ものづくり補助金平成26年度製造業山梨県

「一麹二?(もと)三造り」この杜氏の技をデータ化し、低・中温域での厳密な温度管理によってさらに向上した品質を追求する

この事例のポイント

  • もろみの温度データの打ち込みや手作業による分析結果の計算などで仕事量が増え、製品のシミュレーションに十分な時間をかけられない悪循環が生じていた。
  • 杜氏の技をデータ化した醗酵シミュレーションに基づき、温度調節による工程管理を行うための温度制御システムを導入した。
  • 麹ともろみの温度を温度センサーや記録計で正確に計測・記録し、厳密な温度管理ができる体制を整えた。

事業者のプロフィール

所在地山梨県 山梨県南都留郡富士河口湖町
業種飲料・たばこ・飼料製造業
技術分野バイオ
従業員数10人
設立1700年

事業の背景

井出醸造店は江戸中期(1700年ごろ)の創業で、醤油醸造が前身だった。江戸末期に清酒の製造も手掛けるようになり、現在は清酒「甲斐の開運」の蔵元である。富士の北斜面、標高850mの河口湖南岸に位置し、富士山の湧水を仕込み水として使っている。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 人手・技能もろみの温度データの打ち込みや手作業による分析結果の計算などで仕事量が増え、製品のシミュレーションに十分な時間をかけられない悪循環が生じていた。
  • 品質・精度設備の老朽化により麹室の室温や麹そのものの正確な温度を計測できなくなっていた。
  • その他現状のシステムではバックアップが取れず、大切なデータの保存も難しい状態だった。

やったこと

杜氏の技をデータ化した醗酵シミュレーションに基づき、温度調節による工程管理を行うための温度制御システムを導入した。もろみは温度センサーで検温し、タンクに巻きつけたクーリングロールで温度管理する。事務所内にもろみ管理ソフトを起動するための基本ソフトである『蔵内』を導入し、温度管理とデータ入力を行った。もろみ前半の分析値を入力して将来的な希望数値を入れることで、醗酵予測をグラフ上で再現できることを確認した。麹は温度センサー、デジタル記録計、品温調節計で検温・記録し、当面はタブレットにデータを送信し、将来は携帯電話へ送る方式も考えている。

ソフト『蔵内』
検査測定温度センサー
検査測定デジタル記録計
検査測定品温調節計
その他クーリングロール

事業の効果

麹ともろみの温度を温度センサーや記録計で正確に計測・記録し、厳密な温度管理ができる体制を整えた。データを残せるようになり、醗酵予測もグラフ上で再現できるようになった。正確な温度管理により杜氏の負担が軽減され人的余力が生まれ、圧倒的な品質の向上を図ることができると見込まれている。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.6 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性67%
  • これまでの取組との一貫性3

    江戸中期創業で醤油醸造が前身、後に清酒へ展開したと書かれ、事業の歴史は読めるが、経営戦略上の位置づけは書かれていない。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    標高850mの冷涼な気候と富士の湧水という自社の強みは読めるが、市場や顧客動向への言及はなく、競争優位の説明は薄い。

  • 課題の認識と解決4

    温度管理データの打ち込みや手作業の分析で製品のシミュレーションに時間が取れない課題が具体的に書かれ、温度制御システム導入で解決を図るとある。

事業の実現可能性44%
  • 付加価値・賃上げの目標2

    付加価値額や賃上げの目標数値は書かれておらず、品質向上を図るという定性的な記述のみでうかがえる程度。

  • 事業を進める体制3

    ソフト導入や杜氏の負担軽減は書かれるが、補助事業を遂行する人材や事務処理体制の具体的な記述は乏しい。

  • 顧客とニーズの裏付け2

    製品の価値や顧客ターゲット、ニーズの裏付けについては記述がなく、わずかに品質追求の姿勢がうかがえる程度。

  • 事業化までの道筋3

    温度センサー導入、『蔵内』の導入、将来の携帯電話へのデータ送信など段階的な方法は書かれるが、スケジュールは明示されていない。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性60%
  • 新しさ・高付加価値3

    甘辛幅広い清酒の品質特性や梅酒・リキュールなど多岐にわたる製品展開が書かれるが、高価格化や希少性の数値は示されていない。

公的補助の必要性47%
  • 波及効果・雇用2

    富士の湧水や地域の気候に根ざした酒造りが語られるが、経済波及や雇用創出など国が補助する理由は書かれていない。

  • 費用対効果2

    付加価値額や生産性の数値は示されず、設備投資額に対する費用対効果は読み取れない。

  • イノベーションへの貢献3

    温度データのシステム化は書かれるが、サプライチェーンや地域全体への貢献については記述がない。

政策面50%
  • 成長分野への進出1

    公開されている事例からは読み取れません。

  • 地域経済への波及4

    富士山の湧水と標高850mの気候という地域特性を活かし、酒造りを続けてきたことが具体的に書かれている。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

事業者の声

「日本酒の価値はまず水によって決まります。その点、富士の湧水に恵まれたこの地で酒造りできることは幸運です。日本一の富士山の湧水なんですから。」

公式の事例集より(原文のまま)

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成26年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。