ものづくり補助金平成26年度製造業東京都

水素脆化の発生を防止する電気亜鉛めっき技術の開発

有限会社朝日鍍金工場

この事例のポイント

  • 長時間の塩酸酸洗いが水素脆性発生の原因のひとつとなっているため、酸洗い時間を短縮する必要があった。
  • 従来の塩酸による酸洗いに代えて、スケール除去にショットブラスト装置を導入した。
  • ショットブラスト導入により塩酸酸洗いが不要になり、水素脆性の発生を未然に防ぐことができた。

事業者のプロフィール

事業者名有限会社朝日鍍金工場
所在地東京都 東京都江戸川区
業種金属製品製造業
技術分野表面処理
従業員数51人
資本金3,600万円
設立1960年

事業の背景

当社は大型製品、長物(7m)、重量物の電気めっき加工が可能な点を強みに、建築・自動車・電気部品に適用される部品の電気亜鉛めっきを手がけている。建築業界では建築後に水素脆性が原因とみられる事故が起きており、原因究明は行われてきたが製造加工時の対策は十分にできていなかった。近年、水素脆性現象を解明する発見があり、当社も電気亜鉛めっき工程を見直すことになった。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 品質・精度長時間の塩酸酸洗いが水素脆性発生の原因のひとつとなっているため、酸洗い時間を短縮する必要があった。
  • その他酸洗いでは排水処理など環境保全の取組みが必須となっていた。

やったこと

従来の塩酸による酸洗いに代えて、スケール除去にショットブラスト装置を導入した。ショットブラストは放射材と呼ばれる粒体を加工物に高速で衝突させる手法で、当社では約10年にわたる利用技術を蓄積していた。大きめの部材は治具でぶら下げ、四方八方から投射物を当ててスケールを削り取る。事前に小型被めっき材で除去テストを行って技術を確認した上で本格導入した。従来約200度で2〜6時間行っていたベーキング処理も、ショットブラストにより短縮できるようになった。

加工機ショットブラスト装置

事業の効果

ショットブラスト導入により塩酸酸洗いが不要になり、水素脆性の発生を未然に防ぐことができた。水を使わないため排水処理が必要なくなり、環境や経営への負荷も大きく軽減した。ベーキング後の自動冷却期間も不要になり、従来工法と比べ6〜10時間の加工時間を短縮するとともに、電気コストは約1/48に削減された。この納期短縮は他社との競争で大きな優位性となっている。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.9 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性67%
  • これまでの取組との一貫性3

    既存の小型ショットブラスト利用技術の蓄積(約10年)を生かしてスケール除去へ応用すると書かれ、過去の取組との一貫性がうかがえる。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    大型・長物のめっき対応や建築・自動車分野での強みは書かれるが、市場動向との関係は具体的に示されていない。

  • 課題の認識と解決4

    酸洗い時間の長さが水素脆性の原因となる課題を認識し、ショットブラスト導入で解決する実効的な取組として具体的に書かれている。

事業の実現可能性60%
  • 付加価値・賃上げの目標4

    電気コストを約1/48に削減し、ベーキング後の冷却期間も不要で6〜10時間の加工時間短縮と数値で示されている。ただし付加価値額や賃上げの目標は書かれていない。

  • 事業を進める体制3

    既存の小型装置での試験成功やノウハウの蓄積は書かれるが、人材や事務体制についての記述は薄い。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    水素脆化防止と納期短縮が優位性として示され、建築・自動車・電気部品の顧客や顧客の事前了解を得る運用まで書かれている。

  • 事業化までの道筋3

    小型装置でのテスト後に本格導入した段階や、2020年東京オリンピック向けの需要見込みは書かれるが、スケジュールの詳細は薄い。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性60%
  • 新しさ・高付加価値3

    亜鉛めっきが難しいとされた素材への対応を続けてきたと書かれるが、普及度や高価格化の具体的な数字は示されていない。

公的補助の必要性60%
  • 波及効果・雇用3

    建築物の水素脆性事故防止や2020年東京オリンピック向け大型建造物の需要対応が書かれ、社会的な意義がうかがえる。

  • 費用対効果4

    電気コスト約1/48削減や6〜10時間の工程短縮、排水処理不要など、投資に対する効果が数値で具体的に示されている。

  • イノベーションへの貢献2

    ショットブラストという既存技術の応用が中心で、先端的なデジタル技術やビジネスモデル構築は書かれていない。

政策面40%
  • 成長分野への進出1

    公開されている事例からは読み取れません。

  • 地域経済への波及3

    東京都内のめっき工場という立地に触れ、オリンピック関連の需要増が見込まれると書かれているが、雇用創出などの記述は薄い。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

顧客にはめっきの前処理をショットブラストで行う事前了解を得ており、客先の反応も良く利用拡大が見込まれる。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて大型建築物の需要が高まり、顧客ニーズの増加が見込まれている。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成26年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。