ものづくり補助金平成30年度製造業愛媛県

刺繍製造工程統合による生産性向上と風合いの強化による意匠面の高品位化

有限会社タニグチ刺繍(有限会社タニグチ刺?)

この事例のポイント

  • 少子化による生徒数の減少で市場全体が縮小し、売上の主力だった制服向けの刺繍加工が減少していた。
  • 生産性の高いタジマ多頭式電子刺繍機(TMCR-V1506F)を導入した。
  • 刺繍糸を9色以上使う製造工程の統合を実現し、加工に必要な刺繍機の台数を削減できた。

事業者のプロフィール

事業者名有限会社タニグチ刺繍(有限会社タニグチ刺?)
所在地愛媛県 八幡浜市
業種繊維工業
技術分野デザイン,精密加工,機械制御
従業員数5人
資本金500万円
設立1980年

事業の背景

創業以来、制服シャツへの校章や企業ロゴといったワンポイントの刺繍加工を主に請け負ってきた。少子化による生徒数の減少で市場全体が縮小し、売上の主だった制服向け刺繍が減っていた。一方、SNSの普及によりファッションへの関心が高まり、刺繍の持つ特別な高級感が重視されるようになっていた。そこで売上が伸びているファッション分野の強化を図ることにした。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 販路・情報発信少子化による生徒数の減少で市場全体が縮小し、売上の主力だった制服向けの刺繍加工が減少していた。
  • 生産能力増加する受注に確実・安定・効率よく対応するため、製造環境と生産体制を強化する必要があった。
  • 品質・精度撚りが甘い特殊な刺繍糸は加工時に品質上の不具合が多く、生産ラインに乗せられなかった。
  • 人手・技能針の高さや糸のテンションの微調整が熟練職人の経験や勘に頼っており、属人的な作業になっていた。
  • 納期・工程複数台の刺繍機で加工を分けていたため、移動に伴う人為的過誤のトラブル発生リスクがあった。

やったこと

生産性の高いタジマ多頭式電子刺繍機(TMCR-V1506F)を導入した。機械の速度を向上させ、複数台で行っていた加工を1台で完結させることで、加工時間を短縮し工程を統合した。この機械は1工程で最大15色の糸色が使用でき、刺繍糸を9色以上使う製造工程の統合を実現した。従来は熟練職人が行っていた針の高さや糸のテンションの微調整を、タッチパネル上から操作できるようにした。進捗管理の力を活用し、限定品などの小ロットにも安定して対応した。加工の属人化を減らし、熟練作業者の暗黙知をデータとして蓄積して技術の共有と継承につなげた。

加工機タジマ多頭式電子刺繍機(TMCR-V1506F)

事業の効果

刺繍糸を9色以上使う製造工程の統合を実現し、加工に必要な刺繍機の台数を削減できた。準備時間の短縮と生産の効率化が進み、トラブルによる製造ライン停止回数も減少した。最大生産能力も向上した。これまで品質を安定させにくかった撚りの甘い特殊な糸も安定して生産できるようになった。微調整の属人的作業も減り、省人化にもつながった。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均3.1 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性80%
  • これまでの取組との一貫性4

    制服向け刺繍の減少を受け、ファッション分野へ強化する方針を取っており、従来の刺繍加工の蓄積を活かした一貫した転換が読み取れる。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    パリ・コレクションや東京コレクションでの実績があり、表現力・技術力への評判が高いという強みを、競争優位として打ち出している。

  • 課題の認識と解決4

    制服向け売上の減少という課題を認識し、風合いを前面に出した加工で高付加価値化と新規取引先獲得を図る計画が示されている。

事業の実現可能性52%
  • 付加価値・賃上げの目標2

    付加価値向上や賃上げの方向性は示されるが、具体的な数値目標は見当たらず、実現可能性を判断する材料が乏しい。

  • 事業を進める体制3

    従業員5人の小規模体制で、システム担当者の氏名と連絡先が記載されているが、体制の詳細や人材確保の説明は薄い。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    ファッション分野を顧客ターゲットとし、小ロットの限定品にも安定対応できる点や、コレクションでの実績が選ばれる理由として整理されている。

  • 事業化までの道筋3

    今後の活動予定として世界各Fashion Weekでの実績増やブランド化が挙げられるが、スケジュールや期限は書かれていない。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    10色以上の糸使用や、従来平面が基本だった刺繍を3Dで作る試みなど、同分野で高水準の意匠性を目指す内容が具体的に示されている。

公的補助の必要性53%
  • 波及効果・雇用3

    業界の底上げと地域経済の活性化に寄与するという方向性は示されているが、雇用や波及効果の数字は書かれていない。

  • 費用対効果2

    刺繍機台数の削減や稼働率の上昇がうかがえるが、補助金額に対する効果の数値は示されず、費用対効果は判断しにくい。

  • イノベーションへの貢献3

    多頭式電子刺繍機のタッチパネル操作や加工データの蓄積による技術継承が示されるが、産業全体への波及は限定的に見える。

政策面60%
  • 成長分野への進出3

    ファッション分野で刺繍ニーズが増えると予想し、成長分野へ進出する方針が示されているが、構造転換への言及は控えめである。

  • 地域経済への波及3

    愛媛県八幡浜市の刺繍会社として地域経済の成長に寄与する意図が示されるが、地域資源を活かした具体的な付加価値の説明は薄い。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

研究開発を続けて加工の幅を広げ、糸の風合いを追求した加工の企画を進める。製造工程の統合と合わせて風合いを前面に打ち出し、既存顧客に加え新規取引先を獲得してシェアを拡大する。素材など新しい市場への進出も狙い、パリ・コレクションや東京コレクションに続き各国のFashion Weekでの加工依頼を増やしてブランド化を図る。地域経済の活性化にも寄与していく。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成30年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。