ものづくり補助金平成24年度宮崎県

難燃性樹脂コンパウンドの試作開発

安井株式会社

成果既存の難燃性樹脂に比べ、UL94規格の最高レベルV-0を達成した。

この事例のポイント

  • 既存の難燃性樹脂は難燃性を高めると加工性が著しく低下し、実用化に多くの課題が残っていた。
  • 押出成形機を導入して樹脂のコンパウンドを可能にし、成形加工と結びつける材料複合化技術を活用した。
  • 既存の難燃性樹脂に比べ、UL94規格の最高レベルV-0を達成した。ポリカーボネート樹脂にリグニン由来物質と既存のリン系難燃剤を同じ比率で併用することで相乗効果が得られ、UL94規格の最…

事業者のプロフィール

事業者名安井株式会社
所在地宮崎県 門川町
業種プラスチック製品製造業
技術分野部材の締結

事業の背景

当社はプラスチック成形事業を行い、ポリカーボネート樹脂を原料とした透明製品を得意とし、主に医療機器関連のプラスチック部品を製造している。ポリカーボネート樹脂はOA機器、携帯電話、自動車、航空機などに広く使われ、リチウムイオン電池には発熱や発火の予防策として難燃性樹脂製のカバー装着が義務付けられている。これまで無機フィラーやリン酸エステル系、ポリ乳酸などを添加して難燃性向上を試みてきたが、加工性が大きく低下しコストダウンの目標から大きく外れていた。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 新製品・新技術既存の難燃性樹脂は難燃性を高めると加工性が著しく低下し、実用化に多くの課題が残っていた。
  • コスト・採算既存製品は高価で、ユーザーから価格と加工性の改善を強く求められていた。
  • 品質・精度成形品の薄肉化の要請に応えるため、難燃性を保ちつつ樹脂の高流動化など加工性の向上が必要になっていた。

やったこと

押出成形機を導入して樹脂のコンパウンドを可能にし、成形加工と結びつける材料複合化技術を活用した。間伐材、林地残材、製材くずなどから合成されたリグニン由来物質を、ポリカーボネート樹脂に添加する最適量を検討し、相溶化剤や安定剤等の添加剤も研究開発した。押出機内の混練り状態の検討と混練り条件(温度、圧力、滞留時間、吐出量、スクリュー回転数)の検討を行い、添加比率と条件を組み合わせて最適な条件を探し、コンパウンド樹脂ペレットを作製した。評価用のJIS規格ダンベルを射出成形するため金型を作製し、成形条件を調整しながら試作を行った。試作品では樹脂の混練り状態の観察や、難燃性、加工性、機械的強度(引張り、曲げなど)の評価を行い、結果をフィードバックして試作を繰り返した。

  • 加工機押出成形機
  • 金型評価用JIS規格ダンベル射出成形金型

新しい製品・サービス:リグニン由来物質を添加した難燃性樹脂コンパウンド

事業の効果

  • 既存の難燃性樹脂に比べ、UL94規格の最高レベルV-0を達成した。
  • ベース樹脂のポリカーボネートや既存の難燃性樹脂に比べて向上した。

ポリカーボネート樹脂にリグニン由来物質と既存のリン系難燃剤を同じ比率で併用することで相乗効果が得られ、UL94規格の最高レベルV-0を達成した。加工性指標(MFR)もベース樹脂や既存の難燃性樹脂より向上した。一方、リグニン由来物質を添加すると伸び(破断)が著しく低下したが、ポリカーボネートのグレード変更や事前処理の検討により改善が確認できた。製造方法は新規性・進歩性が高いと判断され、特許を出願中である。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで、採択された計画の標準を3として見ています。公開情報では判断できない観点は点数を出さず、平均にも入れていません

観点の平均3.5 / 514観点のうち13観点で評価

出典:公募要領 p.44(審査項目)

この事例が強かった観点

  • 5
    新しさ・高付加価値UL94でV-0を達成し、既存難燃樹脂より加工性指標MFRも向上させており、同分野で高水準の性能を実現している。
  • 4
    強み・弱みを踏まえた優位性既存難燃樹脂は高価で加工性が低いという市場の課題に対し、リグニン由来物質で安価かつ加工性の高い樹脂を目指す優位性が示されている。
  • 4
    課題の認識と解決加工性低下・高コストという課題を特定し、添加比率や混練条件を変えて試作を繰り返し解決に向かう実効的な計画になっている。

伸びしろがあった観点

  • 2
    付加価値・賃上げの目標高い付加価値創出や賃上げにつながる具体的な数値目標は記載がなく、目標値の実現可能性は読み取りにくい。
経営戦略との整合性3.7
  • これまでの取組との一貫性3

    ポリカーボネート透明製品や医療機器部品を得意とし、難燃性樹脂の課題に取り組んできた過去の開発の延長にある取組と読める。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    既存難燃樹脂は高価で加工性が低いという市場の課題に対し、リグニン由来物質で安価かつ加工性の高い樹脂を目指す優位性が示されている。

  • 課題の認識と解決4

    加工性低下・高コストという課題を特定し、添加比率や混練条件を変えて試作を繰り返し解決に向かう実効的な計画になっている。

事業の実現可能性3.0
  • 付加価値・賃上げの目標2

    高い付加価値創出や賃上げにつながる具体的な数値目標は記載がなく、目標値の実現可能性は読み取りにくい。

  • 事業を進める体制3

    押出成形機を導入し、金型作製や評価を自社で実施する体制が示されており、遂行能力は一定程度読み取れる。

  • 顧客とニーズの裏付け3

    ユーザーから改善要請が寄せられていたという需要の裏付けがあり、難燃性と加工性の両立という選ばれる理由が整理されている。

  • 事業化までの道筋4

    透明性の課題を化学的処理で解決する方針や、伸び低下に対するグレード変更の検討など、課題と解決方法が具体的に示されている。

  • 財務と資金の調達3

    財務の状況は公開されている事例には出ないため、中間の3としています。

新市場性・高付加価値性5.0
  • 新しさ・高付加価値5

    UL94でV-0を達成し、既存難燃樹脂より加工性指標MFRも向上させており、同分野で高水準の性能を実現している。

公的補助の必要性4.0
  • 波及効果・雇用4

    未利用資源の間伐材を活用し、山間地域での新しい雇用創出や森林資源の活用に寄与する可能性が示されている。

  • 費用対効果ー

    公開情報では判断できません。

  • イノベーションへの貢献4

    未利用資源由来のリグニン素材を用いた新規素材の材料複合化技術で、サプライチェーンに新たな素材選択肢をもたらす点が読み取れる。

政策面3.5
  • 成長分野への進出3

    リチウムイオン電池などで需要が拡大する難燃性樹脂市場への進出を目指しており、成長分野への参入として読み取れる。

  • 地域経済への波及4

    宮崎県の豊富な森林資源を活かし、山間地域での生産と新たな雇用の場を期待する地域特性を活かした計画になっている。

今後の展望

新規難燃性樹脂として事業化の見通しが立ってきた段階である。ただし、リグニン由来物質を添加すると樹脂が黒色になり、従来品との差別化が課題として残っている。事前に化学的処理を行うことで透明性を確保し、難燃性と透明性を兼ね備えた高付加価値製品の開発を継続している。難燃性樹脂市場が拡大すればリグニン由来物質の需要も高まると見込み、山間地域での生産が望ましく、事業化すれば宮崎県の農山村地域での新たな雇用も期待できるとしている。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成24年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです(画像のPDFを文字起こししてから読み取りました)。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。