ものづくり補助金平成25年度製造業岩手県

ストレージメディア用ロールにおける、めっき被膜のクラック数管理と試作開発

大森クローム工業株式会社

この事例のポイント

  • 磁気テープのノイズ発生原因である硬質クロムめっき被膜のマイクロクラックを、ノークラック被膜にするためクラック数を管理する必要があった。
  • めっき液の組成、濃度、温度、電流密度などの条件を選定し、異なる条件のめっきサンプルを作成した。
  • 走査型電子顕微鏡の導入により、各条件下の皮膜を観測・記録できるようになり、クラック数の発生を管理することが可能になった。

事業者のプロフィール

事業者名大森クローム工業株式会社
所在地岩手県 北上市
業種その他の製造業
技術分野表面処理
従業員数77人
資本金3,000万円
設立1951年

事業の背景

当社は1951年の創業以来、工業用クロムめっき加工を専門に行ってきた。現在、エレクトロニクス産業では低コストで製造できる磁気テープが再び注目されている。磁気テープは30年間も性能の維持が可能とされ、記録容量の大きさが最大の特徴である。今後磁気テープのニーズは高まると予想されている。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 品質・精度磁気テープのノイズ発生原因である硬質クロムめっき被膜のマイクロクラックを、ノークラック被膜にするためクラック数を管理する必要があった。
  • 新製品・新技術硬質クロムめっき被膜の構造はめっき液の組成・濃度・温度・電流密度などの条件で変わるが、どの条件がクラック増減に影響するかが不明だった。

やったこと

めっき液の組成、濃度、温度、電流密度などの条件を選定し、異なる条件のめっきサンプルを作成した。当初予定していた形状解析レーザー顕微鏡に代えて、鉄素材の皮膜サンプル表面の解析に適した走査型電子顕微鏡を導入した。導入した走査型電子顕微鏡は30万倍の高倍率を有し、観察と同時に成分分析が可能である。組成、濃度、温度、電流密度、通電方法、前処理、前加工の7種の条件を組み合わせて加工し、皮膜の断面を2,000倍で観察、表面を研磨して250倍、1,000倍、2,000倍で観察し、クラック数を計測した。

検査測定走査型電子顕微鏡

事業の効果

走査型電子顕微鏡の導入により、各条件下の皮膜を観測・記録できるようになり、クラック数の発生を管理することが可能になった。各条件でクラックを最少に抑える加工条件を導き出せた。ノークラック被膜への第一歩を踏み出せた。一方、すべての条件で水素の気泡跡が確認され、磁気テープへの悪影響のおそれがあるため、今後の検討課題である。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.9 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性60%
  • これまでの取組との一貫性2

    創業以来の工業用クロムめっき加工の蓄積が「60年以上の経験」として触れられるが、経営戦略上の位置付けは書かれていない。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    磁気テープ需要の再拡大や「世界で唯一、日本だけが生産」と記され外部環境と強みに触れるが、自社の競争優位の定量的裏付けは薄い。

  • 課題の認識と解決4

    磁気テープのノイズ原因となるマイクロクラックという課題を明示し、ノークラック被膜化による高付加価値化への道筋が示されている。

事業の実現可能性56%
  • 付加価値・賃上げの目標2

    ノークラック被膜への「第一歩」とあるが、付加価値額や賃上げの数値目標は書かれていない。

  • 事業を進める体制3

    「当社が60年以上にわたり培ってきた経験」と開発者が記載されるが、人材や事務処理体制の具体は示されていない。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    磁気テープの記録容量の多さや30年の保存性など製品価値が具体的に示され、顧客ターゲットも電子産業と特定されている。

  • 事業化までの道筋4

    7種の条件(組成・濃度・温度など)を定め、30万倍の電子顕微鏡で解析する検証手順が示され、今後の課題として気泡跡の減少も挙げられている。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    硬質クロムめっきを電気めっき中で最も硬く仕上げる加工とし、磁気テープ用ノークラック被膜という高水準の加工に取り組んでいる。

公的補助の必要性53%
  • 波及効果・雇用3

    データ記録用磁気テープは国内唯一の生産品で、エレクトロニクス産業への波及が示されるが、雇用や経済波及の数値は書かれていない。

  • 費用対効果2

    開発工数の削減が予想されると記されるが、補助金額に対する付加価値増加の数値は示されていない。

  • イノベーションへの貢献3

    既存設備での再めっき処理による磁気テープメンテナンスや生産設備構築の提案が示されるが、デジタル技術の活用は薄い。

政策面50%
  • 成長分野への進出3

    海外需要が増えるデータ記録用磁気テープ分野への販路拡大と日本の産業貢献が述べられるが、構造転換への言及は限定的。

  • 地域経済への波及2

    岩手県北上での立地や地域経済への言及は事例中になく、地域牽引の内容はうかがえない。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

データ記録用磁気テープは海外で需要が増加しており、国内で唯一生産されている。クラック問題の解決により、エレクトロニクス産業への販路拡大が期待される。既存設備での再めっき処理も可能であり、磁気テープメンテナンスや生産設備構築の提案を行う方針である。今後はノークラック化を目指して検証を重ねる。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成25年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。