ものづくり補助金平成26年度製造業東京都

熱処理活用の金型品質改善

富士熱錬工業株式会社

成果台車式熱処理炉の導入で燃費が25%向上した

この事例のポイント

  • 非常に高い技術力が要求される特殊材の大型部品の熱処理を行うには、既存の熱処理加熱炉の老朽化が著しく、炉内の温度を均一に保つことが難しかった。
  • 新潟ファーネス工業製の台車式熱処理炉を導入し、14カ所に温度センサーを設置して炉内の温度分布を検証した。
  • 台車式熱処理炉の導入で燃費が25%向上した。台車式熱処理炉の導入により、建設機械メーカーのセンターフレームリングの国内調達の目処が立った。

事業者のプロフィール

事業者名富士熱錬工業株式会社
所在地東京都 大田区
業種金属製品製造業
技術分野材料製造プロセス
従業員数8人
資本金1,000万円
設立1949年

事業の背景

当社は昭和24年の創業以来金属熱処理加工に従事してきたが、平成17年に同業の田村工業グループに参画した。当社が所有する最大の熱処理加熱炉は老朽化が著しく、設備更新は長年の課題だったが、導入に踏み出せなかった。大手建設機械メーカーから、海外調達していたセンターフレームリングの国内調達について、熱処理の試作依頼があった。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 生産能力非常に高い技術力が要求される特殊材の大型部品の熱処理を行うには、既存の熱処理加熱炉の老朽化が著しく、炉内の温度を均一に保つことが難しかった。
  • 品質・精度熱処理炉の温度分布が均一でないと、部品に歪みが生じたり強度にばらつきができたりし、品質に大きく影響する。
  • 新製品・新技術建設機械メーカーのセンターフレームリングは海外から調達されており、輸送費や管理費などコストが多岐にわたり、納期も時間を要していた。

やったこと

新潟ファーネス工業製の台車式熱処理炉を導入し、14カ所に温度センサーを設置して炉内の温度分布を検証した。550℃、870℃、1,020℃の3水準で加熱したところ、目標の±10℃以内に保つことができた。加熱した金属片の寸法公差は外径・内径が±2mm以内、高さは±0.8mm以内に制御できた。センターフレームリングを6等分したテストピースで事前テストを行い、920℃で180分加熱後に水槽で焼入れし、3つの温度で焼戻しを行って引張試験と−50℃での衝撃試験を実施し、最適な温度を検証した。実際のセンターフレームリングで920℃5時間以上の加熱と30分の水槽焼入れ、580℃10時間以上の焼戻しを行い、表面硬さと寸法を確認して試作品を納品した。

加工機台車式熱処理炉(新潟ファーネス工業製)

新しい製品・サービス:台車式熱処理炉を用いた大型部品の熱処理によるセンターフレームリングの国内調達

事業の効果

  • 台車式熱処理炉の導入で燃費が25%向上した

台車式熱処理炉の導入により、建設機械メーカーのセンターフレームリングの国内調達の目処が立った。扉のシール性が高く放熱が少ないことで燃費が25%向上し、二酸化炭素排出量も削減されて環境にも貢献している。従来設備にかかっていたメンテナンス費も軽減され、ランニングコストは大幅に削減できた。また今回の経験が自動車業界や医療機器業界からの受注に活かされている。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均3.3 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性73%
  • これまでの取組との一貫性3

    過去の金属熱処理の取組や同業グループへの参画が書かれ、経営上の位置づけは読み取れるが、経営戦略として明示された記述は薄い。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    海外調達のコストと納期の問題、国内では1000kg以上の部品に対応できる熱処理専業者が少ないことが書かれ、強みが具体的に読み取れる。

  • 課題の認識と解決4

    老朽化した炉による温度ばらつきを課題として認識し、台車式熱処理炉導入で±10℃以内を実現したと具体的な数値で書かれている。

事業の実現可能性64%
  • 付加価値・賃上げの目標4

    燃費25%向上や燃料費の10年で5割強の上昇など数値目標に近い実績が書かれるが、付加価値額や賃上げの目標値は書かれていない。

  • 事業を進める体制3

    田村工業グループの4法人・10工場やメンテナンス部門、治具の自社製作など体制の一端は書かれるが、補助事業の遂行体制として具体的な記述は薄い。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    建機メーカーからの依頼で国内調達を実現し、要求品質を満たした唯一の試作品納品など、選ばれる理由が具体的に書かれている。

  • 事業化までの道筋4

    1年以上の試作と事前テスト、温度条件の検証、スケジュールに沿った実証試験など、課題解決の進め方が具体的に書かれている。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性60%
  • 新しさ・高付加価値3

    1000kg以上の大型部品を対応できる熱処理専業者は国内で少ないと書かれ、高水準の技術分野であることがうかがえるが、高価格化の数値は書かれていない。

公的補助の必要性73%
  • 波及効果・雇用4

    海外調達からの国内回帰、建機メーカーの国内調達の目処、医療機器・自動車業界への展開など、経済波及の具体的な内容が書かれている。

  • 費用対効果4

    燃費25%向上、CO2削減、メンテナンス費軽減、ランニングコスト大幅削減など費用対効果を示す事実が書かれている。

  • イノベーションへの貢献3

    台車式炉や温度管理の改善は書かれるが、デジタル技術やサプライチェーンのイノベーションへの貢献は明示されていない。

政策面50%
  • 成長分野への進出2

    医療機器業界からの引き合いや自動車業界への展開がうかがえるが、日本経済の構造転換に資する記述は明示されていない。

  • 地域経済への波及3

    大田区の企業であることや大量受注への対応が書かれるが、地域の特性を活かした付加価値や雇用創出の記述は薄い。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

センターフレームリングの量産は建設機械業界の低迷により未実現だが、今回の経験を活かし自動車業界からの大量受注に対応できるようになった。医療機器業界からの引き合いもあり、MRI部品の残留磁気除去の試作段階で今後の受注が期待されている。

  • 目標:ここ10年で5割強上昇していた燃料費の問題

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成26年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。