ものづくり補助金平成28年度製造業福岡県

IoTとAIシステムを活用した酒造り技術の伝承と嗜好トレンド酒開発への挑戦

浜地酒造株式会社

この事例のポイント

  • 日本酒ブームの中、酒造りを担う杜氏の減少で技能の伝承が難しくなっている。
  • もと倉庫だった場所に蒸米装置、製麹装置、発酵タンクを新たに導入し、酒造りに欠かせない温度や湿度、圧力などの情報を遠隔監視できる体制を構築した。
  • 醸造設備のネットワーク化により、温度変化などの経過をリアルタイムで把握でき、急激な状況変化にも対応できるようになった。

事業者のプロフィール

事業者名浜地酒造株式会社
所在地福岡県 福岡市
業種飲料・たばこ・飼料製造業
技術分野バイオ,情報処理,製造環境
従業員数20人
資本金1,000万円
設立1870年

事業の背景

1870年創業の酒蔵で、杉能舎ブランドの日本酒や地ビールなどを手がけている。全国の酒蔵は杜氏による長年の経験や知識に支えられており、後の世代に目に見える形で技術を伝えつつ、多様化する消費者のニーズに応える必要があった。現在の酒造りは出来上がった商品が判断基準となるため、製造段階で消費者の声を反映するのは難しい状況だった。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 人手・技能日本酒ブームの中、酒造りを担う杜氏の減少で技能の伝承が難しくなっている。
  • 生産能力酒造りの流れが感覚でしか分からず、温度変化などの経過を把握しにくい。
  • 新製品・新技術製造段階で消費者の声を反映することが難しく、飲み手主導の酒造りへの転換が求められている。

やったこと

もと倉庫だった場所に蒸米装置、製麹装置、発酵タンクを新たに導入し、酒造りに欠かせない温度や湿度、圧力などの情報を遠隔監視できる体制を構築した。データを1分ごとに数値化して蓄積し、毎回変わる酒造りの傾向をつかむ取り組みを進めている。過去の仕込み情報を検索条件から味や香り、原料などを設定して導き出すAIシステムを導入し、検索結果の精度を高めつつ、最終的にキーワード入力にも対応できる仕組みを構築した。顧客から集めた意見をAIで分析し、トレンドをつかんだ酒造りを目指している。

加工機蒸米装置
加工機製麹装置
加工機発酵タンク
検査測定醸造設備の遠隔監視システム
ソフトAIを活用した仕込み情報検索システム

事業の効果

醸造設備のネットワーク化により、温度変化などの経過をリアルタイムで把握でき、急激な状況変化にも対応できるようになった。感覚でしか分からなかった酒造りの流れを数値で見える化し、仕込み情報をデータとして蓄積することで、出来上がった酒の経過を検証することも可能になった。蓄積した仕込み情報を参考に、AIを活用した酒造りの体制づくりも少しずつ進んでいる。消費者の声を製造段階に反映させ、商品の付加価値向上につなげることが期待されている。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.6 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性73%
  • これまでの取組との一貫性4

    杜氏の減少で技能伝承が難しくなったため、記録を残す設備導入を進めたと明記され、既存の課題と取組の連続性が読み取れる。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    消費者の声を反映する飲み手主導の酒造りへの問題意識は書かれているが、競合や市場に対する自社の強みの分析は具体的に述べられていない。

  • 課題の認識と解決4

    杜氏減少による技能伝承の課題を示し、醸造工程の見える化とAI検索で製品作りにつなげる計画が書かれている。

事業の実現可能性40%
  • 付加価値・賃上げの目標2

    データを1分ごとに数値化するなど工程の記録に触れるが、付加価値額や賃上げの目標値は示されていない。

  • 事業を進める体制2

    社員数20人は書かれているが、補助事業を遂行する人材や事務処理体制についての記述は見当たらない。

  • 顧客とニーズの裏付け3

    トレンド酒の開発と顧客意見のAI分析は読み取れるが、ターゲットや選ばれる理由の整理は具体性が薄い。

  • 事業化までの道筋2

    AI活用の体制づくりを少しずつ進めるとあるが、スケジュールや課題の解決方法の記述は乏しい。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性60%
  • 新しさ・高付加価値3

    AIを使った日本酒製造は新しい取組とうかがえるが、同分野での普及度や高付加価値化の水準は具体的に書かれていない。

公的補助の必要性53%
  • 波及効果・雇用2

    伝統技能の継承と地域の酒造りの維持にわずかに触れるが、波及効果や雇用創出の記述は見当たらない。

  • 費用対効果2

    記録の見える化で再現性を高める狙いはうかがえるが、投入額に対する付加価値増加などの数値は示されていない。

  • イノベーションへの貢献4

    IoT活用の醸造設備ネットワーク化とAIによる顧客評価と工程の接続が書かれ、デジタル技術による業界の変革が読み取れる。

政策面40%
  • 成長分野への進出2

    消費者ニーズに応える方向性はうかがえるが、日本経済の構造転換への言及は見当たらない。

  • 地域経済への波及2

    福岡市の酒蔵という地域の立地は書かれているが、地域の特性を活かした経済成長への言及は乏しい。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

顧客から集めた意見をAIで分析し、トレンドをつかんだ酒造りを目指す。消費者の声が反映されることで、酒造りの在り方を変えるきっかけにしたいと考えている。

事業者の声

記録を残し、応用することで、造り手主導から飲み手主導の酒造りにならないか

公式の事例集より(原文のまま)

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成28年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。