ものづくり補助金平成26年度製造業千葉県

内視鏡手術用処置具の開発による医療機器製品製造分野への進出

有限会社岩井製作所

この事例のポイント

  • 歯科技工製品向けの内部部品を主力としてきたため、特定事業者への下請依存型の事業体制から脱却する必要があった。
  • φ16以下の精密加工技術を生かし、内視鏡手術用処置具の試作開発に取り組んだ。
  • 大学病院から内視鏡用処置具の試作品について高い評価を得た。

事業者のプロフィール

事業者名有限会社岩井製作所
所在地千葉県 千葉県鎌ケ谷市
業種金属製品製造業
従業員数20人
資本金500万円
設立1980年

事業の背景

当社は歯科技工製品向けの内部部品を主力とし、特定事業者への下請けに依存した事業体制だった。平成24年から医療機器市場への参入を志向し、機器製品の内部装置の組立工程を内部化して収益性を高めようとしていた。医療機器市場では身体親和性の高い製品が求められており、東南アジアでも医療サービス需要の成長が見込まれていた。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 販路・情報発信歯科技工製品向けの内部部品を主力としてきたため、特定事業者への下請依存型の事業体制から脱却する必要があった。
  • 新製品・新技術内視鏡手術用処置具の製作には、身体への接触負荷を減らすためワイヤとカップの小型化が求められるが、既製品より小型化する加工技術の確立が必要だった。
  • 品質・精度術中の部品欠損や残存物を防ぐため、既存のろう付けに替わる接合方法で、酸化や剥がれに耐える耐久性を確立する必要があった。

やったこと

φ16以下の精密加工技術を生かし、内視鏡手術用処置具の試作開発に取り組んだ。患部を切除する先端部品のカップ部はφ2幅、操作ハンドルとつなぐワイヤはφ3.5幅とし、既製品より小型化を図った。素材には耐食性と高強度を備えるステンレス鋼材SUS303を用い、カップ部とワイヤ部を試作した。加工では切削機の主軸回転速度を8,000min-1の低速に抑えて素材変形を防ぎ、最終仕上げは汎用フライス盤で移動速度を調整して精度の高い小型部品を製造した。接合にはレーザ溶接を採用して接合部の酸化を引き起こす溶接歪を抑え、窒素を噴き付けながらレーザの点照射を行い、表面の剥がれや酸化を抑制した。

加工機レーザ溶接機

新しい製品・サービス:内視鏡手術用処置具(カップ部・ワイヤ部)

事業の効果

大学病院から内視鏡用処置具の試作品について高い評価を得た。レーザ溶接の導入により接合部の酸化や剥がれを抑え、耐久性を確保できた。事業を通じて医療機器部品の製造に参入でき、新たな取引先との関係を築くことにつながった。今後は公差調整による稼働性の向上が課題として残っている。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.4 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性60%
  • これまでの取組との一貫性3

    歯科技工向け内部部品の主力から医療機器市場へ、平成24年からの参入志向という経緯は読み取れるが、経営戦略上の位置付けの明示は薄い。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    φ16以下の精密加工に強みがあり医療機器部品に参入しやすい環境とあり、強みは読めるが市場動向の定量的な裏付けは乏しい。

  • 課題の認識と解決3

    下請依存からの脱却と収益性向上という課題認識はあるが、高付加価値化の数値目標や計画の具体性は示されていない。

事業の実現可能性44%
  • 付加価値・賃上げの目標1

    公開されている事例からは読み取れません。

  • 事業を進める体制3

    溶接担当者の技術習得や協力企業の指導、大学病院との産学官連携が記載され、体制の一端はうかがえる。

  • 顧客とニーズの裏付け3

    身体親和性の高い小型処置具という価値と大学病院からの高い評価は書かれているが、顧客ターゲットの整理は薄い。

  • 事業化までの道筋3

    数次の試作や公差調整、東南アジアでの現地法規対応など課題と今後の方向性は書かれるが、スケジュールは示されていない。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性60%
  • 新しさ・高付加価値3

    φ2幅のカップや既製品より小型のワイヤなど同分野で小型化を図る点は読み取れるが、高価格化の根拠は示されていない。

公的補助の必要性40%
  • 波及効果・雇用2

    僻地医療の改善や高度手術の環境整備への貢献が目標に挙げられ、地域的な意義がわずかにうかがえる。

  • 費用対効果1

    公開されている事例からは読み取れません。

  • イノベーションへの貢献3

    レーザ溶接の採用や手術支援ロボットへの応用が書かれ、技術的な貢献の方向性は読めるが、サプライチェーンへの波及は示されていない。

政策面40%
  • 成長分野への進出2

    医療機器市場の成長や手術支援ロボット市場の拡大に触れており、成長分野への進出がわずかにうかがえる。

  • 地域経済への波及2

    千葉県鎌ケ谷市の本社と東南アジア展開は書かれるが、地域特性を活かした雇用創出や地域成長への言及は乏しい。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

医療機器の安全性や身体親和性の要求に応えるため、現地の医療関連法規に準じた仕様の開発や製品輸出を進める。手術支援ロボットの市場拡大を見据え、本製品を極小ポリープの確認・切除に応用して高度手術や僻地医療の改善に貢献することを目指す。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成26年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。