ものづくり補助金平成27年度製造業福島県

評価基準の独自開発による、金属3Dプリンター造形の成果物の実用化事業

株式会社エヌ・ティー・エス

この事例のポイント

  • 金属3Dプリンタで造形した製品は材料物性・強度が安定せず、実用製品として設計者が求める強度を保証することが難しい。
  • 微粒子金属パウダーをレーザーで溶解させて固形化する金属3Dプリンタの工法について、製造条件を研究した。
  • 金属3Dプリンタ製品の材料強度の特長が明確になり、強度や材料物性を把握・保証できるようになった。

事業者のプロフィール

事業者名株式会社エヌ・ティー・エス
所在地福島県 石川町
業種金属製品製造業
技術分野立体造形
従業員数55人
資本金5,000万円
設立1970年

事業の背景

創業以来、機械部品の加工請負と試作開発を主な事業とし、モータースポーツ部品を中心に航空宇宙、医療など広範囲な分野の精密金属部品加工を手がけている。金属3Dプリンタを使用した製品の主な依頼先はモータースポーツ関連の小ロット試作品である。鉄鋼メーカーのインゴット材がJIS規格内で強度を保証されているように、金属3Dプリンタ製品でも同様の材料強度の保証が顧客から求められていた。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 品質・精度金属3Dプリンタで造形した製品は材料物性・強度が安定せず、実用製品として設計者が求める強度を保証することが難しい。
  • 生産能力金属3Dプリンタの製造条件を完全に安定させ制御することには機械的な課題があり困難である。

やったこと

微粒子金属パウダーをレーザーで溶解させて固形化する金属3Dプリンタの工法について、製造条件を研究した。引張試験、縦弾性率、密度測定、組織観察、疲労試験などの強度特性に加え、空孔率、変形、造形崩れなどの事象を改善・安定化できることを確認した。支援機関の協力を得て試験片評価とデータ分析を徹底的に行い、材料に必要な各種金属パウダーに対して最適なパラメータを導き出した。その結果、特に高温試験でJIS規格とも異なる特性が判明し、設計者が求める材料強度を提供するための評価基準を提示できるようになった。

加工機金属3Dプリンタ

新しい製品・サービス:金属3Dプリンタ製品(レース用部品、医療分野向け人工骨・インプラント・義肢などを含む)

事業の効果

金属3Dプリンタ製品の材料強度の特長が明確になり、強度や材料物性を把握・保証できるようになった。品質確認書の策定を検討し、商業ベースに乗せるための基盤づくりを進めた。アルミニウム・チタン合金を使った現行部品の軽量化提案を行い、受注継続に弾みを付けることを見込んでいる。切削加工では困難な新構造の自動車用部品の提案も計画している。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.6 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性60%
  • これまでの取組との一貫性3

    創業以来の機械部品加工・試作開発を主事業とし、金属3Dプリンタ活用も従来の加工技術の延長として位置づけられているが、経営戦略上の明確な位置づけまでは書かれていない。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    モータースポーツ部品や航空宇宙・医療分野での加工実績、マルエージング鋼等の難削材への定評が書かれており強みはうかがえるが、市場動向との対比は薄い。

  • 課題の認識と解決3

    金属3Dプリンタの材料物性の不安定さという課題と、自動車用部品や医療分野への展開計画が書かれているが、数値目標を伴う計画ではない。

事業の実現可能性52%
  • 付加価値・賃上げの目標2

    付加価値額や賃上げの目標値は書かれておらず、受注拡大やテスト動作の見込みといった定性的な記述にとどまる。

  • 事業を進める体制3

    支援機関の協力を得て試験片評価を実施したことや、従業員55名、最新設備の導入が書かれており、遂行体制の一端はうかがえる。

  • 顧客とニーズの裏付け3

    モータースポーツ関連の小ロット試作品が主な対象で、顧客ニーズや選ばれる理由は整理されているが、顧客ターゲットの数値は書かれていない。

  • 事業化までの道筋4

    平成25年度から30年度にかけての取組の流れと、強度試験・造形条件の最適化・品質確認書策定など課題解決の方法が具体的に書かれている。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性60%
  • 新しさ・高付加価値3

    金属3Dプリンタは次世代技術とされ、モータースポーツ・医療向けの高付加価値造形を目指すと書かれているが、市場の普及度に関する記述は薄い。

公的補助の必要性47%
  • 波及効果・雇用2

    医療分野の実用検証を海外大学病院と進める点は書かれているが、地域経済や雇用創出への波及についての記述は乏しい。

  • 費用対効果2

    補助事業の投入額や費用対効果の数値は書かれておらず、材料物性の検証成果が述べられるにとどまる。

  • イノベーションへの貢献3

    金属3Dプリンタによる造形と評価基準の策定、トレーサビリティ拡充が書かれており、新技術による業界への貢献がうかがえる。

政策面40%
  • 成長分野への進出2

    医療分野や自動車用軽量部品への展開が書かれており成長分野への進出はうかがえるが、日本経済の構造転換との関連は書かれていない。

  • 地域経済への波及2

    福島県石川郡石川町に立地することは書かれているが、地域の特性を活かした雇用創出や経済成長への言及は乏しい。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

レース用部品に加えて医療分野への本格的な参入も視野に入れている。金属造形精度を均一化し強度などの物性を把握・保証することで、自動車用の試作部品を実際にテスト動作させる見込みがついた。タイの大学・大学病院に依頼し、人工骨、インプラント、義肢などの実用検証も進めたい考えである。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成27年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。