ものづくり補助金平成26年度製造業京都府

レーザー溶接機による金属工芸品修復・宝飾品修理技術の普及に向けて

東風美術工芸株式会社

この事例のポイント

  • 広範囲を加熱する従来の溶接では、形状の崩れや変色が発生する。
  • レーザー溶接機「MEGAHIT 140J」を導入した。
  • 局所的な溶接により、高温の影響を溶接箇所だけに抑えられるため、変色や変形を防ぎ元の風合いを保った修復ができるようになった。

事業者のプロフィール

事業者名東風美術工芸株式会社
所在地京都府 京都市中京区
業種その他の製造業
従業員数18人
資本金5,000万円
設立2015年

事業の背景

1990年の創業以来、金属工芸品の制作・販売と貴金属ジュエリーの制作・修理を主力としてきた。アクセサリーに使われる貴金属は、この10年程で高騰が続き、地金相場が3倍以上になることもある。そのため新しい貴金属の購入をためらうお客様が増え、思い出の品などの修理需要は大きいと見込まれている。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 品質・精度広範囲を加熱する従来の溶接では、形状の崩れや変色が発生する。
  • 集客・繁閑繊細で複雑な工芸品は修理が不可能な場合があり、修理依頼を断らざるを得ず、取引先からも声がかからないなど機会損失が生じている。
  • 生産能力宝石や珊瑚がついた工芸品は熱の影響を避けるため取り外して溶接する必要があり、作業効率の向上が課題となっている。
  • 人手・技能金・銀・プラチナなどを組み合わせた工芸品の溶接には高度な技術と経験・勘が必要で、習得に時間がかかる。

やったこと

レーザー溶接機「MEGAHIT 140J」を導入した。YAGレーザーを使用した溶接機で、加工部をピンポイントで数百度から千数百度の高温にできる。レーザーのパワー、パルスタイム、パルス周波数、スポットサイズなどを素材や形状によって変え、タッチパネルで設定してメモリーに保存できるようにした。素材は金・銀・プラチナ・銅などの単一素材のほか合金やメッキ品があり形状も様々なため、一品一様の設定が必要で導入当初は手探りが続いた。カメラとモニターが内蔵されており、微細な部分も目視で確認しながら溶接できる。熱に弱い有機素材を組み合わせた工芸品でも、溶接部以外に影響を与えずに溶接できる。ネックレスのチェーン切断の修理では、リング一つだけをピンポイントで溶接でき、全体の風合いを損なわずに修理できる。

加工機レーザー溶接機 MEGAHIT 140J

新しい製品・サービス:レーザー溶接機「MEGAHIT 140J」を用いた金属工芸品の局所的溶接による修復・修理技術

事業の効果

局所的な溶接により、高温の影響を溶接箇所だけに抑えられるため、変色や変形を防ぎ元の風合いを保った修復ができるようになった。宝石を外さずに修復できる場面も多く、作業効率が向上して短納期と低価格を実現した。これまで修理不可能としてお断りしていた工芸品も、高品質・低価格・短納期で修理できるようになった。修理件数は事業実施前より約20%増加し、事業開始前の目標である約10%増を上回った。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均3.1 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性73%
  • これまでの取組との一貫性3

    伝統技術の向上と次世代職人養成を掲げ、レーザー溶接機導入を技術向上の延長に位置づけているが、過去の取組との具体的な連続性は薄い。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    修理件数が事業実施前より約20%増加し、従来不可能だった修理を受注できるようになったと記載され、強みを活かした競争優位が読み取れる。

  • 課題の認識と解決4

    修理不可能でお断りしていた機会損失と作業効率の課題を明示し、短納期・低価格化で高付加価値化につなげる計画が読み取れる。

事業の実現可能性60%
  • 付加価値・賃上げの目標4

    修理件数の目標を約10%増に設定し、実績は約20%増と上回ったと数字で示されており、実現性が高いと読み取れる。

  • 事業を進める体制3

    熟練職人の育成や従業員の企画体制に触れているが、補助事業を遂行する人員配置や事務処理体制は具体的に書かれていない。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    貴金属価格高騰で新規購入をためらう顧客が増え、修理需要が大きいという市場の裏付けと、修理の対象範囲の拡大が書かれている。

  • 事業化までの道筋3

    導入当初の手探りや経験・勘の必要性に触れ、修理分野の拡大を段階的に図る方針は見えるが、スケジュールは具体的でない。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    レーザー溶接による局所修復で、熱による変色や変形を抑えた高品質修理を実現し、同分野で高水準の付加価値化を図ることが読み取れる。

公的補助の必要性53%
  • 波及効果・雇用2

    伝統工芸の継承や次世代職人の養成、業界全体の発展への貢献が述べられているが、経済波及や雇用創出の数値的根拠は示されていない。

  • 費用対効果3

    修理件数の約20%増や短納期化が示されるが、補助金投入額に対する付加価値額や費用対効果の数値は書かれていない。

  • イノベーションへの貢献3

    最新のYAGレーザー技術を伝統工芸の修復に応用し、業界への技術普及を目指す姿勢が示されているが、サプライチェーンへの貢献は具体的でない。

政策面60%
  • 成長分野への進出2

    伝統工芸の修復分野で最新技術を取り入れる点はうかがえるが、日本経済の構造転換への言及は読み取れない。

  • 地域経済への波及4

    京都の伝統工芸という地域特性を活かし、修理分野の拡大や海外展開を通じて高付加価値化を図る計画が具体的に書かれている。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

今回の事業で受注の可能性が大幅に増えたため、プロモーションを強化して新規顧客を獲得し、既存顧客からのさらなる受注増を図る。京都の伝統工芸品への海外の関心も高まっていることから、海外の方にも金属工芸品の修復ニーズが広がると予想し、日本文化の一つとして多くの人に知ってもらうよう努める。また、独立した元職人とも技術交流を続け、技術の成果を業界全体の発展に役立てたいと考えている。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成26年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。