ものづくり補助金平成27年度宿泊業、飲食サービス業京都府

急速冷凍技術の導入による旅館業の収益構造の改善

有限会社炭平旅館

成果5年後に5パーセントの料理原価削減を目指した。

この事例のポイント

  • 鮮魚などの地元食材は港や漁船が小規模で水揚げが不安定なため、他地域から仕入れることもあり、地元食材だけで賄う地産地消が困難である。
  • 最先端のプロトン凍結機及びプロトン解凍機、並びに超低温冷凍庫などを導入し、食材や料理を保存できる体制を整えた。
  • 5年後に5パーセントの料理原価削減を目指した。急速冷凍技術により価格変動の大きい地魚や鮮魚を仕入れ値の安いタイミングで大量購入できるようになり、料理原価の低減と食材…

事業者のプロフィール

事業者名有限会社炭平旅館
所在地京都府 京丹後市
業種宿泊業
従業員数64人
資本金2,600万円
設立1952年

事業の背景

京丹後・間人で創業150年の旅館で、地元産品を活かした海鮮料理と、全室オーシャンビューの客室や貸切露天風呂などプライベート性の高い老舗旅館を経営している。近年は城崎温泉街で別邸、スイーツ店を開業するなど事業多角化を進めている。地方の旅館業は水揚げ量に応じた価格変動による原価高騰と料理人の雇用難に直面していた。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 生産能力鮮魚などの地元食材は港や漁船が小規模で水揚げが不安定なため、他地域から仕入れることもあり、地元食材だけで賄う地産地消が困難である。
  • コスト・採算魚種によっては漁獲高が年々減少し相場の乱高下が著しく、料理原価の高騰が利益を圧迫している。
  • 人手・技能地方では多品種の懐石料理をつくる専門調理スタッフの採用が極めて困難で、採用できても人件費が高く、専門料理人に頼る製造プロセスのため生産性を上げにくい。

やったこと

最先端のプロトン凍結機及びプロトン解凍機、並びに超低温冷凍庫などを導入し、食材や料理を保存できる体制を整えた。急速冷凍により食材の細胞破壊と旨味の流出を抑え、解凍時には冷凍前の新鮮な状態を維持できるようにした。冷凍・解凍のテストを繰り返す中で冷凍焼けや酸化、臭いなどの品質問題が生じたため、真空保存などの別技術も加えて試行錯誤し、2〜3年がかりで安定した品質の食材を提供できるまでにした。料理人が事前にまとめて調理したものを急速冷凍保存し、パートスタッフが必要に応じて解凍・盛り付けを行う形に製造工程を効率化した。

加工機プロトン凍結機
加工機プロトン解凍機
その他超低温冷凍庫
加工機急速冷凍設備機器一式

新しい製品・サービス:当社独自の基準で厳選した最高級の蟹「はしうど蟹」(商標登録済)をブランド食材・料理として提供している。

事業の効果

  • 5年後に5パーセントの料理原価削減を目指した。
  • 地元食材使用比率80パーセントの達成を目指した。

急速冷凍技術により価格変動の大きい地魚や鮮魚を仕入れ値の安いタイミングで大量購入できるようになり、料理原価の低減と食材の安定確保を両立させようとしている。パートスタッフ主体の効率的な調理場運営により収益が改善し、顧客の高級食材ニーズにも応えられるようになった。顧客満足度の向上は客単価のアップにつながり、利益率も向上した。当初の目標達成に加え、冷凍技術のノウハウを蓄積し、生鮮食品料理の開発・提供に幅ができた。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均3.4 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性80%
  • これまでの取組との一貫性3

    創業150年の旅館経営や別邸・スイーツ店による事業多角化は書かれているが、本事業との連続性は間接的にしか読み取れない。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    水揚げ量の変動や魚種ごとの漁獲減少など外部環境を踏まえ、「間人がに」ブランドという強みを活かす内容であることが読み取れる。

  • 課題の認識と解決5

    料理原価の高騰と料理人の雇用難を課題として明示し、5年後に料理原価5%削減、地元食材使用比率80%という数値目標で解決を図っている。

事業の実現可能性68%
  • 付加価値・賃上げの目標4

    料理原価5%削減と地元食材使用比率80%の数値目標が示され、現在は当初目標を達成したと記載されている。

  • 事業を進める体制3

    料理人とパートスタッフの業務分担や、2~3年かけて品質を安定させた経緯は書かれているが、体制の詳細は薄い。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    ブランド食材「はしうど蟹」や地元魚介の品質向上、メディア掲載や旅行サイトの受賞など、選ばれる理由が具体的に書かれている。

  • 事業化までの道筋4

    冷凍・解凍のテストで生じた品質問題を挙げ、真空保存や超低温冷凍庫の追加投資で2~3年かけて解決した経緯が書かれている。

  • 財務と資金の調達2

    資本金2,600千円は記載があるものの、補助事業の資金調達見込みや金融機関との関係は書かれていない。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    最先端のプロトン凍結機・解凍機を旅館業に導入し、高級食材の料理で高付加価値化を図っている点が読み取れる。

公的補助の必要性60%
  • 波及効果・雇用3

    地方旅館へのビジネスモデル提供、倒産・廃業への歯止め、地域経済の活性化への寄与が述べられているが、数値の裏付けはない。

  • 費用対効果3

    料理原価5%削減や客単価の向上が書かれているが、補助金額に対する付加価値増加の数値は示されていない。

  • イノベーションへの貢献3

    プロトン凍結設備を使い、料理人とパートの分業による少人数運営を地方旅館向けに提示したと述べられている。

政策面60%
  • 成長分野への進出2

    日本経済の構造転換への言及はなく、地方旅館の再生という限定的な効果が書かれているにとどまる。

  • 地域経済への波及4

    京丹後・間人の地魚や地元食材を活かした料理で、地域経済の活性化に寄与すると述べられている。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

急速冷凍や蓄積した仕入れの目利き能力を活かし、「間人がに」の漁獲減少を補いながらブランド力を高める。地方の小規模旅館に永続可能なビジネスモデルを提示し、旅館の再生・発展と地域経済の活性化に寄与したいと考えている。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成27年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。