ものづくり補助金平成26年度製造業滋賀県

新規な熱化学還元法で処理された楽器用材料の開発

株式会社 野村隆哉研究所

この事例のポイント

  • 楽器用の良質な木材が枯渇しつつあり、材料の確保が深刻な問題になっている。
  • 今回、ものづくり企業の開発試作補助事業を活用して、楽器用材のための熱化学還元処理炉を設置した。
  • 熱化学還元処理材を用いた楽器は、従来の楽器用材に比べて音響特性が著しく改善された。

事業者のプロフィール

事業者名株式会社 野村隆哉研究所
所在地滋賀県 湖南市
業種木材・木製品製造業
技術分野材料製造プロセス
従業員数2人
資本金1,500万円
設立2005年

事業の背景

株式会社野村隆哉研究所は、京都大学を退官後の2005年11月に燻煙式熱処理炉の製造と熱処理技術のコンサルティングを行うために設立された。木材の寸法安定化技術を基盤に、建築用材への応用研究の成果を持つ。楽器用材については、ヴァイオリンやギターの表板・裏板など部品ごとに音響特性の異なる木材が使われており、良材の不足が業界の課題となっていた。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 生産能力楽器用の良質な木材が枯渇しつつあり、材料の確保が深刻な問題になっている。
  • 品質・精度木質材料は天然素材のため材料の良し悪しで楽器の出来不出来が大きく左右され、製作過程での割れ・反り・狂いを除く必要がある。
  • 納期・工程湿度変化に耐える材質を得るために、材料を何十年も乾燥させる必要がある。

やったこと

今回、ものづくり企業の開発試作補助事業を活用して、楽器用材のための熱化学還元処理炉を設置した。酸素を含まない燃焼ガスの還元雰囲気下で熱処理を行い、より良い音響特性が得られる処理条件を見出した。あわせて、材料の物理特性と音響特性の間の重要な相関関係を明らかにした。さらに、熱化学還元処理材を用いて楽器の試作を行い、聴覚評価を実施した。熱化学還元処理材で作ったヴァイオリン3本と通常材のヴァイオリン5本を用いた弾き比べでは、奏者が好ましいと選んだ3本がすべて熱化学還元処理材で作られたものだった。

加工機熱化学還元処理炉

新しい製品・サービス:熱化学還元処理を施した楽器用材

事業の効果

熱化学還元処理材を用いた楽器は、従来の楽器用材に比べて音響特性が著しく改善された。演奏家からは、高音域の音の均質さや伸びの良さ、中音域での優れた発音などが評価された。ヴァイオリンの弾き比べでは、奏者が選んだ3本がすべて熱化学還元処理材で作られたものだった。楽器製作者や演奏家から高い関心と期待を得ることができた。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.6 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性53%
  • これまでの取組との一貫性3

    京都大学での木材研究からの一貫したテーマとして燻煙熱処理を位置づけ、2005年設立の事業につなげている。経営戦略上の明確な位置づけは数字では示されていない。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    楽器用良材の枯渇や従来の数十年の乾燥が課題と述べ、強みとして熱化学還元処理の特性を挙げている。市場規模や競合との比較は書かれていない。

  • 課題の認識と解決2

    楽器用材の課題認識は示されているが、事業計画の売上・付加価値向上の具体的な道筋は書かれていない。

事業の実現可能性48%
  • 付加価値・賃上げの目標1

    公開されている事例からは読み取れません。

  • 事業を進める体制3

    代表者の長年の研究経歴と従業員2人の体制は読み取れるが、補助事業を遂行する人材や事務体制の詳細は薄い。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    音響特性の改善を奏者評価で示し、3本対5本の弾き比べで熱化学還元処理材が選ばれたと具体的な結果がある。

  • 事業化までの道筋3

    今後は楽器用材研究会を主宰し完成度を高めると述べているが、スケジュールや課題解決の方法は具体的に書かれていない。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    熱化学還元処理は従来の楽器用材と異なる処理方式で、弾き比べで通常材より選ばれたなど、高付加価値化の根拠が示されている。

公的補助の必要性47%
  • 波及効果・雇用3

    楽器用良材の枯渇、国産スギの規格材化による森林・林業活性化の構想が示されているが、波及効果の数値は書かれていない。

  • 費用対効果2

    補助金額や付加価値額の増加、生産性向上の数値は書かれておらず、費用対効果はわずかにうかがえるのみ。

  • イノベーションへの貢献2

    新しい処理技術と楽器製作者との連携は示されるが、デジタル技術の活用やサプライチェーンへの貢献は書かれていない。

政策面50%
  • 成長分野への進出1

    公開されている事例からは読み取れません。

  • 地域経済への波及4

    滋賀県湖南市三雲の約1,300坪の敷地を拠点に、山間・中山間地域の活性化や木の文化の再構築を地域に根ざして進める構想が示されている。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

今後は楽器用材研究会を主宰し、楽器製作者、音響学者、音楽愛好家などの参加を得て研究を進め、技術の完成度を高める。展示会やワークショップで熱化学還元処理材の楽器を広め、事業として発展させることを期待している。また、国産スギの形状寸法を安定化させて規格材とし、需要拡大と森林問題の解決を図る計画を検討している。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成26年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。