ものづくり補助金平成25年度製造業岩手県

消費者ニーズに合わせた貯蔵出荷管理技術及び情報提供技術改善のための設備投資計画

株式会社わしの尾

成果自然放熱で4〜6日を要していた冷却を約2時間40分(160分)に短縮

この事例のポイント

  • 都市部の若い世代を中心に日本酒への関心が高まる中、消費者が求めるフレッシュ感のある清酒を実現する貯蔵管理技術が必要だった。
  • 火入れ後の清酒を急冷するため、簡易型火入酒急冷装置(プレート式熱交換器)を導入した。
  • 自然放熱で4〜6日を要していた冷却を約2時間40分(160分)に短縮。急冷装置の導入により、火入れ後の冷却時間を自然放熱の4〜6日から約2時間40分に大幅に短縮できた。

事業者のプロフィール

事業者名株式会社わしの尾
所在地岩手県 八幡平市
業種飲料・たばこ・飼料製造業
技術分野情報処理,製造環境
従業員数13人
資本金2,000万円
設立1829年

事業の背景

当社は1829年の創業以来、岩手県八幡平市で日本酒を製造・販売しており、生産量のほぼ全量を県内に出荷している。約10銘柄を持ち、先々代の頃から普通酒を大切に造ることを基本としてきた。近年は地方への注目や和食のユネスコ無形文化遺産登録もあり、日本酒が再評価されている。消費者はフレッシュ感のある味わいに加えて、より詳しい商品情報を求める傾向が強まっている。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 集客・繁閑都市部の若い世代を中心に日本酒への関心が高まる中、消費者が求めるフレッシュ感のある清酒を実現する貯蔵管理技術が必要だった。
  • 品質・精度火入れ後の高温状態から清酒を早く冷やす方法は以前から検討していたが、既存の冷却方法は設備や安全性の面で採用が難しかった。
  • 販路・情報発信消費者が求める詳しい商品情報を迅速に提供するため、製造と出荷の情報を一元管理する仕組みが不足していた。

やったこと

火入れ後の清酒を急冷するため、簡易型火入酒急冷装置(プレート式熱交換器)を導入した。装置はタンク内の清酒を熱交換器に通して循環させ、温度を急激に下げる仕組みで、移し替えたタンクの殺菌も同時にでき安全性にも優れる。急冷試験でタンク形状により温度分布が不均一になったため、必要なタンクに清酒を吸い上げる上昇ノズルを追加した。普通酒のタンクで繰り返し試験を行い、瓶詰め直後の味わいと熟成後の味わい変化を評価した。製造と出荷の情報を一元管理するため、トレーサビリティー機能を持つ製造管理ソフトを導入し、出荷管理ソフトと連動させた製品管理システムを構築した。

加工機簡易型火入酒急冷装置(プレート式熱交換器)
ソフト製造管理ソフト(トレーサビリティー機能付き)
ソフト製品管理システム(出荷管理ソフトと連動)

事業の効果

  • 自然放熱で4〜6日を要していた冷却を約2時間40分(160分)に短縮
  • 冷却時間 5,760分→160分

急冷装置の導入により、火入れ後の冷却時間を自然放熱の4〜6日から約2時間40分に大幅に短縮できた。冷却中の品質劣化が防がれ、軽やかな味わいと華やかな香りというフレッシュ感を実現した。急冷した製品は常温保存での味の劣化が少ないことも確認され、味のクレームが減ると期待される。製品管理システムにより製造年月と酒造年度の併記、飲食店などからの迅速で詳細な問い合わせ対応が可能になり、信頼度向上と販路拡大への貢献が見込まれる。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.9 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性73%
  • これまでの取組との一貫性4

    創業以来の日本酒製造を基盤に、普通酒重視の方針と急冷装置・製品管理システム整備が連続した取組として記載されている。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    他社は醸造技術が横並びで差別化が難しいと述べ、普通酒の味向上で差別化を図る方針が書かれているが、市場データは示されていない。

  • 課題の認識と解決4

    冷却に4〜6日を要していた課題を約2時間40分に短縮し、フレッシュ感と安全性の改善を実現したと具体的に記載されている。

事業の実現可能性56%
  • 付加価値・賃上げの目標3

    冷却時間の短縮実績は示されているが、付加価値額や賃上げの目標値は記載されていない。

  • 事業を進める体制2

    従業員13名の企業であることは書かれているが、補助事業を遂行する体制や人材の記載はわずかにうかがえる程度。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    消費者ニーズとして軽やかな味わいや安全志向を挙げ、普通酒を優先する理由と急冷装置の効果が整理されている。

  • 事業化までの道筋4

    急冷装置の導入経緯と試験、タンク形状への対策、今後の全種類への適用計画が時系列で示されている。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    普通酒を優先した高品質化と、他社との差別化による自社ブランド確立の方向性が具体的に示されている。

公的補助の必要性53%
  • 波及効果・雇用3

    地元の酒を地元で消費してもらう方針や和食の無形文化遺産登録に触れているが、波及効果や雇用創出の記述は薄い。

  • 費用対効果2

    冷却時間の短縮効果は示されているが、補助金投入額に対する費用対効果の数値は記載されていない。

  • イノベーションへの貢献3

    製造と出荷を一元管理するトレーサビリティ機能の導入が書かれているが、サプライチェーン全体への貢献は記載されていない。

政策面40%
  • 成長分野への進出1

    公開されている事例からは読み取れません。

  • 地域経済への波及3

    岩手県八幡平市の地元酒造として地域の酒を地元に届ける方針が書かれているが、地域経済の成長への言及は薄い。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

急冷装置により冷却した製品は現在、普通酒と一部の純米酒のみだが、今後は生産する全種類の酒へ装置の利用を目指している。また、他社との差別化を図り、強固な自社ブランドの確立につなげたいと考えている。

事業者の声

普通酒を大切に造っていく

公式の事例集より(原文のまま)

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成25年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。