ものづくり補助金平成30年度製造業奈良県

全自動NC加工機の導入による伝統的「三宝技術」継承及び新たな市場への参入

この事例のポイント

  • 生活様式の変化により、神具としての三宝の需要が減少し、業界全体が年々縮小している。
  • 本事業では全自動NC加工機を導入し、挽曲げ専用のチップソーをメーカーと共同開発した。
  • 加工時のロス率を10分の1まで下げ、全体の加工時間も約20%短縮した。

事業者のプロフィール

所在地奈良県 奈良県吉野郡下市町
業種木材・木製品製造業(家具を除く)
技術分野精密加工,立体造形
設立1910年

事業の背景

吉谷木工所は1910年の創業以来、良質な吉野檜を原料に伝統工芸品の神具「三宝」を主軸とした木工製品を製造販売している。三宝は下市町が発祥の地とされ、国内シェアの8〜9割を占める産地であり、当社は宮内庁や神宮御用達品として国内製造数の約3割を担っている。一方で、近年のライフスタイルの変化により三宝の需要は減少し、業界は年々縮小している。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 集客・繁閑生活様式の変化により、神具としての三宝の需要が減少し、業界全体が年々縮小している。
  • 品質・精度業界縮小の中で生産プロセスの精度・品質向上と効率化が必須となっている。
  • 新製品・新技術事業継続のため、新たな主力製品の開発が急務となっている。
  • 人手・技能熟練職人の手作業に頼る挽曲げ工程で職人が高齢化し、若手への技術継承が課題となっている。
  • 生産能力古い加工機では既存寸法以外のオーダーメイド対応や新製品開発が難しい。

やったこと

本事業では全自動NC加工機を導入し、挽曲げ専用のチップソーをメーカーと共同開発した。これにより加工時のロス率を10分の1まで下げ、全体の加工時間も約20%短縮した。制御性に配慮した近年の機械への更新により、刃物を扱う作業員の安全性も大幅に向上した。従来の機械では4〜9寸の6サイズのみしか対応できなかったが、その制限がなくなり、ミリ単位での試作や多品種小ロット、オーダーメイド、四角形以外の多角形への対応が可能になった。

加工機全自動NC加工機
その他挽曲げ専用チップソー

新しい製品・サービス:新加工機による多角形の挽曲げで製造したトング「TONGI」、マルチボックス「八宝」など、三宝の制作技術を雑貨に転用した製品

事業の効果

加工時のロス率を10分の1まで下げ、全体の加工時間も約20%短縮した。機械の更新により刃物を扱う作業員の安全性が大幅に向上した。従来の6サイズの制限がなくなり、ミリ単位の試作や多品種小ロット、オーダーメイドに対応できるようになった。マルチボックス「八宝」は奈良県大会で審査員特別賞、全国大会で芸・雑貨部門のグランプリを受賞し、2023年夏予定の世界大会への参加権を得た。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均3.1 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性73%
  • これまでの取組との一貫性4

    創業以来110年以上、吉野檜の三宝を主軸とする事業と、挽曲げ技術の継承という過去の取組との一貫性が読み取れる。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    国内シェア8〜9割の産地で国内製造数の約3割を担うという強みはあるが、需要減少への対応の中身は限定的にしか書かれていない。

  • 課題の認識と解決4

    需要低迷と職人高齢化を課題として認識し、加工ロス率を10分の1、加工時間約20%短縮という数字で解決策を示している。

事業の実現可能性52%
  • 付加価値・賃上げの目標4

    加工ロス率10分の1、全体加工時間約20%短縮、6サイズから制限解消といった数値目標が示され、達成結果も記載されている。

  • 事業を進める体制2

    熟練職人の技術継承は課題として挙がっているが、事業遂行体制や事務処理能力については記載がほぼない。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    八宝がグランプリ受賞、茶箱コラボ参加など、顧客への提供価値と選ばれる理由が具体的な実績とともに整理されている。

  • 事業化までの道筋2

    和食文化と融合した器として市場参入を狙うとあるが、スケジュールや課題解決の方法は書かれていない。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    三宝の挽曲げを雑貨に転用し多角形対応や八宝などの新製品を生み、伝統工芸品の中で高付加価値化を図っている。

公的補助の必要性60%
  • 波及効果・雇用3

    伝統工芸や日本遺産として地域文化の継承に触れるが、経済波及効果や雇用創出の具体的な記述は薄い。

  • 費用対効果3

    加工ロス率や加工時間の改善数値はあるが、補助金投入額に対する付加価値増加の費用対効果は書かれていない。

  • イノベーションへの貢献3

    NC加工機やチップソーの共同開発で技術を進化させているが、サプライチェーンへの波及やデジタル技術活用の詳細は薄い。

政策面60%
  • 成長分野への進出2

    需要低迷の業界で新市場へ参入する方向性がうかがえるが、日本経済の構造転換への言及はない。

  • 地域経済への波及4

    吉野檜と下市町の三宝産地という地域特性を活かし、日本遺産認定の技術を核とした製品展開を進めている。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

三宝の笠(盆)部分を活用し、和食文化と融合した新たな「器」として市場参入を狙う。伝統的技術を継承しつつ、「神具」から「新具」へと技術を進化させた製品の展開を目指している。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成30年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。