ものづくり補助金平成24年度東京都

江戸切子の新規市場の開拓に向けた試作開発

株式会社堀口硝子

この事例のポイント

  • 従来の吹きガラスの手法では、江戸切子の青と透明の二層ガラスを時計の文字盤に要求される高い平面度で作ることが困難だった。
  • 2色ガラスを真空加熱溶着させる新技術の確立を目指し、平面材料としての試作材料を製作した。
  • 真空加熱溶着の確立は完全には至らず、事業期間内に完全な江戸切子の文字盤は作成できなかった。

事業者のプロフィール

事業者名株式会社堀口硝子
所在地東京都 東京都江東区
業種窯業・土石製品製造業
技術分野溶接
従業員数12人
資本金1,500万円
設立1947年

事業の背景

江戸切子は伝統文様を着色二層ガラス器に彫り込む9カットグラスとして知られている。高級腕時計の市場は個数は少ないものの、金額面では腕時計市場の過半を占め、需要は伸びており、国産腕時計メーカーも力を入れている。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 品質・精度従来の吹きガラスの手法では、江戸切子の青と透明の二層ガラスを時計の文字盤に要求される高い平面度で作ることが困難だった。
  • 新製品・新技術平面ガラス板を2枚溶着する方法に転換したが、大気中で溶着すると2枚の間に気層が入り、クリアな素材ができなかった。
  • 販路・情報発信江戸切子を高級腕時計の文字盤に応用する新しい市場は、まだ開拓されていなかった。

やったこと

2色ガラスを真空加熱溶着させる新技術の確立を目指し、平面材料としての試作材料を製作した。精度や透明度に優れ平面度を確保した素材を目指し、最適なバー材を準備して切断加工を各加工メーカーに委託した。芝浦工業大学の実験設備を調整し、加熱ガラスが粘着しないようDLCコーティングを施した金型を準備した。真空加熱炉で溶着条件を検証したが、実験1では発砲、実験2では溶着がほとんどできず、実験3では1000番程度の磨き面が溶着せず中心部が未溶着となった。実験4では加熱温度を650度まで上げたが中心部に空気を噛み、真空下での加熱・冷却のタイムラグが大きいことが分かった。並行して社内デザイン部門で伝統的なデザインを元に腕時計に合った切子のデザイン案を作成した。

新しい製品・サービス:江戸切子の二層ガラスを用いた高級腕時計用文字盤

事業の効果

真空加熱溶着の確立は完全には至らず、事業期間内に完全な江戸切子の文字盤は作成できなかった。一方で、まったく新しい加工方法に挑戦したことで、経験則に頼らない開発ができ新たな視点を得た。真空下での溶着条件の要因を絞り込み、今後の開発の方向性も見えてきた。高級腕時計への採用により江戸切子ブランドの海外での認知拡大と、グローバルな市場展開への効果も期待している。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.7 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性53%
  • これまでの取組との一貫性3

    江戸切子の伝統技法を腕時計文字盤へ応用する新市場開拓と明記されているが、既存事業との連続性の説明は薄い。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    高級腕時計市場は金額面で過半を占め需要が伸びていると記載があるが、自社の強みとの関係は具体的に示されていない。

  • 課題の認識と解決2

    溶着技術の課題は詳述されているが、高付加価値化につながる事業計画としての実効性は示されていない。

事業の実現可能性64%
  • 付加価値・賃上げの目標3

    5年以内に年間5,000個、単価5,000円程度、年間2,500万円の売上目標が示されているが、根拠は薄い。

  • 事業を進める体制3

    大学との共同研究中止や外注・メーカー交渉の対応が書かれ、体制の変化に対応した記述がある。

  • 顧客とニーズの裏付け3

    世界で唯一の希少性や高級腕時計への採用を目指すと書かれるが、顧客ターゲットや選ばれる理由の整理は不十分。

  • 事業化までの道筋4

    実験1〜4の結果と課題要因を整理し、今後一年で開発完成、その後5年以内の目標と時期が示されている。

  • 財務と資金の調達3

    財務の状況は公開されている事例には出ないため、中間の3としています。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    江戸切子の文字盤応用は前例が少なく、世界で唯一と述べ、高水準の高付加価値化を図る内容と読み取れる。

公的補助の必要性40%
  • 波及効果・雇用2

    江戸切子ブランドの海外認知拡大への効果が期待されると書かれるが、国が補助する理由の記述は限定的。

  • 費用対効果2

    投入額に対する付加価値増加の数値は示されず、年間2,500万円の売上目標のみで費用対効果は読み取りにくい。

  • イノベーションへの貢献2

    真空加熱溶着という新技術の開発に取り組んだと書かれるが、サプライチェーンへの貢献は記載されていない。

政策面40%
  • 成長分野への進出1

    公開されている事例からは読み取れません。

  • 地域経済への波及3

    江東区大島の伝統工芸である江戸切子を活かした事業と読み取れるが、地域への雇用や経済成長効果の記載は薄い。

今後の展望

今後一年かけて開発を完成させ、その後5年以内に年間5,000個規模の売上を目標とする。単価5,000円程度を想定し、年間2,500万円の売上を目指す。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成24年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです(画像のPDFを文字起こししてから読み取りました)。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。