林業の採択事例4件は、鶏カレーのパッケージ、蜂蜜のラベル、いちごのEC・看板、米の新商品と展示会出品に補助金を使っています。
廃棄鶏を活かした加工品で新販路を開く|有限会社みずほファーム(パッケージ・ブランディング)
取組内容:廃棄される親鳥を有効活用し、卵との相性を追求した「京丹波鶏カレー」を開発。商品パッケージをデザインし、販路開拓のチラシやポスターを作成して販売店に配布した。
成果:自社直売所の目立つ場所に置いたところ評判が良く、販売員が自信を持って勧める商品に。すぐに道の駅やスーパー、生協との取引が決まった。
事業者の声:卵を産まなくなった親鳥を費用をかけて処分していたことに疑問があった。小麦粉や油脂に極力頼らず試行錯誤して納得いくカレーができ、肝心の販路開拓では補助金でパッケージ・チラシ・ポスターを作成できた。
価格とラベルの見直しでブランド力を高める|大谷養蜂場(パッケージ・ブランディング)
取組内容:品質の高い天然蜂蜜を生産しているのに、他社より安い価格設定で品質を疑われる心配があった。そこで価格設定の見直しと商品ラベルの変更で、ブランド力向上を図った。品質を伝えるリーフレットも作成した。
成果:価格の適正化とラベル変更により商品価値が再認識され、ブランド力が向上。新規顧客が10件増加し、自社ホームページや電話による直接販売の売上が前年比1割増加した。
事業者の声:事業計画を作成して事業状況を振り返ることができ、課題や今後の方向性が明確になった。今後も商談会など販路開拓の支援を受けていきたい。
EC・看板・新パッケージでBtoC直販を広げる|一苺一笑(EC・ネット販売)
取組内容:いちご狩りなどの直接販売の機会を捉えてBtoCの直販増加を図るため、農場に視認性とデザイン性に優れた看板を設置。WebサイトにEC機能を盛り込み、売れ筋商品をランキング表示。さらに2パック入りという新しい規格のパッケージと袋デザインを試作した。
成果:看板で観光客と地元住民にPRでき、口コミ効果も相まって直販が前年比20%増加。パックを工夫していちごがつぶれないようにした結果、タイ・マレーシア・シンガポールへの海外試験販売も決定した。
事業者の声:補助金を活用したパッケージ開発により海外展開が可能となった。直販による事業拡大と来店者数増で雇用を増やし、地域発展のために本補助事業の成果を次に繋げていきたい。
ターゲットを絞った新商品で米の新規需要を創出|有限会社ささかみやまびこ農産(広告・SNS)
取組内容:米消費量の少ない若い女性をターゲットにした新製品「MY(米)WEEK!」を開発。6パターンの自社米にそれぞれの炊き方レシピを添え、誰でもおいしく炊けるよう工夫した。土鍋を用いたレシピで「インスタ映え」を意識し、女性層による拡散を狙った。
成果:「フードメッセin新潟」に出品し、百貨店や専門店との商談機会を得て3件の受注を獲得。各種メディアからも注目され、東京での試食会では地元テレビ局から密着取材を受けた。
事業者の声:米消費量の減少が続くなか、主製品である米をもっと食べてもらうことが課題。本事業を通じて、自社の米のおいしさと地域の良さをさらに発信していきたい。
出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ(4件とも)
農業・林業が採択されるには何を書けばよい?
審査で見られるのは生産ではなく販路開拓です。誰に・どう商品化して・どこで売るかを、計画書の中心に置きます。この業種で外しやすい点と対策は次の4つです。
「作る」から「売る」へ視点を移す。 農業・林業の計画は栽培・生産の話に偏りがちですが、審査で見られるのは販路開拓です。作った産品を、誰に・どう商品化して・どこで売るのかを具体的に描きます。
高付加価値化のストーリーを示す。 加工品開発やパッケージ刷新は、なぜその商品が選ばれ、どれだけ単価や取引先が増えるのかまで描くと評価されます。
ターゲットを明確にする。 「広く売りたい」ではなく、若い女性・贈答需要・海外など、狙う顧客層を絞ることで計画の説得力が増します。
ウェブ費の上限を前提に経費を組む。 ECやホームページのウェブサイト関連費は補助金交付申請額で30万円(税込)までで、単独申請もできません2。広報費や新商品開発費と組み合わせて全体を設計します。
持続化補助金の過去の採択率
過去の公募回では、採択率が4割前後まで下がった回もありました。
たとえば第16回締切分の結果は、7371件の申請のうち2741件が採択され、採択率は37.2%でした。前回(第15回)の採択率41.8%を下回りました。
採択率は公募回によって変わるため、最新回の結果は事務局の公表資料で確かめてください。最終的に明暗を分けているのは事業計画書の完成度です。
よくある質問
農家でも持続化補助金は使えますか?
使えます。農業・林業も対象で、個人事業主の農家や農業生産法人も申請できます。
農産物の加工品開発に使えますか?
新商品開発費やパッケージの広報費として対象になり得ます。試作で終わらず、販路開拓につながる計画であることが求められます。
補助金額の上限と補助率はどのくらいですか?
一般型・通常枠の場合、補助上限は50万円、補助率は3分の2が基本です。賃上げなどの特例や創業型では上限が異なります。公募回によって条件が変わるため、申請前に最新の公募要領で確認してください。
ECサイトや直売所の看板に使えますか?
ECサイトはウェブサイト関連費として、看板は広報費として対象になり得ます。ウェブサイト関連費は補助金交付申請額で30万円(税込)までで、単独では申請できません。2
農機具の購入に使えますか?
販路開拓につながることを説明できれば対象になり得ますが、通常の生産設備の更新は対象になりにくいです。
パッケージやラベルのデザイン費は対象ですか?
広報費として対象です。商品価値を伝え、販路開拓につながるパッケージ・ラベルが該当します。
種苗代や肥料代などの生産コストは対象になりますか?
通常の生産コストは対象外です。 補助の対象は、販路開拓や新商品の試作開発などの経費に限られます。
商工会議所・商工会の会員でないと申請できませんか?
会員でなくても申請できます。 ただし申請には商工会議所または商工会が発行する事業支援計画書(様式4)が必須です。発行には日数がかかるため、締切から逆算して早めに相談してください。
補助金はいつ受け取れますか?
後払い(精算払い)です。 採択後すぐに入金されるわけではなく、交付決定を受けてから補助事業を実施し、実績報告を提出して金額が確定した後に振り込まれます。先に自己資金で支払う必要がある点に注意してください。
ほかの業種は何に使った?採択事例の一覧
自社の業態に近い業種の事例もあわせてご覧ください。
- 製造業の持続化補助金|採択事例113選
- 卸売・小売業の持続化補助金|採択事例72選
- 飲食店・宿泊業の持続化補助金|採択事例53選
- 建設業の持続化補助金|採択事例20選
- 美容室・サロンの持続化補助金|採択事例20選
- 専門・技術サービス業の持続化補助金|採択事例14選
- 自動車整備業の持続化補助金|採択事例13選
- 情報通信業(IT)の持続化補助金|採択事例6選
- 学習塾・教育業の持続化補助金|採択事例6選
- 運輸業の持続化補助金|採択事例4選
- 整骨院・福祉業の持続化補助金|採択事例3選
- 漁業の持続化補助金|採択事例2選
- 不動産業の持続化補助金|活用事例
自社の農産物をどう商品化・ブランド化して販路につなげるか、どの経費区分で組むかに迷う場合は、計画段階からの伴走支援をご利用ください。事業計画の検討・助言をします。
出典・参考資料
- 小規模事業者持続化補助金<一般型>補助金事務局(商工会議所地区)
- 小規模事業者持続化補助金について(中小企業庁)
- 補助金公募情報一覧(中小企業庁)
※本記事は上記公式資料をもとに作成しています。制度内容は変更される場合があります。申請の際は必ず最新の公募要領をご確認ください。
免責事項・ご注意
- 本記事について
本記事は、中小企業庁・補助金事務局が公表している公式資料をもとに、情報提供を目的として作成しています。特定の補助金申請の採択を保証・推奨するものではありません。 - 制度変更について
本補助金は公募回(現在:第20回)ごとに要件・補助率・スケジュール・申請枠が変更される場合があります。また申請窓口は商工会地区と商工会議所地区で異なります(事業支援計画書(様式4)の発行先が異なるため、事前に自社の管轄を必ずご確認ください)。 - 申請の際は必ずご確認ください
商工会議所地区 補助金事務局サイトに掲載の最新公募要領
管轄の商工会または商工会議所への事前相談(様式4の発行受付締切に注意)
認定支援機関などの専門家への相談 - 損害免責
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中小企業診断士 神谷 恒一が内容を確認しました(2026年10月13日)
出典(2件)
- 持続化補助金 通常枠 第20回 公募要領 p.3『事業概要』、p.7『6.(1) 補助率、補助上限額』
- 持続化補助金 通常枠 第20回 公募要領 p.14『7.(3)③ ウェブサイト関連費』
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