ものづくり補助金平成24年度山口県

白麹を使用することによる酸味に特徴がある清酒の製造

酒井酒造株式会社

この事例のポイント

  • 清酒醸造には黄麹菌を用いるのが通常で、白麹を同じ期間に並行して使うと菌が混ざるおそれがあり、安定した製造ができない。
  • 県内240店舗の焼肉店で嗜好調査(甘辛・濃淡・アルコール度数など)を実施し、嗜好に合う酒質を目指した。
  • 試飲アンケートの実地調査により、すっきりした酸味を持つ日本酒が焼肉に合うことが確認された。

事業者のプロフィール

事業者名酒井酒造株式会社
所在地山口県 岩国市
業種食料品製造業
技術分野組込みソフトウェア
従業員数20人
資本金1,000万円
設立1950年

事業の背景

同社は明治4年創業の山口県岩国市の酒蔵で、銘酒「五橋」を製造している。日本酒市場は昭和50年頃をピークに縮小が続いてきたが、近年は女性向け商品や若い世代が日本酒を飲む機会の増加など、ブームの兆しが見られる。一方で日本酒は悪酔いする、種類が多くて難しいといったイメージが根強く、和食・魚料理のお供というイメージも強い。山口県は焼肉の激戦区で、焼肉は若い男女に利用される外食先だが、肉料理に合う酸味を基調とした日本酒は市場に存在しなかった。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 生産能力清酒醸造には黄麹菌を用いるのが通常で、白麹を同じ期間に並行して使うと菌が混ざるおそれがあり、安定した製造ができない。
  • 品質・精度黄麹菌と白麹菌では繁殖する温度帯が異なるため、精緻な温度管理が必要になる。
  • 新製品・新技術白麹を使うと酸が出過ぎるという難しさがあり、酸味と甘みのバランスを整える必要がある。

やったこと

県内240店舗の焼肉店で嗜好調査(甘辛・濃淡・アルコール度数など)を実施し、嗜好に合う酒質を目指した。麹の酵素力価・酒母・醪などの影響要素を分析・調整しながら開発を進めた。通常は使わない焼酎用の白麹を用い、レモン・柑橘類に含まれるクエン酸由来のすっきりした酸味を出すことに成功した。白麹と黄麹の混在を防ぐため、洗浄容易性の高い無通風自動製麹装置を導入し、菌の混在防止と精緻な温度管理を可能にした。白麹の酸を抑えるため甘みを高くし、製造工程で自然に生じる酸の利用にもこだわった。

新しい製品・サービス:肉料理(特に焼肉)に合う、白麹によるすっきりした酸味を持つ日本酒

事業の効果

試飲アンケートの実地調査により、すっきりした酸味を持つ日本酒が焼肉に合うことが確認された。低アルコールで飲みやすさを求める層(若い男女・中年の女性)と、高アルコールで味やこだわりを求める層(若い男女・中高年の男性)の2層にニーズがあることも分かり、商品化の酒質の方向性が定まった。白麹版の純米発泡酒ねねは若い世代向けに、純米生原酒Zファイブは一部店舗限定で商品化され、ねね白麹版は1500本が販売された。今後はネット販売や県外への拡大を見込み、黒麹も含めた新たな酒造り、ワインの代替酒としての洋風飲食店への展開も視野に入れている。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで、採択された計画の標準を3として見ています。公開情報では判断できない観点は点数を出さず、平均にも入れていません

観点の平均2.9 / 514観点のうち13観点で評価

出典:公募要領 p.44(審査項目)

この事例が強かった観点

  • 5
    新しさ・高付加価値清酒醸造で通常用いない白麹を使い、肉料理に合う酸味を基調とした日本酒は存在しないと述べられ、ニッチ分野での差別化が明確である。
  • 4
    強み・弱みを踏まえた優位性県内240店舗の焼肉店への嗜好調査や、焼肉激戦区の山口県という市場環境が具体的に述べられ、白麹による差別化も示されている。
  • 4
    顧客とニーズの裏付け肉料理の脂を洗い流す酸味という価値、焼肉店向けの顧客ターゲット、アンケートによるニーズ裏付けが具体的に書かれている。

伸びしろがあった観点

  • 2
    これまでの取組との一貫性過去の取組との一貫性は書かれず、伝統的な酒造りや木桶仕込みの復刻が背景にあるとうかがえる程度である。
経営戦略との整合性3.0
  • これまでの取組との一貫性2

    過去の取組との一貫性は書かれず、伝統的な酒造りや木桶仕込みの復刻が背景にあるとうかがえる程度である。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    県内240店舗の焼肉店への嗜好調査や、焼肉激戦区の山口県という市場環境が具体的に述べられ、白麹による差別化も示されている。

  • 課題の認識と解決3

    日本酒市場の縮小という課題と肉料理向け酸味酒での展開は読み取れるが、高付加価値化や成長への計画の具体性は薄い。

事業の実現可能性2.8
  • 付加価値・賃上げの目標2

    販売本数1500本などの実績はあるが、付加価値額や賃上げの目標値は書かれておらず、わずかにうかがえる程度である。

  • 事業を進める体制2

    事業遂行体制や人材、事務処理能力についての記述は見当たらず、わずかにうかがえる程度である。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    肉料理の脂を洗い流す酸味という価値、焼肉店向けの顧客ターゲット、アンケートによるニーズ裏付けが具体的に書かれている。

  • 事業化までの道筋3

    ネット販売や県外拡大、黒麹やワイン代替への展開など今後の方向は示されるが、スケジュールや課題解決方法は具体性が薄い。

  • 財務と資金の調達3

    財務の状況は公開されている事例には出ないため、中間の3としています。

新市場性・高付加価値性5.0
  • 新しさ・高付加価値5

    清酒醸造で通常用いない白麹を使い、肉料理に合う酸味を基調とした日本酒は存在しないと述べられ、ニッチ分野での差別化が明確である。

公的補助の必要性2.5
  • 波及効果・雇用2

    地域の焼肉店や山口県の食文化への関わりはうかがえるが、経済波及や雇用創出の数値などは示されていない。

  • 費用対効果ー

    公開情報では判断できません。

  • イノベーションへの貢献3

    最先端製麹装置による菌の混在防止と温度管理は技術革新にあたるが、サプライチェーンへの貢献や地域イノベーションとしての記述は薄い。

政策面2.5
  • 成長分野への進出2

    日本酒市場の縮小からブームへの変化に触れ、新市場開拓という方向性はうかがえるが、構造転換への言及はない。

  • 地域経済への波及3

    山口県の焼肉激戦区という地域特性を活かした商品開発であることが読み取れるが、雇用や地域成長への言及は乏しい。

今後の展望

純米発泡酒ねね(白麹版)はネット販売も視野に入れ県外への拡大を見込む。最先端製麹装置により複数の麹が扱えるようになったため、黒麹も含めた新たな酒造りに取り組み、酒質・ボトルの改良を行い、ワインの代替酒として洋風の飲食店への展開も見込む。

  • 目標:1500本が販売された(純米発泡酒ねね白麹版)

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成24年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです(画像のPDFを文字起こししてから読み取りました)。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。