ものづくり補助金平成26年度製造業京都府

業界の常識を覆す、型紙によるオンデマンドの輪転式エンボス加工

株式会社いちはら

成果型紙エンボスロールの作製費用 500万円→1万円

この事例のポイント

  • エンボス加工では柄ごとに金属製エンボス型彫刻ロールが必要で、製作に最短2ヶ月ほどかかるためオンデマンドに対応した多品種少量生産が困難だった。
  • 新たな機巧による専用小型加圧機を特注で導入し、「型紙エンボスロール」による加工方法に取り組んだ。
  • 型紙エンボスロールの作製費用 500万円→1万円。オンデマンドに対応できる多品種小ロット生産が可能になった。

事業者のプロフィール

事業者名株式会社いちはら
所在地京都府 京都市
業種パルプ・紙・紙加工品製造業
技術分野機械制御,製造環境
従業員数13人
資本金1億円
設立1997年

事業の背景

当社は明治末に布製の伝票背表紙や出席簿の代替品としてクロス紙を製作したことに始まり、現在は壁紙、襖紙、パッケージ用紙などの紙類に、しわ加工などの独特な風合いを出す加工を行っている。基幹技術のエンボス加工は顧客から高い評価を得ている。一方で寺社の壁紙や襖は改装間隔が50年と非常に長く、新たな顧客層の開拓が必要となっていた。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 生産能力エンボス加工では柄ごとに金属製エンボス型彫刻ロールが必要で、製作に最短2ヶ月ほどかかるためオンデマンドに対応した多品種少量生産が困難だった。
  • コスト・採算金属製エンボス型彫刻ロールの製作には500万円ほどかかり、デザインごとに高額なロールを作る既存のビジネスモデルは成立しにくかった。
  • コスト・採算加工中は1トンを超えるロールを大型モーターで持ち上げ続け、加熱加圧に大量の電力を要するため、製造コストが価格に影響していた。
  • 人手・技能熟練技術者が高齢化し、現有設備を使いこなせるのは二人のみで、技術習得には少なくとも10年かかるため早急な技術承継が必要だった。
  • 人手・技能上下のロール交換は重量が1トンを超える危険な作業で、上段は3名で約4時間、下段は3名で約6時間かかり、他部署からの応援も必要で負担が大きかった。
  • 販路・情報発信寺社の壁紙や襖を主要なエンドユーザーの一つとしていたが改装間隔が50年と長く、新たな顧客層の開拓が必要だった。エンボス加工には好反応があったものの価格面で苦戦していた。

やったこと

新たな機巧による専用小型加圧機を特注で導入し、「型紙エンボスロール」による加工方法に取り組んだ。型紙エンボスロールは、ユーザーが要求するデザイン柄に切り抜かれた型紙を無地のエンボスロールに貼りつけたものである。新しい加圧機は大型モーターでロールを昇降させず、上下のロールの間隙を調整して加圧する方式とした。これにより、柄ごとに金属製ロールを製作する必要がなくなり、電力の使用も抑えられる。

加工機新たな機巧による専用小型加圧機

新しい製品・サービス:従来の設備では使用に制約があった布やフェイクレザー(合成皮革)などの素材にもエンボス加工ができるようになった。型紙エンボスロールにより安価で短納期の製造が可能になり、試作や商品開発に取り組みやすくなった。

事業の効果

  • 型紙エンボスロールの作製費用 500万円→1万円

オンデマンドに対応できる多品種小ロット生産が可能になった。型紙エンボスロールにより製作費が大幅に抑えられ、上下ロールの間隙調整による加圧で大型モーターや大量の電力が不要になり、製造コストの削減につながった。設備の操作性が向上し、軽量化や構造の単純化でロール交換も簡易になったため、熟練者でなくても作業でき技術承継の基盤が整った。布やフェイクレザーなど新たな素材にも加工でき、試作や商品開発が容易になった。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.6 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性67%
  • これまでの取組との一貫性3

    事例は既存のエンボス加工事業の延長で、主要エンドユーザーや基幹技術に言及するが、経営戦略上の位置づけは明示されていない。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    顧客ニーズの多様化や嗜好の変化が早いこと、寺社の改装間隔が50年と長いことに触れるが、自社の強み・弱みの分析は具体的に書かれていない。

  • 課題の認識と解決4

    現有設備では1本500万円、製作2か月以上、熟練者2人などの課題を具体的に挙げ、型紙方式で型代を約1万円に抑える解決策を示している。

事業の実現可能性52%
  • 付加価値・賃上げの目標2

    製造コスト削減や販路拡大は述べられているが、付加価値額や賃上げの目標値は書かれていない。

  • 事業を進める体制3

    技術承継や熟練者育成の必要性に触れるが、人材計画や事務処理体制の具体的な記述は薄い。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    オンデマンド多品種少量生産、短納期、試作需要などの価値と、寺社・建材・アパレル等の顧客層が示されている。

  • 事業化までの道筋3

    展示会出展やホームページ充実、簡易な発注方式の整備を予定と書かれるが、時期や具体的なスケジュールは示されていない。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    型紙によるオンデマンドのエンボス加工は従来の金属ロール方式と異なる方法で、布やフェイクレザーなど新素材への適用を示す。

公的補助の必要性47%
  • 波及効果・雇用2

    地域の伝統的な寺社の改装需要に触れるが、雇用創出や波及効果など国が補助する積極的理由は書かれていない。

  • 費用対効果3

    製造コストの削減や電力量の抑制に言及するが、補助金投入額に対する付加価値増加の数値は示されていない。

  • イノベーションへの貢献2

    型紙エンボスという新方式は示されるが、デジタル技術の活用やサプライチェーンへの貢献は明確に書かれていない。

政策面30%
  • 成長分野への進出1

    公開されている事例からは読み取れません。

  • 地域経済への波及2

    京都の企業であることはうかがえるが、地域特性を活かした雇用や地域経済成長への言及は乏しい。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

従来の建材やパッケージ分野での拡販や潜在需要の掘り起こしが期待でき、問い合わせのあるアパレルや自動車シートなど新たな販路の拡大も期待される。エンボス加工による新たな魅力の発信が課題であり、展示会への出展、ホームページの充実、試作も含めた簡易で分かりやすい発注方式の整備を行う予定である。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成26年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。