ものづくり補助金平成26年度製造業東京都

【医薬工連携】感染症防止のための殺菌性と外観美を両立しためっき皮膜の開発

株式会社金属被膜研究所

この事例のポイント

  • 既存の抗菌皮膜は光触媒やフッ素樹脂を使っているため、光が届かない環境では効果がなく、外観美にも課題があった。
  • 有識者のアドバイスを得ながら、銅めっきやニッケルめっきのベースとなる薬液を選定し、めっき皮膜に転化する合金成分の候補を選んだ。
  • 抗菌活性値は大腸菌で6、黄色ブドウ球菌で3.8を示す試験結果があり、JIS規格で抗菌効果とされる2.0以上を満たした。

事業者のプロフィール

事業者名株式会社金属被膜研究所
所在地東京都 東京都品川区
業種その他の製造業
技術分野表面処理
従業員数26人
資本金1,200万円
設立1955年

事業の背景

当社は昭和30年に設立されためっき加工専門業で、環境負荷の低い無電解ニッケルめっきを主力としている。設備機器や医療機器メーカーからドアノブや手すりの指紋が目立たなくなる表面処理を受注してきたが、要求は年々厳しくなっている。夏場の食中毒や冬場のインフルエンザなどの感染症が生活の脅威となっており、接触感染の比率が高いとされる中で、抗菌性を求める声が強まっている。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 新製品・新技術既存の抗菌皮膜は光触媒やフッ素樹脂を使っているため、光が届かない環境では効果がなく、外観美にも課題があった。
  • 新製品・新技術抗菌を謳う金属材料やコーティング製品は価格や金属アレルギーの問題があり、ユーザーを満足させる商品が存在しない。
  • 新製品・新技術医療機器メーカーから、手すりやドアノブなどに抗菌性や殺菌性を求める要望が強まっていた。

やったこと

有識者のアドバイスを得ながら、銅めっきやニッケルめっきのベースとなる薬液を選定し、めっき皮膜に転化する合金成分の候補を選んだ。電気めっき用に、めっき装置、冷却ポンプ、低温でのめっきに使う冷却装置、色味を数値化して管理する色差計を導入した。めっき槽の大きさや槽に用いる素材、液循環の設計を行い、設備製作会社とCADで槽と治具を設計した。前処理工程を検討したうえで、温度やpHを調整してビーカーレベルで析出速度、角部の電解着色、皮膜の均一性、外観を確認し、導入した設備でラインテストを行った。皮膜の組成ごとに殺菌性を社内と外部機関で試験し、JIS Z 2801:2010に基づき抗菌活性値5.0を実現した合金組成を決定した。

加工機めっき装置
その他冷却装置
検査測定色差計

新しい製品・サービス:抗菌性と抗金属アレルギー性を兼ね備えた金属合金皮膜

事業の効果

抗菌活性値は大腸菌で6、黄色ブドウ球菌で3.8を示す試験結果があり、JIS規格で抗菌効果とされる2.0以上を満たした。抗アレルギー性の条件も満たすことが確認できた。銅や銀などの高価な原材料を使わないため、銅製品と比べて半額から3分の1程度の価格設定になる見込みである。一方で、人の手垢や指紋が付いた部分が時間の経過とともに変色する外観の課題は残っている。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均3.1 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性67%
  • これまでの取組との一貫性3

    無電解ニッケル等の主力事業やドアノブ・手すりの表面処理の継続として位置づけられているが、経営戦略上の明確な位置づけまでは書かれていない。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    光触媒やフッ素樹脂の従来品は光が届かない環境で効果がなく、他社類似品も多いと市場環境と自社の限界を具体的に述べている。

  • 課題の認識と解決3

    抗菌性と外観美の課題を認識し、合金皮膜の開発で解決を図る方向は示されているが、事業計画としての収益化の道筋は薄い。

事業の実現可能性64%
  • 付加価値・賃上げの目標4

    抗菌活性値5.0の実現や半額から3分の1程度の価格設定見込みなど数値が示されている。ただし賃上げや付加価値額の目標は書かれていない。

  • 事業を進める体制3

    有識者の助言、設備製作会社との協力、ISO14001取得などの体制はうかがえるが、人材や事務体制の詳細は書かれていない。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    医療機器メーカーからの抗菌・抗アレルギー性の要望、価格や外観美の両立という顧客ニーズと適用先が具体的に示されている。

  • 事業化までの道筋4

    試作実験の段階、外観変色の課題、透明コーティングの試行や薬液メーカーとの検討など、課題と解決の進め方が具体的に記されている。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性100%
  • 新しさ・高付加価値5

    抗菌と抗金属アレルギーを兼ね備えた製品は前例がないと明記され、類似品が少ない分野での新規性が具体的に示されている。

公的補助の必要性60%
  • 波及効果・雇用4

    食中毒や感染症の脅威、公共施設や鉄道など広い適用業界への展開が挙げられており、社会的な必要性が具体的に述べられている。

  • 費用対効果2

    価格が銅製品の半額から3分の1程度とあるが、補助金投入額に対する付加価値や費用対効果の数値は書かれていない。

  • イノベーションへの貢献3

    感染症対策という社会課題への貢献がうかがえるが、デジタル技術やサプライチェーンへの波及は書かれていない。

政策面30%
  • 成長分野への進出2

    医療・公共交通など成長が見込まれる分野への進出がうかがえるが、日本経済の構造転換への言及は書かれていない。

  • 地域経済への波及1

    公開されている事例からは読み取れません。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

透明コーティングで外観美は改善したものの抗菌性が損なわれたため、薬液メーカーと共にコーティングに抗菌成分を加える検討を進めている。商品化に成功すれば、医療機関、公共施設、鉄道、航空機、住宅など幅広い分野への展開を想定しており、市場規模は非常に大きいと見込んでいる。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成26年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。