ものづくり補助金平成24年度山梨県

温間加工技術を用いた非磁性高強度オーステナイトステンレス細線の製造とねじ等の非磁性高強度部品の量産試作開発

株式会社降矢技研

成果加工率に対する磁性変態の発生 30%→70%

この事例のポイント

  • 高強度で非磁性のステンレスマイクロねじ及び部品は、加工時の誘起マルテンサイト変態を抑制できず市場に供給されていない。
  • 温間伸線装置の試作開発として伸線機を改造し、高強度且つ非磁性ステンレス鋼線(細線)を作れるようにした。
  • 加工率に対する磁性変態の発生 30%→70%。温間伸線装置の試作開発により、オーステナイトステンレス鋼を使った高強度且つ非磁性のステンレス製品の製作に道が開けた。

事業者のプロフィール

事業者名株式会社降矢技研
所在地山梨県 笛吹市
業種金属製品製造業
技術分野鍛造
設立1977年

事業の背景

電子部品や通信機器、生体・医療機器の分野では、磁性を持つ部品が機器全体の機能に悪影響を及ぼす場合があり、非磁性のねじや部品へのニーズがある。コンピュータのハードディスクやスマートフォンなどの小型化・大容量化に伴い非磁性・高強度ステンレスねじのニーズもあるが、市場には供給がない。現状ではハードディスク、スマートフォンのグローバル市場における国内メーカーのシェアは10%足らずである。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 新製品・新技術高強度で非磁性のステンレスマイクロねじ及び部品は、加工時の誘起マルテンサイト変態を抑制できず市場に供給されていない。
  • 生産能力高強度部品は素材からの塑性加工が困難なため切削加工で製造されることが多く、切粉発生による材料ロスや量産性の悪さからコストが高い。
  • 新製品・新技術切削加工では複雑形状部品の製造も難しく、塑性加工による精密部品への要求が高まっている。

やったこと

温間伸線装置の試作開発として伸線機を改造し、高強度且つ非磁性ステンレス鋼線(細線)を作れるようにした。温間成型装置の試作開発として、ヘッダーマシンとローリングマシンをそれぞれ改造し、マイクロねじの温間成型を試みた。試作設備を使って温間伸線とねじの温間成型加工を実施し、検証した。ねじの評価試験も実施した。温間域(誘起マルテンサイト抑制域)で加工すると変形抵抗を約20%軽減でき、切削加工域や室温では困難だった精密・複雑形状・高強度・非磁性のマイクロパーツの加工が可能になった(ラボ実験で確認)。

  • 加工機伸線機温間伸線装置ヘッダーマシン温間成型装置ローリングマシン転造マシン
  • その他加熱ローラーヒーター・温度コントローラー

新しい製品・サービス:非磁性高強度オーステナイトステンレス細線およびねじ等の非磁性高強度部品

事業の効果

  • 加工率に対する磁性変態の発生 30%→70%
  • 温間域での加工により変形抵抗を約20%軽減できる

温間伸線装置の試作開発により、オーステナイトステンレス鋼を使った高強度且つ非磁性のステンレス製品の製作に道が開けた。温間伸線では加工率約70%でもほぼ非磁性を保ち、冷間伸線の挙動とも整合性が確認された。今後は試験結果をもとに設備導入し、新製品の需要に見合った生産が可能になる見込みである。温間成型装置は想定温度域までの昇温に至らなかったが、ヒーターの設置箇所や容量、潤滑油回路の見直しで解決できる目処が立っている。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均3.1 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性80%
  • これまでの取組との一貫性4

    1977年設立以来、ネジ加工の延長で非磁性・高強度ステンレスねじを次の事業と位置付け、海外に奪われた量産品からの転換を経営上の課題として説明している。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    ハードディスク・スマートフォンのグローバル市場で国内メーカーのシェアは10%足らずで、非磁性・高強度ねじは市場に供給がないと外部環境を示している。

  • 課題の認識と解決4

    切削加工の切粉ロスや量産性の悪さを課題として挙げ、温間加工で変形抵抗を約20%軽減できると解決策と数値を示している。

事業の実現可能性60%
  • 付加価値・賃上げの目標3

    目標TS約1,000MPa、加工率70%、変形抵抗約20%軽減などの技術目標はあるが、付加価値額や賃上げの目標値は書かれていない。

  • 事業を進める体制2

    社長の経歴や海外との共同開発に触れているが、補助事業を遂行する人員配置や事務体制について具体的な記述はない。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    電子部品・通信機器・生体医療、ハードディスクやスマートフォンなど顧客分野を挙げ、非磁性ねじへのニーズと選ばれる理由を説明している。

  • 事業化までの道筋3

    伸線機・ヘッダー・ローリングマシンの改造から検証までの工程①〜⑤は示されているが、中長期スケジュールや昇温未達への解決時期は明確でない。

  • 財務と資金の調達3

    財務の状況は公開されている事例には出ないため、中間の3としています。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    非磁性かつ高強度のステンレスマイクロねじは市場に供給されていないと述べ、誰も作れない製品を極める方向を示している。

公的補助の必要性47%
  • 波及効果・雇用2

    海外シェアや市場ニーズには触れているが、経済波及効果や雇用創出などの国が補助する積極的な理由はわずかにうかがえる程度である。

  • 費用対効果2

    切削加工のコストや材料ロスの課題は示されているが、補助金額に対する付加価値増加や生産性向上の数値は示されていない。

  • イノベーションへの貢献3

    温間加工による精密・複雑形状部品の製造を可能にしたと述べ、生体医療やEV部品など新分野への展開も視野に入れている。

政策面50%
  • 成長分野への進出3

    生体医療・ロボット関節・電気自動車部品など成長分野への参入を視野に入れているが、日本経済の構造転換への言及はない。

  • 地域経済への波及2

    山梨県笛吹市に立地する企業と記載されているが、地域の特性を活かした付加価値創出や雇用への言及は読み取れない。

今後の展望

高強度ステンレスねじ(部品)の量産化は本装置の試作開発により確実となった。非磁性の供給も温間成型装置の不備解決により可能になる見込みである。医療分野(骨の接合ねじ、インプラント用ねじ)、ロボットの関節ステッピングモーター軸、電気自動車部品などへの参入も視野に実験を続ける。

業種と困りごとが近い成果事例

愛知県平成24年度

消防用可変ノズルの事業化

放水形態を広角から棒状まで切り替えられる独自機構のからくりノズルを開発した。

効果:遠近距離から15〜20メートル先の広い火元に対応

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成24年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです(画像のPDFを文字起こししてから読み取りました)。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。