ものづくり補助金平成27年度製造業山口県

高性能測定機導入による海外鉄道車両用空調制御装置のはんだ付け品質の向上

株式会社アート電子

この事例のポイント

  • 鉄道車両の空調制御マイコンは10〜20年の動作保証が求められ、過酷な温度変化や振動に耐えるための高度なはんだ付け品質が必要だった。
  • 高性能デジタルマイクロスコープ(VHX5000)を導入し、基板単体試験工程で空調マイコンのプリント配線板のはんだ付けを検査する体制とした。
  • 検査倍率が最大5,000倍となり、はんだの表面状態を1単位で確認できるようになったことで検査精度が向上した。

事業者のプロフィール

事業者名株式会社アート電子
所在地山口県
業種電子部品・デバイス・電子回路製造業
技術分野精密加工,接合・実装,測定計測

事業の背景

当社は鉄道車両向けの空調制御装置を製造しており、その制御マイコンは車両下のボックス内に設置されるため、温度変化や振動に耐える品質が求められている。受注案件は小ロット多品種で、はんだ付けは手作業に頼っていた。今後は鉄道車両の海外展開が見込まれ、先進国で老朽化した車両が発展途上国へ払い下げられる動きもある。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 品質・精度鉄道車両の空調制御マイコンは10〜20年の動作保証が求められ、過酷な温度変化や振動に耐えるための高度なはんだ付け品質が必要だった。
  • 品質・精度はんだは金属のため、温度変化や振動によりひび割れや剥がれを起こす可能性があった。
  • 人手・技能機械はんだ付けは熱や衝撃で基板を損傷するおそれがあり微調整が必要なため、また受注は小ロット多品種のため手作業で行っていた。
  • 人手・技能仕上がりが職人の能力に依存しており、受注拡大に伴い生産性と品質の向上が求められていた。
  • 品質・精度基板単体試験では実体顕微鏡や電子顕微鏡を使っていたが、拡大倍率が不足していた。
  • 生産能力複数箇所を検査するため作業時間がかかっていた。
  • 品質・精度検査員により検査結果にバラツキが出ていた。
  • 品質・精度検査結果の定量的な指標(数値)がなく、個人の感覚に依存していた。
  • 人手・技能精度の高い検査を実施できる検査員の配置が必要だった。

やったこと

高性能デジタルマイクロスコープ(VHX5000)を導入し、基板単体試験工程で空調マイコンのプリント配線板のはんだ付けを検査する体制とした。拡大倍率は最大5,000倍となり、はんだの表面状態を1単位で確認できるようになった。同機は検査対象を3Dで立体的に自動でピントを合わせる機能を持ち、対象物を置いてボタンを押すだけで検査できる。検査結果は数値で示されるため、作業品質目標を定量化して管理者が具体的な指示を出せるようにした。さらに、測定した高さ情報から「はんだ不良」の断面図を作成できるようにした。

事業の効果

検査倍率が最大5,000倍となり、はんだの表面状態を1単位で確認できるようになったことで検査精度が向上した。3Dで自動的にピントを合わせる機能により、検査の作業時間が短縮され、検査結果のバラツキも解消された。検査結果が数値化されたことで作業品質目標を定量化でき、製品不良率の低下につながっている。また、定量化された品質目標ははんだ技術者の養成や教育にも活用できると考えている。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで、採択された計画の標準を3として見ています。公開情報では判断できない観点は点数を出さず、平均にも入れていません

観点の平均2.9 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

この事例が強かった観点

  • 4
    強み・弱みを踏まえた優位性鉄道車両の海外展開や発展途上国の中古車両メンテナンス需要を捉え、職人依存の検査課題を踏まえて競争力を高める内容になっている。
  • 4
    課題の認識と解決検査結果のバラツキや職人依存といった課題を明示し、導入機器で数値化・定時化して不良率低下につなげる具体的な解決策が示されている。
  • 4
    顧客とニーズの裏付け鉄道車両の10〜20年の動作保証需要と、過酷環境への耐久性要求という顧客ニーズを整理し、品質向上が選ばれる理由につながっている。

伸びしろがあった観点

  • 2
    付加価値・賃上げの目標不良率の低下や生産性・品質向上に触れているが、付加価値額や賃上げの目標値は示されておらず、目標の実現可能性は読み取りにくい。
経営戦略との整合性3.7
  • これまでの取組との一貫性3

    過去から鉄道向け空調制御装置を手作業のはんだ付けで製造しており、その品質・生産性向上を目的に本事業を決意した経緯が記載されている。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    鉄道車両の海外展開や発展途上国の中古車両メンテナンス需要を捉え、職人依存の検査課題を踏まえて競争力を高める内容になっている。

  • 課題の認識と解決4

    検査結果のバラツキや職人依存といった課題を明示し、導入機器で数値化・定時化して不良率低下につなげる具体的な解決策が示されている。

事業の実現可能性2.8
  • 付加価値・賃上げの目標2

    不良率の低下や生産性・品質向上に触れているが、付加価値額や賃上げの目標値は示されておらず、目標の実現可能性は読み取りにくい。

  • 事業を進める体制3

    既存の検査体制と課題を整理し、簡単操作の機器導入で検査員の技能差を補う体制を説明している。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    鉄道車両の10〜20年の動作保証需要と、過酷環境への耐久性要求という顧客ニーズを整理し、品質向上が選ばれる理由につながっている。

  • 事業化までの道筋2

    海外案件対応の方針や今後の展開に触れているが、遂行スケジュールや課題解決の具体的な手順は示されていない。

  • 財務と資金の調達3

    財務の状況は公開されている事例には出ないため、中間の3としています。

新市場性・高付加価値性3.0
  • 新しさ・高付加価値3

    鉄道向け高信頼性の空調制御装置で、はんだ付け検査に高倍率の測定機を用いる高付加価値な取組として位置づけられる。

公的補助の必要性2.7
  • 波及効果・雇用3

    技術の他分野(半導体・自動車・医療)への展開や、途上国の鉄道メンテナンス需要に触れ、波及効果がある。

  • 費用対効果2

    不良率の低下や生産性向上に言及しているが、補助金投入額に対する付加価値増加などの定量的な費用対効果は示されていない。

  • イノベーションへの貢献3

    3D自動ピント合わせ機能や測定データの高さ情報変換による断面図作成など、デジタル技術を検査に活用している。

政策面2.0
  • 成長分野への進出2

    鉄道分野の海外展開と他分野への技術展開に触れているが、日本経済の構造転換との関係は明示されていない。

  • 地域経済への波及2

    地域の特性や雇用創出、地域経済への効果に関する記述は見当たらず、触れているのは技術の海外展開のみである。

今後の展望

今後は鉄道車両の海外展開に合わせ、欧州を含む海外案件に対応していく方針である。発展途上国で正規メーカーのメンテナンスを受けられない車両について、商社を通じて修理メンテナンスの受注を目指す。また本事業で高めた技術力を生かし、半導体・自動車・医療など鉄道以外の分野への展開も見込んでいる。

業種と困りごとが近い成果事例

山口県製造業平成27年度

地方創生に貢献する最新連続充填ラインの確立

調合工程では、レモン皮をサイコロ状にカットする専用丸を備えたスライサーを導入し、レモン皮20kgの裁断時間を2時間から約10分に短縮した。

効果:レモン皮裁断時間 120分→10分

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成27年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです(画像のPDFを文字起こししてから読み取りました)。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。