ものづくり補助金平成26年度製造業栃木県

新型洗浄機開発および工程効率化による環境負荷低減と真空熱処理加工の受注拡大

株式会社アイ・シイ・エス

成果洗浄液の使用量 10t/年→3.3t/年

この事例のポイント

  • 金属部品の洗浄に使うトリクロロエチレンは環境負荷が大きく人体に有害で、規制強化により廃止の方向にあり、受注の機会を逃していた。
  • 洗浄液を炭化水素系に対応した新たな洗浄機を開発した。
  • 洗浄液の使用量 10t/年→3.3t/年。有機溶剤系の洗浄液を廃止し、環境負荷の大きいトリクロロエチレンの使用をやめることができた。

事業者のプロフィール

事業者名株式会社アイ・シイ・エス
所在地栃木県 栃木市
業種その他の製造業
技術分野材料製造プロセス
従業員数193人
資本金2.2億円
設立1973年

事業の背景

当社は熱処理設備の管理から出発し、真空・雰囲気炉を使った金属熱処理、ろう付け、表面改質処理などの受託加工を専業とし、自動車・航空宇宙・医療などの分野で事業を行っている。加工前の脱脂や表面清浄化を目的とした洗浄工程では塩素系有機溶剤のトリクロロエチレンを使用してきた。世界的に有機溶剤系洗浄液の規制が強まり、一部メーカーはトリクロロエチレンを使った製品を禁止している。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 品質・精度金属部品の洗浄に使うトリクロロエチレンは環境負荷が大きく人体に有害で、規制強化により廃止の方向にあり、受注の機会を逃していた。
  • コスト・採算洗浄液の使用量が年間約10t以上に及び、洗浄液コストや追加・交換の工数が大きな負担になっていた。
  • 生産能力洗浄の前準備として金属部品の油抜きに1日以上放置する必要があり、非効率な洗浄工程となっていた。

やったこと

洗浄液を炭化水素系に対応した新たな洗浄機を開発した。炭化水素は有機溶剤に比べ乾燥性が劣るため、真空乾燥方式を採用して十分な乾燥性を得た。真空と超音波を組み合わせ揺動・回転を取り入れた洗浄を計3槽、蒸気洗浄と真空乾燥を取り入れた仕上げ洗浄を計2槽配置し、計5層式の洗浄機とした。機械レイアウトを工夫し、油切りライン、洗浄ライン、搬送ラインの流れの中で作業開始点と終了点を同じ地点にして効率化を図った。油抜き用に六角形のバレル(洗浄籠)を開発し、洗浄前に回転させて油分を切るようにした。

加工機炭化水素系ベーパー洗浄乾燥機(5層式真空超音波洗浄機)

新しい製品・サービス:炭化水素系洗浄液に対応した5層式真空超音波洗浄機

事業の効果

  • 洗浄液の使用量 10t/年→3.3t/年
  • 洗浄トータルコストを約20%削減
  • 油抜き時間 1,440分→10分

有機溶剤系の洗浄液を廃止し、環境負荷の大きいトリクロロエチレンの使用をやめることができた。洗浄液の使用量は約1/3以下に減り、洗浄トータルコストは約20%削減された。油抜きの放置時間も1日以上からわずか10分程度に短縮され、工程効率化と環境負荷低減の二つの目標が達成された。蒸留再生機構により清浄な洗浄液で環境に配慮した熱処理及びコーティングを提供できるようになった。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.8 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性67%
  • これまでの取組との一貫性3

    真空・雰囲気炉による熱処理の受託を専業とし、環境配慮の取組を経営上で続けていく方針が読み取れる。ただし戦略上の位置づけは具体的に示されていない。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    自動車・航空宇宙・医療分野での受託加工という強みと、受注機会を逃していたという課題は読み取れるが、市場動向との関係は具体性が薄い。

  • 課題の認識と解決4

    トリクロロエチレンの廃止や洗浄液使用量の削減、油抜きを1日以上から10分程度に短縮するなど、課題と解決策が具体的に書かれている。

事業の実現可能性56%
  • 付加価値・賃上げの目標4

    洗浄液使用量を約1/3以下に削減し、洗浄トータルコストを約20%削減できたという数値目標と結果が示されている。

  • 事業を進める体制2

    従業員数193名や設立年は書かれているが、補助事業を遂行する人材や事務処理体制についての記述はわずかである。

  • 顧客とニーズの裏付け3

    洗浄液の環境負荷低減やリサイクル性といった価値、受注拡大の狙いは読み取れるが、顧客ターゲットやニーズの裏付けは薄い。

  • 事業化までの道筋4

    2020年8月に洗浄棟が完成、令和2年度中に旧設備を刷新し完全廃止するなど、時期と段取りが具体的に書かれている。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性60%
  • 新しさ・高付加価値3

    国内最大級・国内トップクラスの5層式炭化水素系ベーパー洗浄乾燥機と書かれており、同分野での高水準の設備であることがうかがえる。

公的補助の必要性53%
  • 波及効果・雇用3

    環境負荷の大きい有機溶剤の廃止や、地域社会の持続可能な発展への貢献が述べられているが、波及効果や雇用創出の数値は書かれていない。

  • 費用対効果3

    洗浄コストを約20%削減し、油抜き時間を大幅短縮したという効果は示されているが、補助金額と付加価値増加の関係は書かれていない。

  • イノベーションへの貢献2

    蒸留再生機構を備えた炭化水素系洗浄機の導入は述べられるが、デジタル技術やサプライチェーンへの貢献は書かれていない。

政策面40%
  • 成長分野への進出2

    環境配慮型の熱処理提供という方向性はうかがえるが、日本経済の構造転換に資する旨の記述は見られない。

  • 地域経済への波及2

    栃木工場に新棟を整備した点は地域との関係をうかがわせるが、地域の特性を活かした付加価値や雇用創出は書かれていない。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

事業者の声

トリクロロエチレンは高い洗浄能力と取り扱いの容易さから、かねてより万能洗浄液として使われてきました。しかし、環境や人体に有害であることが指摘され、当社としても早急な対処が求められる中で、本事業をきっかけに廃止の決断ができました。令和2年度中には旧設備を刷新し、完全廃止する計画です。

公式の事例集より(原文のまま)

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成26年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。