ものづくり補助金平成29年度製造業山口県

「新・蒸しシステム」の導入による海外展開に向けての基盤づくり

八百新酒造株式会社

成果1日の白米の最大処理能力は1,500kgとなり、最大200%の増産が可能な体制が整った。

この事例のポイント

  • 旧来型の和釜と甑による蒸しは気象条件で蒸米の吸水率が変わるおそれがあり、増産を妨げる最大のボトルネックになっていた。
  • 蒸米の品質と処理量の課題を解決するため、歴史的な建屋とは別に新たな蔵を構えて新ラインを新設した。
  • 1日の白米の最大処理能力は1,500kgとなり、最大200%の増産が可能な体制が整った。蒸米の再現性が高まり、より質の高い麹づくりが可能になった。

事業者のプロフィール

事業者名八百新酒造株式会社
所在地山口県 岩国市
業種飲料・たばこ・飼料製造業
技術分野製造環境,機械制御
従業員数10人
資本金1,000万円
設立1877年

事業の背景

明治10年創業の蔵元で、歴史的な建屋を増築して使ってきた。主力は日本酒ブランド「應木」で、出荷量の95%を国内市場が占めている。国内の販売量は伸びているが、将来的には人口減少に伴い国内市場は縮小していくと予想されていた。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 生産能力旧来型の和釜と甑による蒸しは気象条件で蒸米の吸水率が変わるおそれがあり、増産を妨げる最大のボトルネックになっていた。
  • 人手・技能建屋が増築を繰り返して複雑に入り組んでおり、作業工程の動線が長く効率化が求められていた。
  • 生産能力増産のための機械装置を導入するスペースが確保できない状況だった。

やったこと

蒸米の品質と処理量の課題を解決するため、歴史的な建屋とは別に新たな蔵を構えて新ラインを新設した。導入した「新・蒸しシステム」は、整蒸器、スーパーヒーター、三層式分割甑で構成される。整蒸器は外気の温度や湿度に影響されず一定の蒸気量を供給し、蒸米の吸水率を均一にする。スーパーヒーターは湿り蒸気を再加熱して乾き蒸気を作り、蒸し工程の最後に使うことで、米粒がバラバラに独立し表面が乾きつつ内側は水分が多い「外硬内軟」の蒸米に仕上げる。三層式分割甑は従来の甑の2倍の処理量があり、麹用・酒母用・仕込み用など数種類の米を同時に均一に蒸し上げられる。

  • 加工機整蒸器スーパーヒーター三層式分割甑

事業の効果

  • 1日の白米の最大処理能力は1,500kgとなり、最大200%の増産が可能な体制が整った。

蒸米の再現性が高まり、より質の高い麹づくりが可能になった。麹が仕込みタンクの中で長時間持続的に働き、米が最後までじっくり溶ける理想的なアルコール発酵が行えるようになり、「應木」の高品質化と安定化につながった。処理能力の向上により仕込みスケジュールに余裕が生まれ、ローテーションが組みやすくなって従業員の負荷軽減にもつながった。さらに、品質向上によりブランド力が強化された。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで、採択された計画の標準を3として見ています。公開情報では判断できない観点は点数を出さず、平均にも入れていません

観点の平均2.9 / 514観点のうち13観点で評価

出典:公募要領 p.44(審査項目)

この事例が強かった観点

  • 4
    強み・弱みを踏まえた優位性国内出荷量の95%を占める国内市場の縮小予想を踏まえ、品質向上によるブランド力強化で海外展開の基盤を作ると明記している。
  • 4
    課題の認識と解決蒸米の吸水率ムラや和釜のボトルネックを課題として特定し、処理量2倍と1日1,500kg、最大200%増産という数字で解決を示している。

伸びしろがあった観点

  • 2
    事業を進める体制申請書作成に山口県産業技術センターの支援を受けたとあるが、事業遂行を担う人材や事務体制の記述は薄い。
経営戦略との整合性3.7
  • これまでの取組との一貫性3

    江戸末期の本蔵増築による動線の長さや増産スペース不足という過去からの課題を受け、新蔵と新蒸しシステムを新生産方式の中核に位置付けている。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    国内出荷量の95%を占める国内市場の縮小予想を踏まえ、品質向上によるブランド力強化で海外展開の基盤を作ると明記している。

  • 課題の認識と解決4

    蒸米の吸水率ムラや和釜のボトルネックを課題として特定し、処理量2倍と1日1,500kg、最大200%増産という数字で解決を示している。

事業の実現可能性2.8
  • 付加価値・賃上げの目標3

    1日の白米最大処理能力1,500kg、最大200%増産が可能な体制と示され、目標の水準は明確である。

  • 事業を進める体制2

    申請書作成に山口県産業技術センターの支援を受けたとあるが、事業遂行を担う人材や事務体制の記述は薄い。

  • 顧客とニーズの裏付け3

    「襟木」の品質向上がブランド力強化につながり、国内市場の販売量の伸びが続いていると述べ、選ばれる理由が示されている。

  • 事業化までの道筋3

    国内市場の深掘り、展示会やオンラインでの発信、JETROとの連携による海外販促プログラムと段階的な計画が示されている。

  • 財務と資金の調達3

    財務の状況は公開されている事例には出ないため、中間の3としています。

新市場性・高付加価値性3.0
  • 新しさ・高付加価値3

    乾き蒸気を用いる外硬内軟の蒸米など独自の製法で高品質化を図り、高付加価値の日本酒を目指すことが読み取れる。

公的補助の必要性2.3
  • 波及効果・雇用3

    働きやすい環境づくりによる働き手の定着や次の成長ステージへの展開が述べられ、雇用面の波及が読み取れる。

  • 費用対効果2

    投資額や費用対効果の数字は示されておらず、処理量や増産率の効果のみで費用対効果は判断しにくい。

  • イノベーションへの貢献2

    蒸気制御の設備導入による高度化は見られるが、デジタル技術や地域・サプライチェーンへの貢献の記述は乏しい。

政策面3.0
  • 成長分野への進出ー

    公開情報では判断できません。

  • 地域経済への波及3

    岩国市の地域の酒蔵として、地域に根ざした醸造を続けつつ海外展開を目指す事業であることが読み取れる。

今後の展望

国内市場の深掘りと海外マーケティングを推進する。展示会やイベント、オンラインで積極的に情報を発信し、JETROとの連携を強化して各国に適した販売促進プログラムを組み、海外市場への戦略的なアプローチを行っていく。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成29年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです(画像のPDFを文字起こししてから読み取りました)。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。