農家や林業者が小規模事業者持続化補助金を使うとき、何に投資して採択されているのか。この記事では、公開されている農業・林業の採択事例4選を取組内容ごとに整理し、この業種ならではの傾向と、採択につなげるための申請のポイントをまとめます。自社の販路開拓とブランド化のヒントとして役立ててください。
(事例の一次出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ。本記事は同事例をもとにレオン・ストラテジーが分類・分析したものです)
目次
小規模事業者持続化補助金とは?
持続化補助金は、ものづくり補助金・新事業進出補助金・デジタル化・AI導入補助金と並び、通年で公募が行われている補助金です。年3〜4回の公募サイクルで実施されており、申請のチャンスが複数あります。
補助上限額は最大250万円(インボイス・賃上げ等の特例要件を満たした場合)、補助率は2/3〜最大3/4。小規模事業者にとって、自己負担を抑えて新しい挑戦ができる大きなチャンスです。令和8年度の予算規模は総額3,400億円にも上り、毎年約3万件以上の応募があります。
詳しくはこちら:【2026年】小規模事業者持続化補助金の最新情報を解説!
農業・林業の採択事例にみる傾向
農業・林業4件を取組内容で分類すると、内訳は次のとおりです。
| 取組カテゴリー | 件数 |
|---|---|
| パッケージ・ブランディング | 2 |
| ECサイト・ネット販売 | 1 |
| 広告・SNS・Web広告 | 1 |
| 合計 | 4 |
ここに農業・林業ならではの特徴が出ています。最も多いのはパッケージ・ブランディングで、ECや広告がそれに続きます。これらに共通するのは、**「作った農産物を、そのまま売るのではなく、商品としての付加価値を高めて新しい顧客に届ける」**という狙いです。
農業・林業は、市場や農協への出荷では価格決定の主導権を持ちにくく、品質の高さが価格に反映されにくいという課題があります。採択事例を見ると、加工品の開発、ラベル・パッケージの刷新、ECによる直販など、一次産品を高付加価値化して、自分で価格をつけられる販路をつくる取組が中心になっています。
つまり農業・林業で持続化補助金を活かすなら、**「自社の農産物や素材を、どう商品化・ブランド化して、どの新しい顧客に直接届けるか」**を具体的に描くことが出発点になります。
採択事例(全4件)
公開されている農業・林業の採択事例を、全件、公開情報をもとに紹介します。
廃棄鶏を活かした加工品で新販路を開く|有限会社みずほファーム(パッケージ・ブランディング)
取組内容:廃棄される親鳥を有効活用し、卵との相性を追求した「京丹波鶏カレー」を開発。商品パッケージをデザインし、販路開拓のチラシやポスターを作成して販売店に配布した。
成果:自社直売所の目立つ場所に置いたところ評判が良く、販売員が自信を持って勧める商品に。すぐに道の駅やスーパー、生協との取引が決まった。
事業者の声:卵を産まなくなった親鳥を費用をかけて処分していたことに疑問があった。小麦粉や油脂に極力頼らず試行錯誤して納得いくカレーができ、肝心の販路開拓では補助金でパッケージ・チラシ・ポスターを作成できた。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
価格とラベルの見直しでブランド力を高める|大谷養蜂場(パッケージ・ブランディング)
取組内容:品質の高い天然蜂蜜を生産しているにもかかわらず、他社より安価な価格設定で品質を疑われる心配があったため、価格設定の見直しと商品ラベルの変更でブランド力向上を図った。品質を伝えるリーフレットも作成した。
成果:価格の適正化とラベル変更により商品価値が再認識され、ブランド力が向上。新規顧客が10件増加し、自社ホームページや電話による直接販売の売上が前年比1割増加した。
事業者の声:事業計画を作成して事業状況を振り返ることができ、課題や今後の方向性が明確になった。今後も商談会など販路開拓の支援を受けていきたい。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
EC・看板・新パッケージでBtoC直販を広げる|一苺一笑(EC・ネット販売)
取組内容:いちご狩りなどの直接販売の機会を捉えてBtoCの直販増加を図るため、農場に視認性とデザイン性に優れた看板を設置。WebサイトにEC機能を盛り込み、売れ筋商品をランキング表示。さらに2パック入りという新しい規格のパッケージと袋デザインを試作した。
成果:看板で観光客と地元住民にPRでき、口コミ効果も相まって直販が前年比20%増加。パックを工夫していちごがつぶれないようにした結果、タイ・マレーシア・シンガポールへの海外試験販売も決定した。
事業者の声:補助金を活用したパッケージ開発により海外展開が可能となった。直販による事業拡大と来店者数増で雇用を増やし、地域発展のために本補助事業の成果を次に繋げていきたい。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
ターゲットを絞った新商品で米の新規需要を創出|有限会社ささかみやまびこ農産(広告・SNS)
取組内容:米消費量の少ない若い女性をターゲットにした新製品「MY(米)WEEK!」を開発。6パターンの自社米にそれぞれの炊き方レシピを添え、誰でもおいしく炊けるよう工夫した。土鍋を用いたレシピで「インスタ映え」を意識し、女性層による拡散を狙った。
成果:「フードメッセin新潟」に出品し、百貨店や専門店との商談機会を得て3件の受注を獲得。各種メディアからも注目され、東京での試食会では地元テレビ局から密着取材を受けた。
事業者の声:米消費量の減少が続くなか、主製品である米をもっと食べてもらうことが課題。本事業を通じて、自社の米のおいしさと地域の良さをさらに発信していきたい。
(出典:中小企業庁「ミラサポplus」事例ナビ)
農業・林業が採択されるための申請のポイント
事例から見えてくる、この業種特有の落とし穴と対策を整理します。
「作る」から「売る」へ視点を移す。 農業・林業の計画は栽培・生産の話に偏りがちですが、審査で見られるのは販路開拓です。作った産品を、誰に・どう商品化して・どこで売るのかを具体的に描きます。
高付加価値化のストーリーを示す。 加工品開発やパッケージ刷新は、なぜその商品が選ばれ、どれだけ単価や取引先が増えるのかまで描くと評価されます。
ターゲットを明確にする。 「広く売りたい」ではなく、若い女性・贈答需要・海外など、狙う顧客層を絞ることで計画の説得力が増します。
ウェブ費の上限を前提に経費を組む。 ECやホームページのウェブサイト関連費は交付申請額の4分の1・最大50万円までで、単独申請もできません。広報費や新商品開発費と組み合わせて全体を設計します。
持続化補助金の直近採択率
正直に申し上げると、直近の持続化補助金の難易度は上がっており、採択結果は非常に厳しいものとなっております。
たとえば第16回締切分の結果は、7371件の申請のうち2741件、採択率は37.2%でした。これは前回(第15回)の採択率41.8%を下回り、過去最低となる事業者にとって非常に厳しい結果となりました。
ただし上の数字が示すとおり、公募回によって40%を切ることもあれば50%を超えることもあります。最終的に明暗を分けているのは事業計画書の完成度です。
記事:【令和8年度】補助金採択率が急減!原因と成功の秘訣を解説
よくある質問
農家でも持続化補助金は使えますか?
使えます。農業・林業も対象で、個人事業主の農家や農業生産法人も申請できます。
農産物の加工品開発に使えますか?
新商品開発費やパッケージの広報費として対象になり得ます。試作で終わらず、販路開拓につながる計画であることが求められます。
補助金額の上限と補助率はどのくらいですか?
一般型・通常枠の場合、補助上限は50万円、補助率は3分の2が基本です。賃上げなどの特例や創業型では上限が異なります。公募回によって条件が変わるため、申請前に最新の公募要領で確認してください。
ECサイトや直売所の看板に使えますか?
ECサイトはウェブサイト関連費(上限は交付申請額の4分の1・最大50万円、単独申請不可)、看板は広報費として対象になり得ます。
農機具の購入に使えますか?
販路開拓につながることを説明できれば対象になり得ますが、通常の生産設備の更新は対象になりにくいです。
パッケージやラベルのデザイン費は対象ですか?
広報費として対象です。商品価値を伝え、販路開拓につながるパッケージ・ラベルが該当します。
種苗代や肥料代などの生産コストは対象になりますか?
通常の生産コストは対象外です。 補助の対象は、販路開拓や新商品の試作開発などの経費に限られます。
商工会議所・商工会の会員でないと申請できませんか?
会員でなくても申請できます。 ただし申請には商工会議所または商工会が発行する事業支援計画書(様式4)が必須です。発行には日数がかかるため、締切から逆算して早めに相談してください。
補助金はいつ受け取れますか?
後払い(精算払い)です。 採択後すぐに入金されるわけではなく、交付決定を受けてから補助事業を実施し、実績報告を提出して金額が確定した後に振り込まれます。先に自己資金で支払う必要がある点に注意してください。
関連する業種の採択事例
自社の業態に近い業種の事例もあわせてご覧ください。
- 製造業の持続化補助金|採択事例113選
- 卸売・小売業の持続化補助金|採択事例72選
- 飲食店・宿泊業の持続化補助金|採択事例53選
- 建設業の持続化補助金|採択事例20選
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- 学習塾・教育業の持続化補助金|採択事例6選
- 運輸業の持続化補助金|採択事例4選
- 整骨院・福祉業の持続化補助金|採択事例3選
- 漁業の持続化補助金|採択事例2選
- 不動産業の持続化補助金|活用事例
農業・林業の持続化補助金について、自社の農産物をどう商品化・ブランド化して新しい販路につなげるか、どの経費区分で組むべきか迷う場合は、計画段階からの伴走支援をご利用ください。240社以上の支援実績をもとに、採択される事業計画づくりをお手伝いします。
出典・参考資料
- 小規模事業者持続化補助金<一般型>補助金事務局(商工会議所地区)
- 小規模事業者持続化補助金について(中小企業庁)
- 補助金公募情報一覧(中小企業庁)
※本記事は上記公式資料をもとに作成しています。制度内容は変更される場合があります。申請の際は必ず最新の公募要領をご確認ください。
免責事項・ご注意
- 本記事について
本記事は、中小企業庁・補助金事務局が公表している公式資料をもとに、情報提供を目的として作成しています。特定の補助金申請の採択を保証・推奨するものではありません。 - 制度変更について
本補助金は公募回(現在:第19回)ごとに要件・補助率・スケジュール・申請枠が変更される場合があります。また申請窓口は商工会地区と商工会議所地区で異なります(事業支援計画書(様式4)の発行先が異なるため、事前に自社の管轄を必ずご確認ください)。 - 申請の際は必ずご確認ください
商工会議所地区 補助金事務局サイトに掲載の最新公募要領
管轄の商工会または商工会議所への事前相談(様式4の発行受付締切に注意)
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PROFILE

- 中小企業診断士 / 資金調達・補助金コンサルタント / 外資系戦略コンサルティングファーム出身。独立後、事業再構築補助金・ものづくり補助金を中心に200社超の資金調達を支援し、採択率80%以上を継続して維持しています。補助金申請において最も難しいのは「書類を書くこと」ではなく、「審査員に刺さる事業計画を設計すること」です。戦略コンサルとしての経験を活かし、単なる申請代行ではなく、事業計画の立案から採択後の実行フェーズまでを一気通貫でサポートすることを強みとしています。これまでの支援先は製造業・小売業・サービス業など幅広く、初めての補助金申請から複数回採択の実績づくりまで対応しています。また、補助金メディアの執筆者として1,000本超の記事を執筆。最新の制度情報・審査傾向を常にアップデートしながら、読者と支援先の双方に正確な情報を届けることを使命としています。


