ものづくり補助金平成24年度岩手県

加速器装置用部品製造

株式会社千田精密工業

この事例のポイント

  • 国内で製造実績のない加速器実験用の電磁ホーンを、立体的で複雑な形状の大型部品として製造する技術が必要だった。
  • 本事業で、立体的な複雑形状に対応するため、複合面の多軸加工と荒取り・仕上げの多数の加工パターンを備えた3次元CAD/CAMシステムを導入した。
  • 国産初の電磁ホーンの製造に成功し、KEKから品質について高い評価を得た。

事業者のプロフィール

事業者名株式会社千田精密工業
所在地岩手県 上閉伊郡大槌町
業種一般機械器具製造業
技術分野切削加工
従業員数100人
資本金8,000万円
設立1979年

事業の背景

当社は金属を加工して、半導体や液晶製造装置の部品、真空装置、自動車・航空機関連の部品を製造してきた。平成17年に国内の中小企業として初めてTWI研究所と国際ライセンス契約を結び、摩擦攪拌接合(FSW)の技術を自動車や半導体分野の部品加工に活かしていた。平成25年5月、高エネルギー加速器研究機構(KEK)から、ILCの加速器実験装置の部品である電磁ホーンの製造を依頼された。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 新製品・新技術国内で製造実績のない加速器実験用の電磁ホーンを、立体的で複雑な形状の大型部品として製造する技術が必要だった。
  • 品質・精度製品の厚みが約3mmと薄く、円すい形状の加工時に変形しやすいことが製作上の問題になっていた。

やったこと

本事業で、立体的な複雑形状に対応するため、複合面の多軸加工と荒取り・仕上げの多数の加工パターンを備えた3次元CAD/CAMシステムを導入した。大型部品を既存設備で加工するために専用の箱形治具を製作し、特殊刃物も購入した。製作した5つの部品をFSWで接合し、直径1.5m・長さ2.5mのものと直径1m・長さ2mのものの計2台の電磁ホーンを製造した。特殊なアルミニウム材料を使うため、類似材料で実験を重ねて回転と送り速度、接合ツールのピン形状の条件を決めた。1年半をかけ、平成27年1月に電磁ホーンを完成させた。

新しい製品・サービス:電磁ホーン

事業の効果

国産初の電磁ホーンの製造に成功し、KEKから品質について高い評価を得た。電磁ホーンは茨城県東海村のJ-PARCのニュートリノ実験施設に設置される予定である。この製造を通じて得たノウハウと高い技術力を対外的に示せたことが、当社にとって最大の成果となった。県内の中小企業がILCに参入するきっかけづくりにも貢献できた。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均3.1 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性53%
  • これまでの取組との一貫性3

    過去のFSW技術ライセンス取得や半導体・自動車部品加工の実績から一貫性はうかがえるが、経営戦略上の位置付けは明示されていない。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    国内中小企業では初のTWIとの国際ライセンス契約など強みは書かれるが、市場動向との関係は具体的に示されていない。

  • 課題の認識と解決2

    今後の取り組みとして付加価値の高い製品への挑戦は書かれるが、課題と事業計画の具体的な対応策は読み取れない。

事業の実現可能性56%
  • 付加価値・賃上げの目標1

    公開されている事例からは読み取れません。

  • 事業を進める体制4

    社員が一丸となって1年半実験を重ねた体制や、従業員数100名の記載から遂行力は具体的に読み取れる。

  • 顧客とニーズの裏付け3

    KEKから受注し品質の評価を得た点や、多品種・少量・高精度を得意とする点は書かれるが顧客ターゲットの整理は薄い。

  • 事業化までの道筋3

    1号機から3号機までの流れや、ILC関連の受注活動の展開が書かれ、今後の方向性はあるが検証の詳細は薄い。

  • 財務と資金の調達3

    財務の状況は公開されている事例には出ないため、中間の3としています。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    立体的複雑形状の電磁ホーンを、厚さ約3mmのアルミ材で高精度に製造した点は、同分野での高付加価値性を具体的に示している。

公的補助の必要性73%
  • 波及効果・雇用5

    ILCや素粒子研究など国の研究基盤に関わる製品で、地元岩手県の中小企業のILC参入にも波及効果があると記載がある。

  • 費用対効果2

    費用はかなり必要だったと書かれるのみで、補助金投入額に対する付加価値増加などの数字は示されていない。

  • イノベーションへの貢献4

    3次元CAD/CAMの導入と多軸加工、FSWの融合で新技術を用いた点が具体的に書かれ、サプライチェーンへの貢献も示唆される。

政策面60%
  • 成長分野への進出3

    素粒子研究施設向けの部品製造という先端分野への進出が書かれ、構造転換への寄与は間接的にうかがえる。

  • 地域経済への波及3

    岩手県南・北上山地のILC誘致に関連し地域の中小企業の参入に寄与した点が書かれるが、雇用や成長の数字はない。

今後の展望

今後は切削技術とFSWを融合した付加価値の高いものづくりに取り組む。ILC向けの加速器製造について研究機関からの依頼を受け、受注に向けた活動を進めている。FSWを使う製品や装置部品の受注を、岩手県内や東北全体に広げたいとしている。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成24年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです(画像のPDFを文字起こししてから読み取りました)。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。