ものづくり補助金平成30年度製造業佐賀県

アジア市場開拓に向けて新型自動醪もろみ搾しぼり機きを導入しフルーティーで上質な純米吟醸酒を開発

矢野酒造株式会社

成果上槽工程の所要時間 20時間→12時間

この事例のポイント

  • 熟成した醪を清酒と酒粕に分ける上槽工程に旧式圧搾機を使っており、搾り終えるまで20時間以上かかっていた。
  • 上槽工程の旧式圧搾機を新型の自動醪搾機(薮田式自動醪搾機)に替えた。
  • 上槽工程の所要時間 20時間→12時間。上槽工程の時間が短縮され、酸化による香味の劣化が抑えられ、米のうま味を生かした純米酒を造れるようになった。

事業者のプロフィール

事業者名矢野酒造株式会社
所在地佐賀県 鹿島市
業種飲料・たばこ・飼料製造業
技術分野バイオ
従業員数9人
資本金1,000万円
設立1953年

事業の背景

創業は1796年で、代表取締役は9代目にあたる。銘柄「肥前蔵心」「竹の蔵」などの日本酒を、杜氏と蔵人が手づくりで小ロット生産し販売している。主な販売市場の佐賀県は少子高齢化と人口減少の影響で市場の縮小が予測されていた。そこで人口増加と生活水準の向上が見込まれるアジア圏に目を向け、取引先は従来4カ国だった。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 生産能力熟成した醪を清酒と酒粕に分ける上槽工程に旧式圧搾機を使っており、搾り終えるまで20時間以上かかっていた。
  • 品質・精度上槽工程に時間がかかるため、その間に酸化が進み香味が劣化するのを防げなかった。
  • 品質・精度圧搾機の濾布を洗浄時に外せず酸臭が発生し、活性炭素による濾過処理を何度も行う必要があり、香りやうま味を損なっていた。

やったこと

上槽工程の旧式圧搾機を新型の自動醪搾機(薮田式自動醪搾機)に替えた。圧搾機には70枚の圧搾パネルと同数の濾布が装着されているが、濾布をホック脱着式に変更して洗浄時に外せるようにし、酸臭の原因をなくした。麹づくりは半自動機械から熟練の蔵人による手作業に変更した。圧搾機の組み立てや工程の見直しで、作業にゆとりを生む体制を整えた。

加工機薮田式自動醪搾機
その他ホック脱着式の濾布

新しい製品・サービス:フルーティーで上質な純米吟醸酒、発酵由来のガスを残した発泡感のある日本酒、濾過して澄んだ酒にあえて濁りを加えたお酒

事業の効果

  • 上槽工程の所要時間 20時間→12時間
  • 圧搾機の組み立て日数 20日→2日
  • 海外市場の売上比率 1%→8%
  • 取引先の国数 4カ国→9カ国

上槽工程の時間が短縮され、酸化による香味の劣化が抑えられ、米のうま味を生かした純米酒を造れるようになった。濾過作業を省けたことで上槽から瓶詰めまでの工程サイクルが早まり、品質の良い状態で酒を提供できるようになった。海外の取引先が増えて海外売上も大きく伸び、新商品の開発の選択肢も広がった。圧搾機の組み立て期間の短縮で他の作業にゆとりが生まれ、新酒づくりの繁忙期にも休みが取れるようになった。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.7 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性73%
  • これまでの取組との一貫性3

    当酒蔵が今後も継続して成長するための鍵として海外市場開拓を位置付けており、方向性は示されているが、過去の取組との連続性は具体的に書かれていない。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    佐賀県で人口減少により市場縮小が予測される一方、アジア圏は人口増加と生活水準向上が見込まれるとし、小ロット生産という強みを踏まえている。

  • 課題の認識と解決4

    上槽に20時間以上かかり酸化で香味が劣化する課題を明示し、自動醪搾機で12時間に短縮し純米吟醸の製造を可能にしたと具体的に書かれている。

事業の実現可能性44%
  • 付加価値・賃上げの目標2

    海外市場の売上が1%から8%に上昇したとあるが、これは結果であり、今後の付加価値額や賃上げに関する目標値は示されていない。

  • 事業を進める体制2

    従業員9人の小規模な酒蔵で、杜氏と蔵人が手づくりにこだわっていることは書かれているが、補助事業を遂行する体制の詳細は読み取れない。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    アジア市場向けにフルーティーで上質な純米吟醸酒を開発し、海外バイヤーに好評で取引先が4カ国から9カ国に広がったと具体的に書かれている。

  • 事業化までの道筋2

    圧搾機の組立が20日間から2日間に短縮されたとあるが、中長期の課題検証や今後のスケジュール、課題解決の方法は書かれていない。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性60%
  • 新しさ・高付加価値3

    最高級の純米吟醸酒を目指すとあるが、高価格化や分野内での高水準化を示す数字や事実は書かれていない。

公的補助の必要性47%
  • 波及効果・雇用2

    江戸時代から酒造りが盛んな鹿島市にあることは書かれているが、経済波及効果や雇用創出など国が補助する理由はうかがえない。

  • 費用対効果3

    搾り時間の短縮や組立日数の短縮など作業効率の改善は示されているが、投入額や付加価値増加など費用対効果の数字は書かれていない。

  • イノベーションへの貢献2

    自動化による品質向上や工程短縮はうかがえるが、先端的なデジタル技術の活用やサプライチェーンへの貢献は書かれていない。

政策面60%
  • 成長分野への進出3

    国内市場縮小を受けて海外市場へ進出し、売上の一部が1%から8%に上昇したと書かれており、市場転換の方向性は示されている。

  • 地域経済への波及3

    鹿島市の気候や水、米に恵まれた地域特性を活かした地酒づくりに触れているが、雇用や地域経済の成長への波及は書かれていない。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

近年日本酒を好む客が増え、熟成した市場ではよりおいしく個性的な酒が求められている。新しい挑戦が必要となる中、九州の酒販店の開拓や国内の市場調査にも力を入れ、矢野酒造を選んでもらえる酒造りを目指している。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成30年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。