ものづくり補助金平成29年度製造業静岡県

板紙を多色かつ小ロットで提供するための着色紙生産体制の確立

德三運輸倉庫株式会社

この事例のポイント

  • 色見本とのずれにより完成品の色ぶれが大きくロスが発生し、廃棄ロスが生じていた。
  • 本事業では、機械メーカーとの共同により「二層式循環種箱」を開発し、新たな着色工程を確立した。
  • 不良品流出率は0%に抑えられ、不良品の顧客への納品がなくなったことで失注の防止につながった。

事業者のプロフィール

事業者名德三運輸倉庫株式会社
所在地静岡県 静岡市清水区
業種パルプ・紙・紙加工品製造業
技術分野材料製造プロセス
資本金2,000万円
設立1984年

事業の背景

同社は昭和59年の創業以来、製紙業者や製紙関連物流業者を顧客に、製紙原料古紙や紙製品、飲料・電気機器・精密機器などの配送を主力としてきた。平成28年2月に原料配送先でありかつ資本関係にあった製紙業者を吸収合併し、製紙部として原料調達から製品製造までの一貫体制を構築した。製紙部は古紙を主原料とした段ボール用やショッピングバッグなどの製袋用の板紙を主力として製造・販売している。板紙の内需が低迷するなか、通信販売事業者などが梱包材の差別化を図る動きが広がり、段ボールライナーを染色したいという顧客の要望が寄せられていた。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 品質・精度色見本とのずれにより完成品の色ぶれが大きくロスが発生し、廃棄ロスが生じていた。
  • 生産能力染料の定着度が低く濃い色が出しにくいため、歩留まりが低かった。
  • 生産能力染色を切り替える際に原料残渣の処理が発生し、原料ロスの原因となっていた。
  • 品質・精度完成品の色の検査が熟練者の目視による定点観測であったため、不良品が顧客に納品されることがあった。
  • 販路・情報発信大手メーカーが対応できない多色・小ロットの需要を取り込むための着色の仕組みがなかった。

やったこと

本事業では、機械メーカーとの共同により「二層式循環種箱」を開発し、新たな着色工程を確立した。従来は抄紙機に送られる懸濁液へ染料が加えられていたが、種箱内部で懸濁液と染料が混合されるよう改善し、モーター駆動のスクリューで懸濁液を循環させて染料の定着度合いを高めた。また、二層式としたことで段取り替えによる原料ロスの低減を図った。検査体制では「オンライン分光測色システム」を導入し、製造ラインの最終工程前に製品全量を常時監視できるようにした。モニター上には分光分布図、色差値、偏色判定図などが表示され、所定の色差が生じた場合などの異常を検知できるようになった。

加工機二層式循環種箱
検査測定オンライン分光測色システム

新しい製品・サービス:多色・小ロットに対応した着色板紙(着色紙)の生産体制

事業の効果

不良品流出率は0%に抑えられ、不良品の顧客への納品がなくなったことで失注の防止につながった。染料歩留まりは約10%向上し、原料ロスの低減とあわせて生産の効率が高まった。二層式循環種箱により濃い色や安定した色の色板紙を製造できるようになり、多色・小ロットの需要に応えられる体制が整った。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.9 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性73%
  • これまでの取組との一貫性3

    内需停滞からの生き残りのため自社の差別化を図るとあり、製紙部の50年以上の技術・ノウハウを活かす流れは読み取れるが、経営戦略上の位置付けの明示は薄い。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    大手メーカーが対応できない多色・小ロットの着色紙生産体制を確立したと明記され、顧客ニーズと自社の差別化の関係が具体的に読み取れる。

  • 課題の認識と解決4

    色ぶれによるロスや検査の目視依存という課題を明示し、二層式循環種箱と測色計で解決する計画と結果が書かれている。

事業の実現可能性52%
  • 付加価値・賃上げの目標3

    不良品流出率0%や染料歩留まり約10%向上という数値はあるが、補助事業の付加価値額や賃上げの目標値は書かれていない。

  • 事業を進める体制2

    機械メーカーとの共同開発と製紙部の体制には触れるが、補助事業を遂行する人材や事務体制の具体的記述はうかがえる程度。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    多色・小ロット対応、ブランディングとして配送用梱包材の差別化を求める顧客ニーズが具体的に示されている。

  • 事業化までの道筋3

    二層式循環種箱の開発と測色システム導入という遂行方法は書かれるが、スケジュールや中長期の検証内容は読み取れない。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    段ボール用や製袋用の板紙が一般的な中で、染色した多色・小ロット板紙で高付加価値化を図る点が読み取れる。

公的補助の必要性60%
  • 波及効果・雇用2

    SDGs観点の古紙リサイクルへの関心に触れるが、雇用創出や経済波及の具体的な記述は乏しい。

  • 費用対効果3

    歩留まり向上や不良品流出率0%など効果は示されるが、補助金投入額に対する費用対効果の数値は書かれていない。

  • イノベーションへの貢献4

    オンライン分光測色システムによる製品全量の常時監視など、デジタル技術の活用による製造工程の刷新が具体的に書かれている。

政策面40%
  • 成長分野への進出2

    内需低迷の中で新たな需要を取り込む動きは書かれるが、構造転換への言及は明確ではない。

  • 地域経済への波及2

    静岡市清水区の所在は分かるが、地域の特性を活かした雇用や地域成長への言及はほぼない。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成29年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。