ものづくり補助金平成27年度製造業栃木県

日本の発酵文化を世界にTPP加盟を見据えた高品質・安全・低価格の日本酒の輸出

渡邉酒造株式会社

この事例のポイント

  • 東日本大震災の影響で東アジアへの輸出が困難となり、計画していた輸出事業が停滞していた。
  • 平成24・25年度のものづくり補助金の採択を受けた成果を活用し、平成28年7月から8月にかけて試作品の醸造を実施した。
  • 試作の結果、リパーゼ使用と低温発酵により味・香りとも良好で、カルバミン酸エチルが従来より低い低精白の純米酒を醸造できた。

事業者のプロフィール

事業者名渡邉酒造株式会社
所在地栃木県 大田原市
業種飲料・たばこ・飼料製造業
技術分野バイオ
従業員数8人
資本金1,000万円
設立1892年

事業の背景

当社は明治25年に創業し、昭和30年に法人化された地酒蔵で、7年連続全国新酒鑑評会入賞・金賞を受賞するなど技術・研究力は高く評価されている。「きもと純米酒」「貴醸酒」などの特徴ある商品が評価され、県内外の取引が増加し、それに伴い出荷量・売り上げも増加した。今後の展開として輸出を計画していたが、東日本大震災の影響で東アジアへの輸出が困難となり、輸出事業が停滞していた。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 販路・情報発信東日本大震災の影響で東アジアへの輸出が困難となり、計画していた輸出事業が停滞していた。
  • 品質・精度清酒に含まれるカルバミン酸エチルは発がん性物質で、精米歩合の低い純米酒に多く含まれ、海外では規制の動きがあるため、低精白の純米酒は積極的に輸出されていなかった。
  • 販路・情報発信輸出を広げるには、カルバミン酸エチルの対策を講じたことを市場にアピールする必要があった。

やったこと

平成24・25年度のものづくり補助金の採択を受けた成果を活用し、平成28年7月から8月にかけて試作品の醸造を実施した。清酒酵母が生成する尿素が火入れ時にエタノールと結合してカルバミン酸エチルになる仕組みを踏まえ、リパーゼの使用と低温発酵を組み合わせて醸造条件を検討した。火入れ条件と貯蔵条件を検討し、180日間の恒温貯蔵試験を行って劣化の度合いを分析し、官能試験も実施した。導入した富山鉄工製「PHCBパストライザー」と冷蔵設備により、機械制御で安定した火入れと火入れ後の急冷・保管を行えるようにした。

加工機PHCBパストライザー(充填後殺菌機)
その他冷蔵設備

新しい製品・サービス:カルバミン酸エチルを軽減した低精白の純米酒

事業の効果

試作の結果、リパーゼ使用と低温発酵により味・香りとも良好で、カルバミン酸エチルが従来より低い低精白の純米酒を醸造できた。火入れ・貯蔵条件の検討により、カルバミン酸エチルが不検出の純米酒も醸造できた。これにより、安全性をアピールできる商品を開発でき、技術力の評価や知名度向上による利益率の高い商品の販売につながる見込みである。1.8Lびんで4,000本の出荷が可能になり、売り上げ増加や賃金増加(年2%以上)及び雇用拡大(本事業中は1名、既に実施)も見込まれている。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均3.0 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性60%
  • これまでの取組との一貫性3

    平成24・25年度ものづくり補助金の採択を受け、その成果を活用して輸出を計画したとあり、過去の取組との一貫性がうかがえる。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    TPP加盟国向け輸出を見据え、カルバミン酸エチルを他社に先駆けて低減する点を優位性として挙げており、強みの説明は読み取れる。

  • 課題の認識と解決3

    課題は輸出停滞とカルバミン酸エチル規制と整理され、火入れ作業の人員減少などの対策が示されるが、事業計画の数値は薄い。

事業の実現可能性56%
  • 付加価値・賃上げの目標4

    賃金増加(年2%以上)、雇用拡大(本事業中は1名)、出荷可能量1.8Lびん4,000本など目標値が具体的に示されている。

  • 事業を進める体制2

    従業員数8名の記載はあるが、補助事業を遂行する体制や事務処理能力について具体的な記述はない。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    低価格で高品質な低精米きもと純米酒、カルバミン酸エチル軽減による安全性という価値と、オーストラリア業者からの取引依頼など顧客ニーズの裏付けがある。

  • 事業化までの道筋3

    試作、180日の恒温貯蔵試験、新規農家との直接契約など段階的な進め方が書かれているが、中長期の課題検証は薄い。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    カルバミン酸エチル非含有の低精白純米酒の開発を他社に先駆けて行い、同分野で高水準の高付加価値化を図る内容が示されている。

公的補助の必要性60%
  • 波及効果・雇用4

    地元の米作農家との直接契約や造好適米の増産で農家の安定収入につながり、栃木県内外の蔵元への発表で業界発展に寄与すると記載されている。

  • 費用対効果3

    賃金増加や雇用拡大、出荷増などの効果は示されるが、補助金投入額に対する付加価値額の数値は示されていない。

  • イノベーションへの貢献2

    パストライザーと冷蔵設備による機械制御の火入れ技術が導入されるが、サプライチェーン全体のイノベーションへの貢献は薄い。

政策面60%
  • 成長分野への進出2

    日本食や日本産酒類の海外展開に取り組む政府方針に触れているが、日本経済の構造転換との関連は限定的。

  • 地域経済への波及4

    栃木県大田原市の地酒蔵として、県産の酒造好適米の増産と農家の収入増、地域の外国人観光客の集客につながる点が示されている。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

日本酒の輸出量はアメリカ、カナダ、オーストラリア、ベトナム、シンガポールなどで伸びており、訪日外国人観光客の増加も期待できる。新規の農家と直接契約して酒造好適米の増産につなげ、米作農家の経済的安定に貢献したいと考えている。

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出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成27年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。