ものづくり補助金平成30年度製造業静岡県

新規スピクリスポール酸の生産プロセス改善による競争力強化事業

磐田化学工業株式会社

成果スピクリの生産量 1倍→1.77倍

この事例のポイント

  • 従来の発酵・精製方法ではスピクリを生産できる量が限られており、価格が高くなる要因となっていた。
  • 発酵工程では、「恒温振とう培養器」等の設備一式を導入し、発酵条件(原料、酸素量、温度等)を見出したうえで、その環境を一定に保持できるようにした。
  • スピクリの生産量 1倍→1.77倍。新規プロセスにより、潜在的市場がある天然由来の界面活性剤スピクリスポール酸を従来より低価格で提供できる目途が立った。

事業者のプロフィール

事業者名磐田化学工業株式会社
所在地静岡県 磐田市
業種化学工業
技術分野バイオ
資本金8,625万円
設立1957年

事業の背景

同社は微生物を利用した発酵技術を用い、食品添加物や医薬品、工業用のクエン酸などの有機酸の販売と、粉末食品・飲料などの受託製造を行っている。界面活性剤は石油由来のものが主流で、発酵由来のものは機能性が高いものの大量生産の技術が確立されていない。同社は天然界面活性剤スピクリスポール酸を製造する世界唯一の企業であり、化粧品メーカーを中心に問い合わせが増えていた。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 生産能力従来の発酵・精製方法ではスピクリを生産できる量が限られており、価格が高くなる要因となっていた。
  • 生産能力精製工程の「加熱→濾過→粉末化」は回収率(歩留まり)が低く、加熱・濾過を用いない新たな製法に一新して回収率を上げる必要があった。
  • 生産能力スピクリを生産するカビの生産能力を最大限発揮させるための発酵条件と、その環境を一定に保つ設備が必要だった。
  • 新製品・新技術天然界面活性剤は大量生産の技術が確立されておらず、製品化されているものは数件のみだった。
  • 販路・情報発信石油由来品は1kgあたり数百円から3,000円で取引されるのに対し、スピクリは価格が高く、引き合いがあっても折り合いがつかず取引に至っていなかった。

やったこと

発酵工程では、「恒温振とう培養器」等の設備一式を導入し、発酵条件(原料、酸素量、温度等)を見出したうえで、その環境を一定に保持できるようにした。精製工程では「多目的冷却遠心分離機」等を導入し、加熱・濾過の代替製法として「遠心分離→カラム精製」を用いて製品を製造するプロセスに一新した。さらに、導入した瓶詰機により生産性を向上させた。製造した試作品については、抗炎症作用や保湿性などの機能性について評価・検証を実施した。

その他恒温振とう培養器
その他多目的冷却遠心分離機
その他瓶詰機

新しい製品・サービス:新規生産プロセスで製造したスピクリスポール酸

事業の効果

  • スピクリの生産量 1倍→1.77倍

新規プロセスにより、潜在的市場がある天然由来の界面活性剤スピクリスポール酸を従来より低価格で提供できる目途が立った。精製工程では本工程でのスピクリ回収率が目標値の75%を上回る81.9%に達し、実用化できる方法であることが確認できた。試作品は化粧品に使っても肌への負担が軽く、美白や保湿、抗炎症作用を期待できる高い機能性を有していることが確認できた。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.9 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性73%
  • これまでの取組との一貫性3

    環境貢献型ものづくり企業を目指す取組の延長として新製法を開発したと読めるが、過去の取組との連続性を具体的に示す記述は少ない。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    化粧品メーカーからの問い合わせ増加と、石油系界面活性剤より機能性が高い点、世界唯一の製造企業という強みが具体的に書かれている。

  • 課題の認識と解決4

    加熱・濾過の精製工程で回収率が低いという課題を認識し、カラム精製で回収率81.9%(目標75%超)を得た具体的な改善が書かれている。

事業の実現可能性52%
  • 付加価値・賃上げの目標3

    生産量を従来の1.77倍にしたとの数値はあるが、付加価値額や賃上げの目標値は書かれておらず、実現可能性の判断は限定的。

  • 事業を進める体制2

    事業の実施を担った開発室長の存在がうかがえるが、人材や事務処理体制の具体的な記述は見当たらない。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    化粧品メーカーを中心とした引き合いと、美白・保湿・抗炎症作用という機能性で選ばれる理由が具体的に整理されている。

  • 事業化までの道筋3

    発酵条件の確立から精製工程の改修、試作品評価、受注獲得への営業活動までの流れは読めるが、スケジュールや期間の記載はない。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性100%
  • 新しさ・高付加価値5

    天然界面活性剤は大量生産技術が未確立で製品化は数件のみとされ、同社は世界唯一の企業と記載されている。

公的補助の必要性47%
  • 波及効果・雇用2

    化粧品や洗剤等で幅広く使われる界面活性剤の石油系からの置換という意義はうかがえるが、波及効果や雇用創出の記載は乏しい。

  • 費用対効果3

    生産量1.77倍、回収率81.9%という数値はあるが、補助金額に対する付加価値増加や費用対効果の記述はない。

  • イノベーションへの貢献2

    微生物発酵による天然素材の生産という新たな製法がうかがえるが、デジタル技術やサプライチェーンへの貢献は書かれていない。

政策面40%
  • 成長分野への進出2

    石油由来から天然由来への素材転換という方向性がうかがえるが、日本経済の構造転換に言及した記述はない。

  • 地域経済への波及2

    静岡県磐田市の企業だが、地域の特性を活かした付加価値や地域経済への波及についての記述は見当たらない。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

現在、国内外の大手化粧品メーカーを中心に引き合いがあり、サンプルを提供するなど受注獲得に向けた営業活動を行っている。天然界面活性剤の本格的な実用化に向け、さらなる改善を図っていく。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成30年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。